ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ハロウィーンパーティが終わったところで色々あった……らしい。私はちょっと残ってハリーさんが取り置きしておいてくれた料理を食べていたのでよく知らないけれど、なんでも『秘密の部屋』とか言う場所が開かれたそうだ。
『秘密の部屋』がなんだかわからなかったのでとりあえずハリーさんに聞く前に同じ女子寮のハーマイオニーに聞いてみたのだけど、ハーマイオニーでも詳しくは知らないんだとか。
『ホグワーツの歴史』を読んで確かめてみようにも全部借りられていて確認することもできず……仕方がないので何でも知っていそうなハリーさんに聞いてみることにした。
「ハリーさん、『秘密の部屋』について、何か知ってることはありませんか?」
グリフィンドールの談話室で私がハリーさんに問い掛けると、ハリーさんなら知っていそうだと思いつつも聞くことができなかったらしい人達が一気に静かになった。そんな中でハリーさんはいつも以上に面倒臭そうに私に右だけ視線を向ける。
「……何から聞きたい?」
「全部です。ハリーさんが知っている『秘密の部屋』に関わることを、全部知りたいです」
ハリーさんは大きく溜め息をついた。けれど、面倒臭そうにしながらもちゃんと私の事を見て話をしてくれようとしているみたいだ。
「……全て、と言っても、俺が知ることはかなり少ない。何しろ古い話だし、『秘密の部屋』が作られた当時の事を知る者はゴーストや絵を含めてもかなり少ない。ギリギリな所として、レイブンクローの『灰色のレディ』とスリザリンの『血みどろ男爵』くらいだな。後は歴史書かスリザリン本人程度だ」
話を始めたハリーさんはそこで一度言葉を切った。けれど、レイブンクローやスリザリンのゴーストがどの年代に生きたのかを知っているグリフィンドール生なんてきっとハリーさんしかいない。その事をわかっているのか、誰もその空白に声を上げたりはしなかった。
注目を集めているのを煩わしいと思っているのか、ハリーさんは一瞬右目だけで周囲を睨んだが、何事もなかったかのようにまた口を開く。
「そんなわけで、俺がこれから語るのは推測が混じった事実の一部として聞いていてくれ。間違っていたとしても責任は取らんからな。
……さて、まず『秘密の部屋』のあらましについてだが、これについては歴史書の頭の部分……四人の魔法使いがこの学校を作り上げ、そしていつしかスリザリンと他の三名との間に大きな亀裂を生み、最後にはスリザリンが学校を去ったと言うところまでは、歴史書を読んでいれば知っている話だから割愛させてもらおう。
『秘密の部屋』について最も重要な話は他にある。スリザリンはこの学校に、他の三人が作った物と同じように、本人しか知らない隠された部屋を作ったと言うことだ。
だが、実のところこの学校で『秘密の部屋』と言えばスリザリンの作り上げたその部屋を指す。なぜならば、他の三人の作った部屋と違ってスリザリンの作り上げた部屋を開けるには凄まじく厳しい条件があり、その条件を満たす者が今までに殆どおらず、スリザリンの部屋だけは開けられることが全くと言っても良いほどに無かったからだ」
「その条件って言うのは……」
「正確には知らん。ただ、あくまでも推測に推測を重ねた結果として仮説を立てるのならば……『蛇語』だろうな。そうでなければ……例えば強力な闇の魔術が鍵だとすればこれまでのホグワーツの校長達が間違いなく開いているだろうし、『灰色のレディ』曰くスリザリンは完璧主義だったそうだから偶然開く可能性のある合言葉など使うことはなかっただろう」
ハリーさんの言うことは筋が通っている。間違いなく、ただただ歴史書を読み上げ続けているだけの人が言うことよりずっと説得力がある。
特に、当時の正確なことがわからないからゴーストにまで聞いたと言うのは説得力の根本としてかなり有力だ。
「で、だ。スリザリン自身はまず間違いなく蛇語を話すことができているとして……しかし、当時はスリザリン以外に蛇語を使う者はいなかった。
