ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 ここからアズカバンです。


エリー・ポッターとアズカバンに入るべきヤツ
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 side エリー・ポッター

 

 プリベット通りに戻ってきて、一番初めにダーズリー家が無いことに気づいた。私の知る限り一番優しくしてくれたフィッグさんに聞いてみたら、火事が起こって色々あってダーズリー家は離散してしまったらしい。今ではバーノンおじさんは檻の向こう側で臭いご飯を食べているらしいし、ペチュニアおばさんはダドリーを連れてどことも知れない場所に行ってしまったそうだ。

 ……とりあえず、このくらいのことなら落ち着いて対処することができる。確かにショックは大きいけれど、ハリーさんが今までやってきた事を思い出してみれば実際は大したことはない。単に、保護者から捨てられてしまっただけの話だ。

 

 私はすぐに手紙を書いた。相手はロンとハリーさんとハーマイオニー。今年はロンの家に遊びにいく事になっていたのだけれど、できれば少しお迎えに来てくれるのを急いでくれると嬉しい、と言う内容だ。

 もちろんちゃんと私の家が燃えちゃったことと、家族が私を捨てて居なくなってしまったことも書いておく。

 本当はマルフォイにも出したいところだけれど……マルフォイのお父さんが自分の屋敷しもべを解雇してしまったり、議会を脅迫しまくってダンブルドアを退陣にまで追い込んだりしたことが明るみに出て議会をクビになったり……まあそんな感じで色々あったらしいので今回は私に頼られている余裕なんて無いだろう事を鑑みて報告だけに止めておいた。

 

「よろしくね……ヘドウィグ」

 

 真っ白なふくろうは低く鳴いて、籠から音を殆ど立てずに飛び立った。

 ……暫くはハリーさんに貰った携帯食料なんかで食いつなぐとして……後は連絡が帰ってくるまで勉強と寝るくらいしかやることがないなぁ……。

 

 

 

 

 

 side ハリー

 

 日刊予言者新聞にその記事を見付けたとき、俺はようやく行動できるとほくそ笑んだ。

 原作でもあった、ロンの父親がガリオン籤グランプリを当てたと言う記事。原作と違うのは、背景がピラミッドではないと言うところだが、それでも家族全員が写真に写っている事には変わり無い。

 そして俺にとっては、全員……と言うより、ある一匹がこの写真に入っている事が必要条件だったんだが……その必要条件は十分に満たすことができた。

 

 俺は今日出たばかりの日刊予言者新聞を片手にもう一度アズカバンに不法侵入した。

 前に入った通り、陰気なところだ。檻はずいぶんとがらがらになったが、それでもかなりの人数が檻の中に囚われているのは間違いない。

 その中を歩き回って、俺は目的の相手を見つけた。

 

「やあ、幾年振りかは忘れたが、久方振りだ、シリウス・ブラック」

「…………ああ、なるほど。確かに久方振りだな」

 

 俺は名付け親に笑顔を向ける。まあ、笑顔を向けたところで【ライアーズマスク】によって変えられた顔だから別に親愛の情を向けたわけでもないんだが。

 ……と、確かもうすぐイギリス魔法省大臣が来るんだったか。急いでおかないとな。

 

「用件は前回と同じだ。ブラック家を中身ごと貰いたい」

「断る」

「そう言うな……ほら、これを見てみな」

 

 俺は檻の中に新聞を放り込んだ。名付け親はそれを拾い上げて……そして目を見開いた。

 

「こいつは……!?」

「ポッター夫妻を売った男だな」

 

 名付け親は俺の言葉に即座に視線を俺に向けた。

 

「……何が望みだ」

「言っただろうが。ブラック家をよこせ。そうしたら杖もくれてやるぞ?」

 

 ひらひらと名付け親の目の前で杖を振れば、名付け親はギリリと歯を軋ませた。

 

「…………いいだろう。元々私には必要の無い物だ。お前にくれてやる」

「そりゃどうも。……クリーチャー!」

 

