ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ロンの杖が大変なことになっていた。どうやら決闘クラブでハリーさんが使った『約束された星の破壊』による強力すぎる魔力がロンの杖をおかしくしていたらしい。

 その場に居たほとんど全員の杖はなんらかの不具合を出していたし、ロックハートの杖なんて武装解除され過ぎて消し飛んでしまった。ハリーさんのやることだからと納得していた人が大半だったし、ちょっと杖が影響を受けた程度の人達は時間が過ぎるごとに杖の調子も元通りになっていったので気にも止めていなかった。

 私の杖もほんの少しだけおかしくなっていたけれど、それまで通りに魔法を使うこともできたし気にしないでいたら三日で元通りになった。

 それはロンも同じで、少し時間はかかったけれど元通りになろうとしていた。

 

 ……ところが、杖を失ったロックハートがロンの杖を借りて何かをしようとした瞬間、それまでは普通に使えていたはずのロンの杖が呪文を逆噴射してロックハートの鳩尾に呪文を撃ち込み、かなりの勢いで吹き飛ばしてしまった。

 ……ハリーさんにやられてきたことに比べれば大したことはないような気がするけれど、ロックハートはそれで気絶してしまった。ちなみにハリーさんが同時になんらかの呪文を唱えていたのなんて私は見ていないし、聞いてもいない。

 ロックハートはそんな風に自爆して、医務室に運ばれた。ロンの杖はロックハートと一緒に吹き飛んで粉々になってしまったが……ロックハートの記憶を奪い去ることに成功し、ロックハートを学校から追い出すことができて嬉しがっている先生方がお金を出しあってオリバンダーの店で見繕ってくれると言う話におさまったらしい。ロンは嬉しそうだったけれど、使い続けていた杖を失って少しだけ寂しそうだった。

 

「……ハリーさんだったら、ロンの杖を直すことくらいできたんじゃないですか?」

「原型を知らん。俺が知っているのは先の方から杖の芯が若干はみ出ていると言う壊れた姿でしかないし、レパロは完成品の状態まで戻す魔法だから『純粋な時間経過で壊れた物』を直すのは難しい。そも、折れた杖を直すんだったらよっぽど強力な杖を用意しなくちゃ無理だぞ? 『死の秘宝』の最強の杖……『ニワトコの杖』とかな」

「『死の秘宝』?」

 

 ハリーさんの口から出てきた言葉に首を傾げる。一度も聞いたことがない名前だけれど、何故か凄く嫌な予感がした。

 

「……ああ、娘っ子はマグルに育てられた上に魔法に関わらせてもらえなかったんだったな。……さて、となるとどこから話したものか……?」

 

 数秒悩む素振りを見せたハリーさんは、すぐに面倒臭げに開き直った。どうやら悩むのが面倒になったらしく、色々話して聞かせてくれるそうだ。

 

「さて……娘っ子は『吟遊詩人ビードルの物語』を知っているか?」

「知らないです。有名な小説か何かですか?」

「間違ってはないな。魔法界では最もメジャーな子供向けの童話集なんだが……この中に後に『死の秘宝』と呼ばれる事になる三つの宝が出てくる話がある。一つは最強の力を持つ『ニワトコの杖』」

 

 ハリーさんは空中に杖で縦に一本の線を引いた。

 

「死者を蘇らせることのできる『甦りの石』」

 

 縦の線の端に重なるように円を書く。

 

「そして最後に、あらゆる物から身を隠すことのできる『透明マント』」

 

 縦の線の両端に頂点と底辺が重なるように三角形を書き、そうして作られた図形を私によく見えるようにふわりと飛ばした。

 

「この三つは、物語の中では『死』が三人の兄弟に与えたことになっている。事実かどうかは知らんがな」

 

 そう言うハリーさんと私の間で、『死の秘宝』を現す図形がくるくると回転してばらけた。そしてハリーさんが新しく書いた誰かが、別の誰か達に一人に一つずつ手渡している。

 

「渡された三人の兄弟達が『死』にそれぞれ望んだ物は違い、『ニワトコの杖』を選んだのは長男。この長男はすぐ近くの村でこの杖で決闘し、最強の杖だと言い触れ回って殺された」

 

 ニワトコの杖らしきものを受け取った人は、眠っている間に誰かに殺されてしまった。するとさっきの『死』が現れて、殺された人の魂らしきものを持っていってしまった。

 

「『甦りの石』を手に入れた次男は、出身地に帰って愛した妻を蘇らせた。しかし、一度死んだ妻は現世に馴染めず、触れることもできなかったために、次男は自分が妻の元に行くために自殺した」

 

 石を持っていった人が愛する人を甦らせ、喜び、絶望し……そして首を吊った。そしてまた『死』が現れて、次男の魂を持っていった。

 

「三男は『透明マント』を手に入れ、それを使って『死』から逃げ続けた。そして最後には自らマントを脱いで自分の子供に与え、『死』を喜んで迎え入れた」

 

 最後の一人が『死』から逃げ回り、そして自分のマントを新しく出てきた小さな人影に着せて、『死』の手を取ってどこかへと消えた。

 

「……まあ、力ばかりあってもそれは簡単に失われてしまう、相手を辱しめようとすれば自分にいつか戻ってくる、だから人に優しく生きましょう……って話だが……この話に出てくる三つの秘宝は実在する……という話がある」

「それが、『死の秘宝』……?」

「そうだ。その三つを全て一人で所持すれば、死を制することができると言われている」

「……どこにあるかを知ってたりは……」

「今はまだ秘密だ。もうちょっと大きくなったら教えてやる」

「身長ですか胸ですかっ!」

「年齢だよ安心しろ時期が来れば教えてやるから」

 

 身長でも胸でもなかった。だったらまだまだ未来はある。

 ……いや、身長だって胸だってまだまだ未来はあるよ!私まだ12歳だし!まだ大きくなれるよ!目指せ、身長140センチ!

 

「目標ちっさ」

「背が高い人にはわからないでしょうねこの屈辱は!どこに行ってもプライマリースクールにすら通っていないように見られちゃう事なんて!」

「俺は見た目の年齢を自在に変えられるからよくわからん」

「わーんハリーさんの人外ーっ!」

 

 私はその場から逃げ出した。なんだか周りから微笑ましい物を見るような目で眺められたけれど、今の私にそんなものを気にしていられるような余裕はなかった。

 

 ……くすん、身長が欲しいよう……。

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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