……スリザリン自身の子孫を除いては」
ザワッ!と談話室が騒がしくなる。つまり、今もスリザリンの子孫が『秘密の部屋』を開いた可能性があると言うことだし、これからも純血ではない者が襲われる可能性が高いと言うことでもある。
「……一応言っておくが、間違いなくスリザリンの子孫は現在一人しか存在していない。そいつが自分以外のスリザリンの血縁を殺してしまったからな。
しかもそいつは五十年近く前にホグワーツを卒業していて、それからはたった二度を除いてこの学校に近付いてもいない。校長先生が証言してくれるよ。
ちなみに、そいつは50年前にも一度『秘密の部屋』を開き、女子生徒を一人殺している。当時疑われたのは現在森番をやっているが、間違いなく森番は『秘密の部屋』を開けてはいない。怪物は居たが、ホグワーツの外から来た蜘蛛だ。蛇じゃない」
「どうして怪物が蛇だと言い切れるの?」
ハーマイオニーがいつもの癖か手を上げて質問した。ハリーさんはそんなハーマイオニーをちらと見て、また話し始める。
「推測が当たっていればの話だが、『秘密の部屋』に入れる者は皆間違いなく蛇語を話すことができる。ならば、『秘密の部屋』の恐怖……スリザリンの継承者にしか操れないと言うそれが、単なる魔法や道具であるとは考えにくい。スリザリンが己の継承者を見分けるのに使ったものが蛇語であるならば、その中にある恐怖とやらもまた蛇語で操ることができるものだろうと想像できる。……ここまではいいな?
では、具体的にどんなものが潜んでいるかと言えば……蛇語を使い、そして恐怖されるに相応しい怪物であることが最低条件だ。
さらに、50年前に殺された女子生徒から直接話を聞いたところ、その目に見つめられただけで死んだといい、当時その死体を見たことのある校長先生が言うには、その体には一切の傷が付けられていなかったと言う。
ちなみにその女子生徒は三階の女子トイレで死体が発見され、ついでに今もその場所に取り憑いていたりするが、あまり関係はないので割愛させてもらう。
……ここまで来れば色々と学んでいる者はその怪物の正体に気が付いたりもしているかもしれないが……恐らく、推測に推測を重ねた結果、『秘密の部屋』が実在するとした場合にその中に恐怖と呼ばれる怪物が居たら、その正体は、毒蛇の王と呼ばれ、蜘蛛の天敵であり、雄鶏の時を作る声に致命的なダメージを負い、目を合わせたら即座に死亡し、破壊不可能と言われる魔法物質をも壊すことのできる猛毒を持つ『バジリスク』である可能性が非常に高い。
……とまあ、こんな感じだな。もうちょっと知ってはいるが蛇足になるし、こんなものだろ」
ハリーさんが話し終えた途端に、ざわざわと話し声が溢れ返る。
しかし、そんな中でハーマイオニーがまた手を上げた。
「どうすればその怪物を打倒する、あるいは殺害されずに済みますか?」
ハーマイオニーの質問が響いた途端、また談話室は静寂に包まれる。ハリーさんはまた面倒臭そうに答えた。
「まずは会わないことだな。これが一番。次に目を合わせる事での即死対策としてなんらかの障壁等で直接相手の目を見ないようにすること。あの猫は水に映った姿を見たから石になるだけで済んだんだろうな。直接でなければ石になるか、あるいは生身のまま臨死体験で済む。毒については……不死鳥の涙でも使え。あるならな。
肝心の打倒方法だが、相手は生物だから首をはねるなりねじ切るなり頭潰すなりすれば死ぬぞ。後は雄鶏の鳴き声で撤退させられるからとりあえず一羽連れてくか、あるいは録音したやつでも流し続ければいいんじゃないか?」
……多分、ハリーさんの最後の言葉が無ければあんなことにはならなかったんだろうと……今ではそう思います。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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