 確認のためにクリーチャーの名を呼んでみれば、初見ではないが初めて出会う屋敷しもべ妖精が俺の目の前に現れた。

 頭を抱えて転げ回り、俺の命令に従うものかと声を張り上げ続けているが……俺はクリーチャーに優しく命令してちょっと黙らせた。

 

「……確認した。それではまたいつか合うことになるかもしれんが、互いに初対面となる出会いを楽しみにしておくよ」

 

 杖を残して、俺はクリーチャーと共にブラック家の居間に転移した。

 ……さて、あとやるべきことは、ここの分霊箱を破壊することだが……ついでにクリーチャーの忠誠も得ておくとしよう。

 

「まあ、とりあえず座るといい。そして、このロケットのかわりにこの家に代々伝わり、レギュラス・ブラックがヴォルデモートの所から盗み出してすり替えた時の盗んだ方のロケットがどこにあるのかを教えてくれ」

 

 クリーチャーは俺の言葉に怯んだ。まあ、突然現れて秘密にしていた筈の事を話せと言われては怯みもするだろうが……それについては割とどうでもいい。ただ、さっさと話してほしいと言うだけの話だ。

 

「……クリーチャー。レギュラス・ブラックがあの洞窟からロケットをすり替えた日に、何があったのかを教えてくれ」

「……はい」

 

 御主人様、などと繋げることはなく、クリーチャーはただ最低限頭を下げた。その姿はまだ俺を主とは認めていないと言う思いに溢れていて、中々面倒臭そうだ。

 ああ、ちなみに話の内容は原作とほぼ一緒だった。

 ヴォルデモー太君に呼ばれてあの場所に行って薬を飲み、レギュラスに言われたから帰ってきて、そしてレギュラスを連れていって薬を飲み干した所ですり替えて、そして破壊しろと命じられたが破壊できなかったと言うこと。今でも破壊できないと言うこと。圧縮して言ってしまえばその程度の事だ。

 

「……なあ、クリーチャー。俺はそいつを開けられるし、壊せる」

「!?」

 

 クリーチャーの耳がピョコンと跳ね、下ばかり見詰めていた目がようやく俺を見た。

 

「開けるには蛇語を使えばいい。そして俺は蛇語を使える。壊すには『悪霊の火』か『バジリスクの毒』が必要だ。俺はどちらも使えるし、持ってもいる。

 ……そこで提案だ。実のところ、俺がシリウスからこの家を貰った理由には、そのロケットを壊したいからと言うのがあった。そして、お前がそのロケットを壊すように命じられていることも知っていた。だから、俺に協力してそのロケットを破壊してくれないか?」

 

 俺がそう言うと、クリーチャーは無言で、しかしさっき見たばかりの最低限の礼とはまるで違う、深々とした礼を見せた。多少は認めてくれたようでよかったよ。

 だが、ここでさらにダメ押し。俺は指先からぶら下げていたブラック家の家宝のロケットを、クリーチャーの首に下げさせた。

 

「……受けとれ、クリーチャー。レギュラスならば、お前が仕事を成功させれば誉めただろう。それもこれだけ大きな仕事を成し遂げるのだ。このロケットを、誰よりも自分の秘密を知っている屋敷しもべであるお前にあげたいと、そう思うだろうからな」

 

 ……クリーチャーは、その言葉を聞いて泣き出した。悲哀や絶望などによる負の感情から来る涙ではなく、明らかに喜びから来る涙であることがわかった。

 

 この日、分霊箱が一つ破壊された。原作とは違い、日記ではなかったが(正確には日記もごく僅かに中の魂だけが損耗している)、数としてはこれで合うはずだ。

 ……それと、俺はほぼ無料で別荘を手にいれた。大量に保護呪文をかけておき、俺とクリーチャー以外は出入りどころかそこにあると認識することすらできなくなったが、それでこそ俺の別荘にふさわしい。

 ……賛嬢ちゃんの地味化能力を少し借りたが、恐ろしいな。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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