ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 一日、ダーズリー家跡で夜を過ごした。今日は雨が降ってなくて本当によかった。割と暖かくなってくる頃だから風邪をひくようなこともないし、ハリーさんの渡してくれた非常食のお陰でご飯にも困っていない。

 それに、そんな中でも優しくしてくれる人は居る。フィッグさんは特にそうだ。

 ダーズリー家がまだあった頃、ダドリーの誕生日に高級レストランに行くとき、私を嫌な顔一つせずに預かってくれたし、ちゃんと人間が食べるものらしい食事もくれた。本当に、人間も捨てたものじゃない。

 

 ……ヘドウィグは、ちゃんと手紙を届けてくれたかな? 途中で危ない目に会ったりしてないかな? ご飯は……ヘドウィグは狩りが上手だし、大丈夫だよね。

 ……よし、私も頑張ろう。幸運なことに応援してくれる人も居るし、プリベット通りはあんまり治安も悪くないし……私みたいな子供が何日か焼けた家の跡で寝泊まりしていても大丈夫な位だもの。まだまだ頑張れる。

 

 ……でも、やっぱり少し寒いな。人が居ないって言うただそれだけのことで、見慣れた筈の場所もなんだか寒々しく感じてしまう。

 一人で居ることも、何もしてもらえないことも、私にとっては日常だった筈なのに……ホグワーツと言う暖かい場所での暮らしで、いつの間にか私はこんなに弱くなっちゃった。

 

「そんな娘っ子にそっと這い寄る奈落の底より深き者、俺参上」

「いつから見てたんですか!? と言うかどうやってここに来たんですか!?」

「娘っ子がさびしんぼオーラを出してたのを感知したから大淵よりも深い場所から気合いで来た」

「……まあ、さびしんぼオーラは置いておくとして……どこですかそこは? まるで邪神か禍津神じゃないですか」

「敵対した相手にとっては俺は大概の場合禍津神か邪神か災厄の化身か破壊神か悪魔か祟り神だからなぁ……」

「……否定材料を下さい」

「娘っ子に渡した袋の中の料理は俺が作った」

「わーい!ハリーさんってば料理人!悪魔だなんてとんでもないです!結婚してください!ダメならまたペットにして下さい!」

「結婚は少なくともあと五年はする気はないし、娘っ子をペットにしていたことは一度たりとも無いだろうに」

「じゃあ今回の事で前例ができるわけですね?」

「いつの間にか娘っ子がペットになることが確定事項として扱われているが、しないからな?」

「そんなぁ……」

 

 ハリーさんは私の事を飼ってくれないらしい。まあ、私もただ飼われるよりは一緒に働いて協力して暮らす方が好きだからそっちの方が嬉しくはあるのだけれど。

 

 ……と、それはそれとして私はハリーさんと話をしながらロン達のお迎えを待っていた。実際にお迎えに来てくれたのはもう何日か後の話で、ロン達が車を使って来てくれた。

 ……この場所に来る時には道がわからなかったらしくて普通に道路を走ってきて、帰りには人目の無いところで空を飛んだ。しかも、空高く……具体的には雲の上に行くくらいの高さまでは透明になって外からは見えなくなるんだとか。

 凄い改造だと思ったけれど、もしもそれを盗まれたりしたら大変なことになるだろうなとも考える。

 

「その辺りはどうなの?」

「……一応、マグルの製品に魔法をかけるのはあんまりよくないことだって言われてる」

「…………」

「下を指差して無言で訴えなくてもいいよ、パパだってバカじゃないんだ、ちゃんと法律の抜け道を作って……」

「……作って……?」

「……なんでもない。ただ、改造したとしてもその機能を使わなければ全く問題ないって言うことになってる」

「………………」

「いやだから指差さないの」

 

 どうやら実際には使ってはいけない機能らしい。そういう話なので私はとりあえず今まさに空を飛んでいると言うことを見なかったことにして、ロンとの話に集中した。

 

 ……ちなみにハリーさんはロンとロンのお父さんが来るほんの数分前にいなくなっていた。突然ハリーさんの足元に穴が空いたかと思うと、ハリーさんを飲み込んで消えてしまったのだ。

 ハリーさんはまるで夢中でなにかをしていてふと時計を見た時のような顔でその穴を見て、自ら飲み込まれていったので心配はしていない。

 それに、またホグワーツ行きの汽車の中で会うと約束したし、不安な事なんて一つもない。

 

 ……いやごめん、あった。こんな鉄の塊が空を飛ぶなんて普通ありえないからちょびっと不安。もしも飛行用のブースターが壊れちゃってたり、不具合が出ちゃったりしたら一発であの世行きだもの。

 例え落ちなくっても透明化機能が壊れて透明になれなくなったてマグルたちに見られただけでもアウトだし、ロンのお父さんが魔法を使っても見られたらアウト。ついでに私もロンも学校の外で魔法を使ったら間違いなく退学になってしまう。

 

「ねえロン、なんだか凄く不安になってきたんだけど……」

「少しは信じなよ。大丈夫だってば。それに、マグル製品が空を飛ぶのが不安だって言うなら箒が空を飛ぶのだってマグルからすればあり得ないことなんだろ? エリーは箒に乗るのが上手いし、大丈夫だって」

「箒はちゃんと私の言うこと聞いて動いてくれるけど、これは私の考えた通りに動かないもん」

「あーもうわかったよ、じゃあとりあえず寝てなよ起きた頃には着いてるだろうから」

「あの世に?」

「僕の家だよ!いやまあ確かに狭いし汚いし人口密度高いし所々壊れてるしすきま風入るしなんか変なの住んでる所があるしちょっと臭い場所もあるけど地獄よりずっとましだよ!」

「ご飯は?」

「そこそこ美味しい。毎日食べてても飽きないね」

「寝る場所は?」

「ベッドがあるよ。ちょっとバネが弱くなってるところがあるけど……」

「屋根は?」

「あるよ!? と言うかエリーは屋根の無いところで寝泊まりしてたの!?」

「物置の床にタオルを一枚敷いてその上で丸くなって寝るのが日常だった頃もあったし、時々顔が気に入らないって言われて庭に放り出されて草の上で寝ることもあったよ」

「パパ!エリーに一番いいベッド使わせてあげたいんだけどいいよね!」

「お前はどうするんだい?」

「床でも椅子の上でもいいよもう!」

 

 どうやらロンのお家は天国みたいな所らしいです。ちゃんとしたご飯と雨風を凌げる寝床が揃ってるだなんて……。

 

「エリーは天国の敷居低すぎない!? ホグワーツはどうなっちゃうのさ!?」

全て遠き理想郷(アヴァロン)?」

 

 ロンが泣いた。なんでだろう?

 

 

 




 
 次回はえっちい方です。
……最近書くのが大変。やっぱりノリまかせに書くのが一番ですよねぇ……。

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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