ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
暫くして……グリフィンドール寮でハリーさんから話を聞いた人達がこぞって鶏を飼い始めた結果……とりあえず非常に五月蝿いです。
「……やっぱり『とりあえず雄鶏連れ歩け』は無かったか」
「無かったですね。いやほんと」
そこら中で雄鶏が五月蝿い五月蝿い。よく鳴くし騒ぐし食べるし動くしつつくしで、本当に大変。ハリーさんがキレて周りの温度が一気に氷点下に下がってからはあまり騒がなくなったけれど、三歩歩けば忘れるって言われるのは伊達じゃないことだけはよくわかった。
そのせいかどうかはわからなかったけれど、とりあえず今のところ追加で襲われた人は誰もいない。動物でもそうだし、人間でもそうだ。
ただ、やっぱり五月蝿い。バジリスクに雄鶏の時告げの声が効くのは図書室の本にも書いてあって凄く信憑性の高い情報だと言うことをハーマイオニーが証明してからはそれはもう凄い速度でグリフィンドール寮の中で鶏が増えていっていたし、不安を煽るようなことをしたハリーさんも悪いんだしね。
ちなみにハリーさんは、何人もいた鶏用の篭を持っていない人にどこからともなく取り出した篭を1シックルで売っていた。本当だったらもっと稼げたのかもしれないけど、材料がそこら辺から拾ってきた石を変身させたものだったりしたらしいのでボロ儲けなんだとか。
それから、声を記録しておいていつでも何度でも再生することができるバッジを売り出した。時々鶏の声じゃなくてマルフォイが『フォーーーイ!!』って叫ぶ声が混じると言う悪戯機能付きだけど、その悪戯機能はON/OFFができて必要なときに『フォーーーイ!!』が出ないようにすることもできるとか。
「……でも五月蝿いことにはかわりないですね」
「仕方無いだろ。ちなみにあの篭には色々とギミックが仕込まれていてなぁ……中の鶏はまず安全だ。常時解毒やら回復やらがかかっているし、壊そうと呪いをかけたりすると増幅反射されてえげつないことになるわ、直接開けたり物理的な方法で中の鶏だけを殺そうとしても上手く行かないようになっているわ……持ち主以外が悪意をもって触れることができなくなってるな」
「そんな感じの金庫でも売り出したらどうですか?」
「気が向いたらやるかもな」
ハリーさんはそう言ったけれど、あまりやる気は無さそうだ。ハリーさんが作った金庫とか、絶対色々とえげつない仕掛けが満載になるだろう。盗んだ物を入れたら勝手に利子付きで返却されてるとか、ハリーさんに都合の悪いものを勝手に消滅させたりとか?
……いや、ハリーさんは確かに凄いけど、そんな都合のいいことはできないだろう。賢者の石もあくまで偶然できただけであって、再現することのできるようなものじゃ無いって言うことでもう作ってないそうだし……不可能なことだってあるよ。きっと。何が不可能かは知らないけど。
…………いや、ちょっと待って。
私はふと、凄まじいことを考え出してしまった。
もしも……そう、あくまでも『もしも』の話であるし、そもそもハリーさんはマグル生まれらしいから絶対に違うと思うけれど──────ハリーさんなら、『秘密の部屋』くらい、簡単に開けてしまえるんじゃないか? と言うことを。
私は隣にいるハリーさんを見上げる。栄養を取れるようになっても殆ど伸びる気配を見せない私の身長からすると遥かに大きく見えてしまうハリーさんが、いつもよりもずっと底知れないように見えた。
私は頭を振ってその考えを否定する。ハリーさんは私を何度も助けてくれたし、悪戯をしても絶対に取り返しがつかなくなるような一線だけは越えようとしなかった。そんなハリーさんが、あんな一歩間違えたら相手を殺してしまうようなことをする筈がない。例えしたとしても、そうするに足る理由が間違いなく存在しているはずだ。
だって、ハリーさんは意地悪で理不尽で無茶苦茶だけど───一度友人や仲間として見た相手を本格的に害することは絶対にしないから。
そのことを考えると、マルフォイは凄くいい位置に居る。いつもいつも弄られて大変ではあるかもしれないけれど、それでも絶対に後に残るような怪我はつけられていない。それどころか、ある意味ではむしろ身になることすらされている。
恐らく、ハリーさんの影響を一番に受けているのは私かマルフォイのどちらかで間違いないだろう。できれば私であってほしいと思っているが、そのあたりを楽観できるほど私は幸せな人生を送っていない。
……まあ、だからと言ってマルフォイの立ち位置に私が立つのは絶対に嫌だけどね。死んじゃうって本当に。
マルフォイはきっと実家で特殊な訓練を受けていたからあんな風に凄い威力のクヌート銅貨を額に打ち込まれても大丈夫なんだろう。ロンやハーマイオニーだったら間違いなく頭がパンッ!と弾け飛んでるはずだし。
……そう言えば、『秘密の部屋』についてマルフォイが怪しいとロンが言っていたので本人に直接聞いて確かめてみたところ、マルフォイはやっぱり何も知らないようだった。クラッブやゴイルも何度か聞いていたようで、うんざりとした表情で答えてくれた。
そこでハリーさんが調べた上で教えてくれた話をしてみたら、とりあえず50年前の事を知っている相手に色々話を聞いてみたらどうかとアドバイスをくれた。マルフォイもお父さんに色々聞いてみようとしたらしいけれど、お父さんは何も教えてくれなかったそうだ。
なんでも箝口令が敷かれていてあまり堂々と話すことができず、更にあまり知りすぎているとマルフォイ自身が疑われてしまうからと言うことらしい。
……ちゃんと心配してくれる家族が居るって言うのは羨ましい。私の側にはそんな人はいないから。
「それはそれとしてだが、クィディッチの練習は上手くやっているのか?」
マルフォイがちょっと暗くなった私の空気を読んだのか、もうすぐあるクィディッチの試合についての話を始めた。私も暗い空気をいつまでも引きずる趣味はないので、その話に乗っておくことにする。
「まあ、それなりかな。今年のグリフィンドールは強いからね? 油断してもいいけど負けちゃっても知らないからね?」
「はははは……去年と同じように圧勝して見せよう」
「おいフォイ。一応言っておくが娘っ子相手に洒落にならない反則かましたら明日の太陽は拝めないと思えよ」
「フォイ!? 僕に何をするつもりだい!?」
「『高血圧の呪い』をかける。数万倍になった血圧はその者の全身を内側から引き裂き、あるいは細胞を圧壊させる」
「マルフォイ死んじゃうから!? いくらマルフォイでも死んじゃうから!?」
と言うかハリーさんいつから居たんですか!? あとマルフォイの驚愕の声が『フォイ』だった気がするけど、気のせいって言うことにしておこう。
「フォイと話し始めてすぐかね」
「……気付いた?」
「まさか。普通の魔法使いが気付くわけがないだろうあんなもの」
「だよね」
ああよかった、私が普通で。
明日の投稿は「エリーちゃんの夢のペット生活二日目」です。
次回作は……?
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