ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 左腕前腕両骨骨折。左手の第三から第五中手骨を骨折。左肘と手首に脱臼。スニッチをキャッチはしたものの、スニッチを見付けてからキャッチするまでの数十秒とキャッチしてからの数秒で私が負った負傷の全てである。

 試合が終わってからの追撃二発目はハリーさんが足の裏で力任せにブラッジャーを地面に埋め込んだので無かったけれど……それまでに受けた怪我だけでもかなり痛い。今でもズキンズキンと痛み続けている。

 ロックハート先生が何かをやろうとしていたけれど、ハリーさんがブラッジャーと同じようにその頭を地面に埋め込んでくれたので何もされることはなく医務室に行くことができた。

 医務室ではマダム・ポンフリーが私の怪我を綺麗に全部治してくれたけれど、急激に怪我が治りすぎたせいか私の身体が治ったことを理解していないでいまだにズキズキと痛みの信号を頭に送り続けている。

 その事をマダム・ポンフリーに言ってみたら、やっぱり時々そういう人が居るらしくてその時に痛みを我慢して動くのはよくないという話をされ、今日は医務室に泊まっていくことになった。

 このくらいの痛みだったらもういつものことだし、あまり気にするようなことでも無かったかもしれないけれど……我慢して動くと背が伸びなくなるかもしれないと言われて寮に戻るのを諦めた。身長がもう少し……せめて140はほしい。あと40センチ超という長い道程だけど、諦めたくはない。

 それに、ホグワーツに来てからはしっかりとご飯を食べていて栄養も取っているから、まだまだ延びる気配はある。

 そう……

 

「未来はあるよ!」

「……今起こったことをありのままに話すぜ。『幻痛に襲われている筈の娘っ子の様子を見に来たら突然娘っ子が叫んでいた。』な、何を言っているのかはわかってくれるだろう。娘っ子はたまに壊れるが、それが今ここで出ただけだ」

「私は壊れてないですよ!」

「変にはなるがな」

「ハリーさん程じゃないと自負しています」

 

 いつの間にか隣に居たハリーさんの言葉に軽くツッコミを入れながら、私は目を閉じる。ハリーさんはよくわからない事を時々言うし、よくわからない言い回しを好んで使ってきたりするけれど、話すのに苦痛という訳じゃあないし、眠ろうとする時には静かにしてちゃんと眠らせてくれる。

 私がご飯を食べるのが大好きなように、ハリーさんは眠るのが好きらしい。だから、ハリーさんは人が眠ろうとしているところを邪魔することだけはしないようにしているんだとか。

 ……一度でも自分の眠りを妨げた相手を除いては、だそうだけれど、それについては当然とも言える。私だって食事を邪魔してきた相手が何かを食べているのを食べ終わるまで待つなんて事はしないだろうし。

 

「まあ、とりあえず今日はゆっくり寝とけ。しっかり眠ればその幻痛もおさまってるだろうさ」

「はーい」

 

 ハリーさんに言われて私はベッドに横になる。実はハリーさん以外の人達は、マダム・ポンフリーに言われて外に出されている。ハリーさんはなぜか平気だったけれど……まるで『そこにいない』かのように扱われていた。

 それはマダム・ポンフリーだけじゃなくて他のお見舞いに来た生徒達やクィディッチ・チームのみんなもそうだったから、多分マダム・ポンフリーがハリーさんを無視していたんじゃなくてハリーさんが他の全員に無視されるようにしていたんだと思う。

 普通の二年生だったらそんなことは絶対にできないだろうけど、ハリーさんはハリーさんであって他の人とは違うからね。他の人にはできなくてもハリーさんにはできることは沢山あるし、逆に他の人はできるのにハリーさんができないこともある。ハリーさんは他の人よりもできることが遥かに多くて、そして人付き合いがほとんど無かったからそれが普通だと思っているだけの……普通のとは口が裂けても言えないけれど、人間なんだしね。

 

「今俺の事を『口が裂けても普通とは言えないけど一応人間』とか思わなかったか?」

「思いました。あとハリーさん、『開心術』の対抗法を教えてください」

「いいぞ。『閉心術』って言ってな。相手が自分の心を読めないように表層に鍵をかけて入ってこれなくしたり、あるいは読まれてもいい部分と読まれたくない部分とを分割して隠したりすることができる技術だ。相手から自分を切り離すイメージとか、自分自身を二つに分けて片方を解離させるイメージとかを使う奴が多いな」

 

 ハリーさんは私の問いに即座に答えてくれた。ハリーさんは本当に何でも知っているような気がする。

 ハリーさん自身はきっと『なんでもは知らない。俺は俺の知っていることだけしか知らん』とでも返すのだろうけど、ハリーさんの知っていることはあまりにも多すぎる。それこそ、知りたいことを何でも映し出す水晶玉か何かのように。

 問えば、全く知らないなどと言うことはない。なんらかの回答を必ず返すことができ、そうして返された答はまず間違っていることはない。間違っている可能性があるときは返答の前になんらかの形でそれを示唆して見せるし、知らなかった部分はその場で持っている情報を組み合わせて推測を話してくれる。あのバジリスクの話のように。

 

 ハリーさんは私に布団をかけた後にぽふりと私を撫でる。私から見るとすごく大きな手が私の頭を撫でる度、暖かな感覚がゆっくりと広がっていく。

 

「……ハリーさんって、なんだかお父さんみたいです」

「俺が本当に娘っ子の父親なら、娘っ子は今もっと背が高いな」

「ふふふ……それは嬉しいなぁ……」

 

 ゆらゆらと意識を失いそうになりながら、私は右手をハリーさんの手に重ねる。私の視界を塞ぐハリーさんの手はとても暖かく、そしてなんだか安心できる。

 

「……ハリーさん」

「……なんだ、娘っ子」

「……私が寝るまで、そばにいて……頭を撫でて貰ってもいいですか……?」

 

 ハリーさんは何も言わずに、私の頭をゆっくりと撫でる。ハリーさんが撫でてくれる度、身体の痛みがどんどんと薄れていく。

 私は覚えている限りで初めて、寝るときに隣に誰かがいると言う暖かさを感じながら、夢の世界に旅立った。

 

 ……その日見た夢は、何故かダーズリー家が突然大炎上して叔父さん達の通帳や現金などが全て焼けてしまい、会社のお金に手をつけたのがバレて犯罪者となり、取引相手から切られて満足に食事も取れずに餓えと渇きに悶え、そこにいない私に向けて呪詛を吐きながら死んでいくと言う夢だった。

 ……いったい何がどうしてこんな夢を見たんだろう? わからないや。

 

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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