ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
エジプトでの出来事は割愛するとして……私はロンの家族と一緒にイギリスまで戻ってきた。これから買い物をする予定なのだけど……私の場合はほんの少しだけその手間が省かれるらしい。
私が三年生から新しく受けるようにした授業は、『魔法生物飼育学』と『占い学』の二つ。そのうち『魔法生物飼育学』の教科書はハグリッドが送ってきてくれたし、『占い学』の方はごくごく普通の本だった。
それに、ローブや制服は一年生の頃に使っていたものを変える必要が無いのでそのまま。『魔法薬学』の材料を少しと、それから他の学科で使ういくつかの教科書を買った。
……これで買い物は終わり。服を買う必要が無い分、随分早く終わってしまった。……背、延びてないんだよね。うん。お陰で服を新調する必要は無いんだけど……無いんだけどさ…………新調しないで大丈夫って言うよりも、新調する必要があるほど身長が伸びててほしかったよ……。
……うん、これで嘆くのは終わりにしよう。嘆いても私の身長が伸びるわけじゃ無いんだし。
「…………」
「……ん? どうしたのさエリー?」
「…………ちょっとでいいから身長ちょーだい?」
「無理だよ!?」
「魔法使いなのに?」
「魔法使いにだって不可能はあるよ!? マルフォイみたいに額にハリーさんからのクヌート銅貨を受けたら脳天から上が消し飛ぶのと同じように!」
「……ちぇっ」
いくら魔法使いでも、他人の身長は貰えないらしい。……残念。
……まあ、それはそれとして。私はのんびりとダイアゴン横丁を歩き回っている。ロンはエジプトに行ってしばらくしてから突然弱り始めたスキャバーズを魔法動物ペットショップに連れていって様子を診てもらわなくちゃいけないと言っていたし、ハーマイオニーもふくろうを飼いたいと言っていたので、私は適当な場所を見て歩いているのだ。
ロンとハーマイオニーの用が終わるまでどのくらいかかるのかは知らないけれど、ダイアゴン横丁はその時間を潰すには十分すぎるくらいには見て楽しめるところが多い。
けれど今はちょっと危ないそうだ。シリウス・ブラックと言う凶悪犯がアズカバンから脱獄したと言うニュースが話題になり、今ではそこかしこに指名手配の顔写真付きのチラシが貼り付けられている。
ウィーズリーおじさんの話では、シリウス・ブラックはたった一つの魔法で13人も殺した大量殺人者で、ヴォルデモートの腹心の部下だったそうだ。あまり詳しくは教えてくれなかったけれど、とにかく私に危険なことだけはするなと伝えたかったらしい。
……確かに去年禁じられた森に入ったりしたけれど、私は理由もなくそんなことをするほど馬鹿ではないつもりなんだけど……どうやらウィーズリーおじさんは私の事をまだまだ守られているだけの子供として見ているらしい。
私自身の年齢が13だと言うことに加えて、身長や体格も10に届かない子供にしか見えないと言うのもその原因なんだろう。……私自身、なりたくてこんなに小さいままな訳じゃないのにね。
「その辺りどう思いますかハリーさん」
「指名手配犯に関しては『その心配は欠片も必要無い』とだけ言っておく。身長に関しては『今後の成長に期待』だ」
「望み薄ですねっ♪」
……あ、自分で言ったことなんだけど、なんだか心がすごく痛い。事実望み薄だとわかっちゃってるだけに余計に心が痛い。
……そうだ、一応聞いてみよう。
「……ハリーさんは、背のちっちゃい女の子とかどう思いますか?」
「性格重視だからあまり気にしたことねえなぁ」
「アウトって訳じゃないんですよね? セーフの域なんですよね!?」
「背だけで考えるなら、あんまりにもでかすぎなければいいと思うぞ」
ハリーさんの答えに心の中でガッツポーズ。なんでかゆっくりふぉいふぉいとゆっくりろなりゅどとゆっくりはーこが一斉にクラッカーを鳴らしてお祝いしてくれた。ありがとう、本当にありがとう。
『ねえねえポッターポッター? ハリーさんにまだ目があるって知って今どんな気持ち? ねえどんな気持ち?』
『ねえねえエリーエリー? 未来でハリーさんに告白したら受けてもらえる可能性があるって知って今どんな気持ち? ねえどんな気持ち?』
『ねえねえエリーエリー? ハリー相手の初恋が実る可能性があるって知って今どんな気持ち? ねえどんな気持ち?』
『『『ねえねえ今どんな気持ち? ねえどんな気持ち? 教えてよー!ねーえー教えてってばー!』』』
超嬉しい。泣くほど嬉しい。いや泣かないけど、きっと今日の晩御飯はとっても美味しいと思う。
私がそう答えたら、ゆっくり達はうんうんと頷いてどこかに消えていった。なんだか優しい目で見られたような気がするけれど、きっとそれは気のせいじゃないんだろうな。
そう言うわけで、とりあえずハリーさんの腕に抱きついてみた。
「おっと……いきなりなんだ?」
「んふふ~……なんでもないですよ~♪」
「そうかい」
ハリーさんは私を腕にぶら下げながら普通に歩き出す。私の身長だとハリーさんの腕にぶら下がり続けるのはちょっとだけ大変だけれど……悪くない。
……今の私たちは、周りからはいったいどんな風に見られてるんだろう? 夫婦……は、残念だけど絶対無いとして……恋人、友人、兄妹、親子……ってところかなぁ?
親子は無いって? ……いやいや、まあ、私ちっちゃいしね。知ってた。ハリーさんは大きいしね。知ってた。親子にも見えちゃうよね。うん、知ってたよ? 悲しいけど実際に見られたことあるよ? お店でハリーさんが『そこのお父さん!可愛いお嬢さんに似合いのアクセサリーでも買っていかないかい?』って言われてたし……。
……私とハリーさんって、本当に同じ歳なんですかね? どう考えても私が小さすぎるような……。
……でも、ハグリッドやダンブルドア先生は確かに私の歳が11の時に私をホグワーツに招いたって言ってたし、結局今も背は伸びてないから体質的な問題だと思うんだけど……。
「主に栄養失調と、あとは怪我を治すためにただでさえ少ない栄養を使ってたんだから当然と言や当然だな。それさえ無ければ少なくともハー子くらいの身長にはなってただろうに」
「ホグワーツに行ってちゃんとご飯を食べられるようになってからも背は伸びてないんですけど……」
「辛く厳しい現実と、甘く優しい幻想と……どっちが好み?」
「夢じゃあお腹は膨らまないので現実で」
「俺が渡した胃薬には賢者の石がふんだんに使われてるから必要以上に飲むと胃だけじゃなくて全身に賢者の石成分が回って怪我が治りやすくなって太りにくくなる代わりに成長速度がかなり遅くなるんだよ。説明書の注意事項のところに書いといたけど、ちゃんと読んだ上であんだけざらざら飲んでたんだよな?」
……自業自得かぁ……辛くて厳しい現実だなぁーあはははははは!
……くすん。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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