ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ある大雪の日のこと。ジャスティン・フィンチ-フレッチリーと、はれて首無しになったニックが襲われたという話を聞いた。どこで襲われたのかは知らないけれど、ジャスティンは石化していて、ニックはニックでかなりのダメージを受けていたそうだ。

 けれど同時に、ハリーさんの所に大量の注文が入った。どうやらジャスティンの居た場所の近くにハリーさんの『時告げバッジ』が転がっていて、さらに廊下の端に何かが暴れたような跡があったということだ。

 そしてその場所には沢山の猛毒の血と、割れたり欠けたりしていたものの沢山の蛇の鱗が撒き散らされていたらしい。

 ちなみにその事をハリーさんに聞いてみたら、何でもないかのように証拠品と言って綺麗な一枚の鱗を見せてくれた。どうやら本物を拾ってきていたらしい。

 

「何拾ってきてるんですかハリーさん……」

「? 何って……」

「『見ればわかるだろう?』みたいな顔で鱗を指差さないでください!と言うか何の意味が違いますから!何を拾ってきてるじゃなくて、何で拾ってきてるんですか、ですから!」

「何でって……あった方が便利だから?」

「なににつかうんですか!?」

「呪詛の材料と言うか……媒体?」

「呪詛……?」

 

 よくわからないと言う顔をしていたら、ハリーさんはいつも通りの両目を閉じた面倒臭げな無表情のまま教えてくれた。ハーマイオニーは……流石に今回のは知らなかったらしい。

 呪詛とは、私たちが使っている呪文による呪いとは全く別体系にある魔法による一種の攻撃方らしい。中国から産まれて日本で『神道』や『仏教』、『道教』等の影響を多大に受けて独自の進化を遂げた『陰陽道』に属する攻撃術で、遥か遠方から相手の姿を視認することもなく一方的に相手を害することのできる術だとか。

 勿論それを成立させるには様々な事前の準備が必要で、そのうちの一つに『呪詛をかける相手に所縁のある何か』を使わないといけないらしい。

 それも、その相手に所縁の深いものであればあるほどその呪詛の効果は増すので、できるだけ相手に近しい物を集める必要があるとか。

 ちなみに実践としてロックハートの髪を藁で編んだ人形に捩じ込み、適当な場所に長い長い釘を使って打ち込み始めたらあっという間に効果が現れてロックハートの部屋から断末魔のような声が聞こえてるようになったけれど、ハーマイオニーは知的好奇心を満たすためにハリーさんの言葉に集中していて全く聞いておらず、ロンはどうでもよさげにスルーした。ちなみに私も同じようにスルーした。

 

 それはそれとして、今回のことでハリーさんの商品の効果が立証されたと言ってもいいらしい。あの鱗がバジリスクの物であり、何らかの事情でバジリスクに大きなダメージが入ったことは理解されている。

 そして、ハリーさんが以前に行い、ハーマイオニーが調べて確証を得た情報ではバジリスクは確かに雄鶏の時を告げる声を苦手とし、退散すると言う記述があった。

 バジリスクにあれだけのダメージを与えるには、二年生の魔力や知識ではまず不可能。故に、ハリーさんの作ったそのバッジにこそ原因があったのだと、よく訓練されたホグワーツ生徒は考えたようだ。

 しかも単体では非常に安上がりで、今回のことで立証されたように十分な効果も見込むことができる。そんなものが売りに出されていたら……まあ、今の状況で買いに走らないのは自分が純血だと知っている人か、あるいはスリザリンに居て買いたくても買えない人のどちらか。ハリーさんは大儲けですね。

 

「ここで一発スリザリンに入ってはいるものの半純血だったりする奴が襲われたらもう一稼ぎできるんだけどな」

「スリザリンの怪物がスリザリン生を襲うって言うのは難しいと思います」

「じゃあ俺がバレないように襲うか」

「やめてあげてください死人が出ますからやめてあげてください今度こそ死人が出ますからやめてあげてください今度こそ本当に死人が出ますからやめてあげてください」

「三回も強調されて繰り返されるとは思わなかった。娘っ子の俺への扱いの酷さに別に泣かないけど傷ついた、しょうがないからとりあえず闇の魔術に対する防衛術の教師に『ボラボラボラボラボラーレヴィーア(飛んでいきな)!!』してくる」

「ちょっと前にやったばかりじゃないですか」

「それはそれ、これはこれ。あの時やったからと言って今やらない理由にはならない」

「だからって……」

「さっきおやつ食べたから夕食要らないよね? って言われて納得できるか?」

「いってらっしゃい、ハリーさん」

 

 ハリーさんは私ににっこりと笑いかけてから、まるで初めからそこに居なかったかのように姿を消した。瞬間移動か空間転移か、あるいはただの高速移動なのかはわからないけれど、ハリーさんはもう物理法則を平然と越えてしまえるようになったみたい。

 普通ならあり得ないけど……まあ、ハリーさんだしね。

 何にでもツッコミを入れるのは簡単だけど、だからって現実を認めないのは人間としてやってはいけないことだと思うので、ツッコミを入れつつも起きた事象は受け入れる。

 それがどんな辛いことだったとしても、それを事実として受け入れることは必要だ。ただ呆然としているだけではなんにもならないし、そうしている暇があるなら少しでも行動した方がいい。

 動かないって言う選択肢も行動の一つだけれど、何をしていいのかわからないから動かないのと、動くべきではないと理解しているから動かないのとでは行動に大きな違いが出てくるものね。

 

 具体的な例で表すのなら……ハリーさんを見て震えながら逃げようとするだけのロックハートと、ハリーさんを見て全速力で逃げ出すクィレル先生の違い。震えるばかりで何もできないロックハートは今はハリーさんに『ボラボラボラボラボラーレヴィーア(飛んでいきな)!!』されちゃっているけれど、クィレル先生は……あれ? 確かヴォルデモート卿が取り憑いてたからハリーさんに消毒されちゃったんだっけ……?

 

 ……ま、まあ、その話は置いておくとして……私も『秘密の部屋』についてもうちょっと調べてみようと思う。誰に聞けば詳しく教えてくれるのかはわからないけど……絵の人達なら知っている人が居たりしないかな……?

 ハリーさんが調べた時点でゴースト達が他に知っていることはなさそうだし……あれ? 確か……殺された本人がゴーストとして留まってるんだっけ……?

 なら、その人にも話を聞いてみよう。見付かれば……だけどね。

 

『ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラーレヴィーア(飛んでいきな)!!』

『ギャァァァァァァァッ!?』

 

 ……あ、ハリーさんってば本当にやったんだ? それじゃあ、ロックハートの冥福をお祈りしましょう。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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