ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ハリーさんと『漏れ鍋』の前で別れ、私はバーに入っていく。ここにもシリウス・ブラックの顔写真がいくつも並んでいるし、新聞にはあまりいいニュースを見かけないけれど、最近ではそれにももう慣れてしまった。

 ハリーさんの言葉と他の多くの人の言葉、どちらを信じるかと聞かれればハリーさんの言葉だと迷うことなく断言するところだけれど、流石に今回のことは少し迷う。

 ……まあ、あくまで少し迷っただけで普通に信じたのだけど。

 ハリーさん曰く、本当に悪いのはピーターという男で、シリウス・ブラックと私のお父さんは親友で、ピーターという人ともう一人でホグワーツでよく遊び回っていたんだとか。

 そしてヴォルデモートが私を殺そうとしたことを知った私のお父さんとお母さん、そして親友であったシリウス・ブラックは、とても複雑な保護呪文で私達の当時住んでいた場所を守っていたのだとか。

 しかし、そこで本当だったらその保護呪文の鍵をシリウス・ブラックという人が持つはずだったのを、誰も予想しなかっただろうピーターという人に渡して目眩ましをしようとしたらしい。お父さんとシリウス・ブラックはとても仲がよく、相手を売るくらいなら自分が死んだ方がずっといいと心の底から思い合っているほどの仲だったそうで、そしてお父さんもシリウス・ブラックもとても強力な魔法使いだったそうだ。

 けれど、そんな二人が選んだそれは結果的には間違いで、お父さんはお母さんと一緒に殺されてしまった。ピーターというその人は、何時からかはわからないけれどヴォルデモートに従っていたらしく、私のお父さんとお母さんの住む場所の鍵をあっさりと渡してしまったらしい。

 それをお父さんが知ったのはヴォルデモートが家に乗り込んできた時で、シリウス・ブラックがその事を知ったのは私のお父さん達が死んでしまったことを知ってすぐのことだったそうだ。

 そしてシリウス・ブラックはピーターと言う人を見付けて殺そうとしたところで、ピーターと言う人が私の両親を裏切ったのはシリウス・ブラックの方だと大声で喧伝した直後に魔法で爆発を起こし、それもシリウス・ブラックの罪として擦り付けて自分は変身して逃げているんだとか。

 

 ……なんでそんなことまで知っているのか、とか、どうしてその事を魔法省に伝えないのか、とか、色々と言いたいことはあったけれどハリーさんは答える気はあまり無さそうだった。

 ただ言っていたのは、今の魔法省は無能の集まりであり、実際に証拠を見せつけたところでそれが自分に都合の悪いことだったら魔法省内部で隠蔽するのは当たり前。証拠があってもこうなんだから、十二年も無実の人間をアズカバンに収容していただなんて言う大スキャンダルを認めるわけがない……と言うこと。それを面倒臭そうに……心底から面倒臭そうに、ハリーさんは私に語ってくれた。

 

 ……とまあそう言うわけで、私は今のところ全く緊張していない。シリウス・ブラックが私の前に現れたとしても、私に危害を与えようとしてくることはまず無いとわかっているのに、怖がる理由がどこにあろうか。

 けれど何も知らない大人達は、私の言うことなんて全部子供の言うことだとまともに聞いてくれることは無い。私がマグルの学校に行っていた頃の教師と同じように、私の言葉は表面でだけ受け入れられたふりをして何事もなかったかのように無視されていた。

 やっぱり私の言葉は小さすぎて、他人(ひと)には届いてくれないらしい。確かに証拠も何も用意できないし、実際に言っているのはハリーさんだけだけれど……そのハリーさんの言うことだからこそ信憑性があるって言うのに。

 

 ……いやまあ信じがたいって言う気持ちはわかるけれど、だからと言って実際に起きていた事まで否定するのはよくない。実によくない。

 私も実際に会ったことがあるわけじゃ無いけど…………って、あれ? お父さんとシリウス・ブラックが親友だって言うんなら、もしかしたら私が覚えてないくらい昔に会ったことがあるのかも?

 

 ……まあ、覚えてないし会ったこと無いってことでいいや。うん。ハリーさんにできるだけ人には言うなって言われているし、言ったところで絶対に信じてもらえないって言われたし、言ったところで意味もないから言う気は初めから全く無かったけどね。

 けれど、どうしてシリウス・ブラックが今になって脱獄したのかはわからない。ハリーさんはその事については絶対に話そうとしなかったし、話せない理由も教えてくれなかった。

 ……絶対にハリーさんが何か関わっていると思ったけれど、そのことについてハリーさんを問い詰めようとは思わない。ハリーさんがハリーさんであるなら、ただそれだけで私にとって信頼するに十分な理由になるしね。

 

 そこで、色々と想像してみる。あり得そうなことからあり得なさそうなことまで色々と。

 例えば、親友である私の父の忘れ形見である私を守るために脱獄したとか、好いた女性が亡くなったことをなんらかの方法で知ってたった一回きりの墓参りとか、ハリーさんが面白半分で煽って脱獄させたとか、死んだと思っていたピーターって言う人が生きていることを知り、そしてその居場所を見つけたからとか、死期を悟って最期の時くらいは美味しいご飯を食べたくなったからとか、いつでも脱獄することはできたけどやることがなかったから脱獄しなかっただけだとか、特に理由はなく脱獄したくなったから脱獄したとか、水虫が痒くて仕方がなくなったからよく効く水虫の薬を買いに行ったとか……まあ、本当に色々想像してみた。

 最初の方は割と真面目に考えていたけれど、後の方は全然真面目じゃない。ハリーさんじゃないけれど、面白半分にまずあり得ないだろうと言うことばかりを無駄に考えてみた。

 こんな無駄な考えの中でもハリーさんの言う言葉が間違っていてシリウス・ブラックが私を殺しに来たっていう物が出てこないあたり、私はある意味ハリーさんにしっかり調教されてしまっているような気がする。

 どうせ調教されるなら、首輪をつけて鎖に繋がれて、ハリーさんにだけ必要とされながら生きていきたいなぁ……。

 

 ……なんて、冗談だけどね。ハリーさんはきっとそんな風にはさせてくれないだろうし、私が頼んだところで自分がやりたいと、あるいはやってもいいと思ったことしかやろうとはしないだろうし。

 

 私は溜め息を一つついて、ちょっと埃っぽいバーの天井を眺めた。……ああ、こうやってうっすら汚れた天井の隅を見てると、落ち着くなぁ……。もうあの物置は無いって言うのに、なんでそんな風に思うのかなぁ……?

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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