ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ウィーズリーおじさんの持っている車でキングズ・クロス駅に行って、毎年のようにホグワーツ行きの急行に乗った。今年も私はハリーさんと同じコンパートメントに乗ろうと思ったのだけれど、ハリーさんはなかなか見付からない。
最後尾に近いところでようやく見つけたと思えば、そこには見知らぬ誰かがマントに身を包んで眠っていた。ハリーさんも同じように眠っているけれど、ハリーさんの場合は五月蝿くしたら高速の拳が飛んでくるから静かに静かに……。
ちなみに、ロンにはちゃんと言い聞かせておいたのでハリーさんが寝ているところで騒ぐようなことはないと思う。去年までは行きと帰りに各一回ずつ脳震盪で気絶させられていたし、それは私がギリギリ見えるか見えないかと言うところだったのでその場の全員が見えていたとは思わないけれど、ハリーさんの事を知ればきっと全員が全員ハリーさんが何かした結果としてロンが気絶したんだと言う結論に落ち着く事は間違いない。
……まあ、それはそれとして、ハリーさんを見つけた私はいつものようにハリーさんの隣に座る。入り口からは右半分の顔しか見えないハリーさんだけれど、それもまたいつも通り。なんで左目を開けないのかはわからないけれど、時々開けることもある右目を開けたらすぐにわかるようになっているのはいいことだ。ハリーさんが起きたらすぐにわかるからね。
ハリーさんは食べようとするときは凄く食べるけれど、食べないときは殆ど何も食べない。起きていれば食べるか食べないかわかるけれど、眠っていてはわからないのでとりあえず私達が食べる分よりも少し多めに買っておく。ハリーさんが食べなかったら私が食べるから、買うことにはなんにも問題ない。
私の後に続いて、ロンとハーマイオニーとジニーがコンパートメントに入ってくる。一つのコンパートメントは六人でちょうどいっぱいになるようになっているので、元から居たハリーさんと…………えっと、ルーピン先生? ……を合わせて六人。コンパートメントは満杯だ。
「残念だけど、見ての通りこのコンパートメントは六人用なんだよフォイ」
「二年もホグワーツに通っているのだからそんな説明は不用だよロニー坊や」
「……やるのかよ? あぁ?」
「……なんだい? 君程度の力で僕に傷の一つでもつけられると? ん?」
「……試してやろうか?」
「『どうぞ試させてください』だろう? 頭が高いんだよ」
「……ぁ?」
「……ぉ?」
……だから、後から来たマルフォイ達にはちょっと遠慮してもらわないといけないんだよね。
と言うか、ロンとマルフォイはやっぱりまだ仲悪いなぁ……。
「……はぁ……クラッブ、ゴイル。どっちでもいいけどドラコを止められない? 私達はロンを止めるから」
「無理だ」
「フォイは最近更に頑丈になってな。俺達が何やったところでびくともしないんだ」
ハーマイオニーがクラッブとゴイルに話を持ちかけているけれど、どうやらあちらはあちらであまりいい結果は出そうにないみたい。
……でも、あんまり騒ぎすぎるとハリーさんからクヌート銅貨が飛んでくるよ? ハリーさんは相手によってちゃんと加減してくれてるみたいだから別にいいならいいんだけど。
「フォ~~イ~~……」
「オロロ~~~ン……」
「フォ~~~イ~~~……」
「オロロロロ~~~ン……」
「……ちょっと、なんかドラコが変な声出し始めたんだけど、いったいこの休みに何があったのよ?」
「俺達が知るか」
「と言うかロンの方こそ張り合うかのように変な声出してんじゃないか」
「「「…………はぁ……」」」
ハーマイオニーとクラッブ・ゴイルの三人が同時に溜め息をついた。ロンの側のお守り役・ハーマイオニーと、マルフォイの方のお守り役・クラッブ&ゴイル。どうやらそれなりに通じ合うところがあったようで、見ている限り割と仲が良さそうに見える。
今だってコンパートメントのドア部分を境界に額を突き合わせてゴリゴリとメンチを切りあっているロンとマルフォイを止めるために協力しているし、ハーマイオニーに名前を呼ばれても何の疑問も持っていないようだったしね。
……名前と言えば……。
「ねえ、ハーマイオニーに質問があるんだけと」
「? なによいきなり?」
「大したことじゃないんだけどさ?
いつからマルフォイの事を名前で呼ぶようになったの?」
私が笑顔でそう問いかけた途端、その場の空気が凍りついた。
いがみ合っていたはずのロンとマルフォイはハーマイオニーに驚愕の視線を向け、クラッブとゴイルは無表情になってハーマイオニーを見る。ハーマイオニー自身は無言で私から視線を逸らしたけれど、目を剃らした先には興味ありげにハーマイオニーの事を見つめるジニーがいる。
「……教えてくれないの? ハーマライデンはなんでも知ってるってロンから聞いたわよ?」
「ロン、私は今からあんたを殴るわ」
「なんで!?」
「ざまあみろwww」
「ついでにドラコも殴るわ」
「フォイ!?」
「……ハリーがね」
「「はゐ?」」
ハーマイオニーがそう呟いた次の瞬間、今年もまた瞬きの間に走り抜けるハリーさんの拳。それが正確にロンとマルフォイの顎先を掠め、ある意味ではいつも通りに二人は気絶した。
ただ、どうやらハリーさんの拳は『どこからともなく』飛んでくるクヌート銅貨よりもずいぶん威力が高いようだ。少なくとも、私は絶対に受けたいとは思わない。
ロンやマルフォイみたいに顎先を掠めてくれるんだったらまだ生きていけるかもしれないけれど、もしも真正面から直撃したら……想像するだけでも恐ろしいよ。
まあ、今のはロンが悪いけどね。ハーマイオニーはハーマライデンって呼ばれるのはあんまり好きじゃないみたいだし、それをジニーにあたかも真実であるかのように伝えちゃうし。
「ところでハーマイオニーは本当になんでも知ってるの?」
「そんなわけないじゃない。私が知っているのは、今まで読んだことのある本に書いてあったことと、実際に体感したことのあることだけよ」
崩れ落ちていくロンとマルフォイをスルーして、ハーマイオニーは私に答えた。ロンはジニーが、マルフォイはクラッブが支えているので後の心配はする必要はなさそうだ。
「……そう言えば、シリウス・ブラックがポッターを狙っているそうだが……」
「ああ、それならハリーさんが杞憂だから安心していいって言ってたよ」
「そうか」
ゴイルは不器用そうに笑顔を浮かべ、マルフォイを背負ったクラッブと一緒にコンパートメントを出ていった。
「……はっ!? 僕はいったい……」
「ハリーさんに気絶させられたのよ。ハーマイオニーに嵌められて大きな声を出すからそうなるのよ」
「なん……だと……!?」
ロンとジニーが兄妹で漫才をやっているのを横目に見ながら、私はハリーさんと同じようにマントにくるまった。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き