ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ロンのお家に到着した。名前は『隠れ穴』と言うらしいけれど、とっても良いところだ。
それと、ロンのお父さんが今年のガリオン籤グランプリと言うのを当てて纏まったお金が入ったそうなので、家族旅行でエジプトに行くそうだ。家族旅行に部外者である私がついていっていいものかと思ったが、それを聞いてみたら無表情になったロン達に額をぺしぺしされた。どうやら野暮なことだったらしい。
あと、ロンの新しい杖を見せてもらった。先生達がオリバンダーの店にロンを連れていって見繕ってくれたらしい。よっぽどロック……なんだっけ? ……まあいいや。あの先生が学校から居なくなったのが嬉しかったらしい。柳の木でできていて、芯にユニコーンの尻尾の毛が入っていると、自慢気に語ってくれた。
……さて、そういうわけで私はウィーズリー一家と一緒にエジプトに旅行をすることになった。私の分の旅費は後でこっそりウィーズリーおじさんのお財布に放り込んでおくのだけれど、なぜかいつも満額戻ってきている。
……私としては、お金よりもこうして一緒に居てくれる人がいる方が嬉しいんだけどなぁ……。
「いいから気にするなよエリー。どうしても気になるんだったら、むしろ僕らがハリーさんに染められきってないお礼だと考えてくれればいいよ。だから……ハリーさんへのツッコミをこれからもよろしく」
ロンはいい笑顔で私に親指を立ててきた。心の底からいい笑顔だと思うけれど、あまり嬉しくはない。ハリーさんへのツッコミは私の仕事みたいなものだと言う意識は無いこともないが、いつでもやりたいと思うものではないし、疲れた時には休みだって欲しい。
……それに、ツッコミ役にはハーマイオニーも居るしね。だとすると、今のホグワーツ生が私にその事でお礼をするならハーマイオニーにもお礼をしなくちゃ。
「まあ、とにかく楽しんで行けよ。ビルはエジプトのグリンゴッツ関係の仕事をしてるから、色々知ってるぜ?」
にやりと笑うロンに笑顔で返した私は、とりあえず楽しみにしておくことにした。
……と、それはそれとして……驚くべき事実が私達を襲っていた。
「ねえ、ロン。私、この『ファイアボルト』って言う名前にものすごーく聞き覚えがあるんだけど」
「奇遇だね。僕も凄く聞き覚えがあるよ」
新しく発売された、最高級のレース用の箒。その名も『炎の雷・ファイアボルト』。……ハリーさんが私の『ネビュラス』の性能を説明する時に比較対象として持ち出してはこき下ろし続けた箒だ。
「エリー。ファイアボルトの最高速度は時速240キロなんだってさ」
「へー。ネビュラスの最高速度は時速280キロだよ」
「エリー。ファイアボルトは僅か10秒で最高速度まで加速できるんだってさ」
「へー。ネビュラスは5秒で最高速度が出せるよ」
「エリー。ファイアボルトは針の先ほどのブレすらなく狙ったところを飛んで行けるんだってさ」
「へー。ネビュラスは最高速度のまま直角に進行方向を変えられるけど、どっちの操作性が上なのかな?」
……うん、まあ、とりあえず……。
「……ハリーさんってばさらりと未来予知しちゃってたよ……」
「ハリーさんェ……」
「……マジでハリーは人外だったか……」
双子の片割れ……多分ジョージの方がぽそりと呟いた言葉に、その場のほとんど全員が頷いた。頷いていないのは、ハリーさんのことを知らないロンの兄であるビルと、ウィーズリーおじさん、ウィーズリーおばさんの三人だけ。ハリーさんはホグワーツで今最も有名な人物だと思う。
……よく考えたら凄いよね。一年生の頃にはホグワーツに入り込んでいたらしいヴォルデモートを放逐し、二年生になったら『秘密の部屋』を攻略して人を助けた。今年はいったい何をしてくれるのか、少しだけ不安に思うけれど、同時に楽しみでもある。
今年にいったい何が起こるのかは、神でもハリーさんでもない私にはわからない。でも、そんな私でもたった一つだけわかることがある。
今年も、胃薬が大活躍することになりそうだ。ハリーさんに貰った袋にキロトン単位で入っていたから、暫くはなくなることは考えなくて良さそうなのが救われることかな。
「……それでさ、エリー。今年はクィディッチで優勝できそうか?」
「頑張るよ。最悪でもハリーさんの出場だけは止めてみせるから安心して」
「……ハリーさんだよなぁ……ブラッジャーを打てばブラッジャーが粉砕して広域散弾になるか人に穴が空くかだし、クアッフルを投げれば異常な正確さでゴールに飛んでいく上に人を10人撥ね飛ばしても速度も威力も落ちないって言う謎現象が起きるし、キーパーをやれば三本のゴールの前に同時に存在するとか言うジャパニーズNINJAかって言う技をやってくるし、シーカーをやると毎回試合開始直後にスニッチがハリーさんの手の中にあるしで……ホグワーツ特別ルールに『ハリーさん参加自重』って言うローカルルールができそうになるくらいだし……」
「……ハリーさんはやっぱりなにやっても何やらせてもハリーさんだよねぇ……」
「……まあ、ハリーだしなぁ……」
同じクラスでハリーさんと関係がそれなりに深い私とロンだけでなく、クィディッチの練習に一度参加してもらって折れない心を得るためにボッコボコにされただけのジョージも頷くあたり、本当にハリーさんは手加減がない。
ちなみに、折れない心を作るための訓練はウッドが考案した。私達グリフィンドール・チーム対ハリーさんチーム。
私達はチェイサーにアンジェリーナ、ケイティ、アリシアの三人。ビーターに双子のウィーズリー兄弟、キーパーにウッド、そしてシーカーに私。
対するハリーさんチームはと言うと……チェイサーにハリーさんとハリーさんとハリーさん(この時点でウッドとチェイサー三人が絶望したような表情をした)、ビーターにハリーさんとハリーさん(多分、私達全員の顔色は真っ青だったと思う)、キーパーにハリーさん(ただし、即座に分身して三人に増えた)、そしてシーカーにハリーさんと言う……まあなんと言うか夢のようなチームと言うか悪夢(断言)のチームが出来上がっていた。あのウッドでさえも「勝てるかぁぁぁぁぁぁっ!!」と絶叫したほどだ。
けれど、ウッドの狙い通りにボッコボコにして貰った。手加減されていて、想像していたような悲惨な出来事はあまり起きなかったけれど、何をしても通じない、どうやっても敵わないことを骨の髄にまで染み込まされた。
お陰で心は強くなった。ハリーさん以外にだったら、どんな相手にでも向かっていくことができるだろう。私自身もハリーさんのホワイトフォーミュラに簡単に抜かれ、目の前でスニッチを何度も取られ、そして最後にブラッジャーの散弾に巻き込まれた。そのせいで大体なんでもできるようになったと思う。
「もう、何も怖くない……!」
「エリー、それ危ないから辞めよう? な?」
ロンに危ないと言われたのでやめることにした。理由はわからないけれど、魔法界に伝わる何かだったりするんだろう。多分。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き