ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
朝、目を覚ましたら隣でハリーさんが椅子に座ったまま眠っていた。どうやら昨日の夜からずっと私についていてくれたらしい。
けれど、昨日の夜には何もなっていなかった筈のベッドの一つに白いカーテンが引かれて中が見れないようになっているのが気になった。
ハリーさんに聞いてみれば、あそこに居るのはコリンだと言う。ハリーさんの話を聞いてちゃんと前を見るときには何かを……コリンの場合にはカメラを通して見ていたらしく即死はしなかったが、それでもミセス・ノリスのように石にはなってしまったらしい。
夜遅くに寮を抜け出す時に鶏なんかを連れていたら間違いなく鳴き声でバレてしまうと考えたようで、雄鶏もいなければ雄鶏の時告げの声が流れるバッジも持ってはいなかった。
かわりに持っていたのは、どうやら私にお見舞いとして渡すつもりだったらしい葡萄が一房。自業自得と言ってしまえばそれまでだけれど、私はそう言ってはいけない気がする。
……これで、『私のせいでコリンが危ない目にあった』……と泣いたりできればいいのかもしれないけれど、私はまだよくコリンの事を知らないし、コリンは私の腕が折れている時に先生を呼ぶことすらせずに写真を撮り続けていた。その後にいつもと変わらない笑顔を浮かべていたロックハートに比べれば幾分ましだけれど、それでも正直あまり好きな相手ではない。
もしも襲われたのがもっと親しい……ロンやハーマイオニーやマルフォイ程とまでは言わないけれど、例えばクィディッチ・チームで一緒に何度も練習を繰り返したフレッドやジョージだったり、ウッドだったりしたらきっともう少し心配したりしたんだろうけど……いくらお見舞いに来ようとしていたと言ってもコリンにはあまり同情しようと思わない。
……とは言っても、今回のことでコリンは好意が空回りした結果としてああ言う態度をとっていると言うことがわかったので、少しだけその人柄を上方修正しておこうと思う。
それから、昨日の夜にドビーが来たらしい。私がホグワーツに戻ってきたことを良くないことだと言ってあの家に送り返そうと、ブラッジャーを操って私だけを延々襲わせ続けたそうだ。
ドビーが言うには、やはり今回も『秘密の部屋』が開かれて中の恐怖が外に出てしまったらしい。
そこまで話したところでドビーは自分にお仕置きをしようとしたがハリーさんはそれを押さえて止め、止められたドビーは泣きながら私を家に帰らせろとハリーさんに何度も何度も言ったらしい。私は屋敷しもべ妖精にとって大切な方なのだと、青空で輝ける太陽のように、闇夜を照らす満月のように、何よりも大切なのだと。そう言って、私をあの家に帰らせてくれと懇願したらしい。
……でも、もしもその時私が起きていたら、きっと私は全力で拒否していただろう。どうして必要もないのにあんなところに戻らなくちゃならないのか。どうして私を嫌い続け、できることならば自殺に追い込もうとすらする人達の中に自分から戻りたいと思うのか。
少なくとも、私は嫌だ。今のホグワーツは確かに危険かもしれないけれど、それでもあの家に居れば私は間違いなく殺されてしまう。十一年も生きてこれただけでも十分に奇跡的だ。私にって、あの家と今のホグワーツを比べれば危険度はむしろホグワーツの方が低い。
なら、わざわざ家に戻って死にに行くようなことはしたくない。
「……まあ、娘っ子だったらそう言うだろうな。だからこそ俺も娘っ子を学校に来させたわけだし、今も色々やってるわけだし」
「……今も?」
「今もだな。たとえば雄鶏とか、録音された時告げの声バッジと、即死しないように伊達眼鏡。かなり安めに……と言うか、俺じゃなかったら間違いなく足が出てる値段で大量に売っている。なにしろ雄鶏以外は一つ一クヌート、三つで二クヌートだ。普通は売れば売るほど赤字だぞ」
「……ハリーさんの場合は……?」
「そこらの石を鍋に放り込んで草と水と合わせて煮込めば材料は出来るから、材料費は0。それから作るのも俺の手作業だから経費は0。だから俺の場合は売れば売るだけ儲かる。手間に比べてかなり安いがな」
「ハリーさんの無茶苦茶っぷりが見事に発揮されてますね……」
「こつこつ小金を稼ぐのも嫌いじゃないからな。一気に大金を稼ぐのも嫌いじゃないが、少しずつ増えていく貯蓄の額を見るのは気分がいい」
「貯蓄なんてしたこと無いからわからないです」
「……俺のところで働いた給料は?」
「…………あ!?」
完全に忘れていた。誰かからお金を貰うのも初めてなら貯蓄するのも初めてで、ついでにマグルのお金を使うのも初めてだったから全く意識してなかった。
ハリーさんは私のそんな状態を見て溜め息をついたが、深く追求してくることはなかった。私にとってはそれがとてもありがたい。もし追求されていたら多分泣いちゃう。
「涙目の女の子は弄りたくなるよな」
「私に同意を求めないでください。それは私にはよくわからないです」
まあ、ハリーさんのその趣味には何度も助けて貰っているからあまりどうこう言える立場には無いんですけどね。ハリーさんのお陰で、今日も私は精神的に鬱屈しないで済みます。
……やり方が『ボケてツッコミさせて溜め込んでるものを纏めて吐き出させる』なんて言う方法じゃなければ、もっとハリーさんを頼る人も増えるかもしれないのに。ハリーさんの好きなやり方と言うか、一番楽なやり方がそれだって言うんなら仕方無いけれど、ハリーさんなら他のやり方もできると思う。やるやらないは別として。
一度ハリーさんに離れてもらって、パジャマから普段の服に着替える。昨日の骨の奥から響くような痛みはすっかりと消えていて、動かすのになんの支障もない。
着替え終わったら手を握って開いてを繰り返し、指の関節一つ一つを自分の意思で個別に曲げ伸ばしする。やっぱり小指だけ曲げようとするのは他の指よりもほんのちょっとだけ大変だけれど、それもまたいつも通り。……これで、完全回復……かな。
それじゃあ、今日も元気に過ごしていこう。いつもの通りに起きたから、いつもの通りにご飯を食べて、いつもの通りに授業を受けて……いつもの通りに眠りに落ちる。
……そんな、いつも通りの日常に祝福あれ。できることなら『秘密の部屋』についてもすぐに解決してくれると嬉しいけれど、流石にそこまで都合良くはいかないよね。
ちょっと残念。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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金色のガッシュ
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