ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
暗く冷たい絶命日パーティの会場から、明るく暖かなハロウィーンパーティの会場に移動した私は……ご飯があまり残っていない事に軽く絶望していた。
殆ど空になった大きな皿に、デザートらしき物の欠片が残っている。飲み物の瓶はまだ中身がたっぷり残っているけれど、かぼちゃジュースばかり飲んでいては身体によくないし太っちゃうから、昔よくやった水で空腹を紛らわせるのはやらないようにする。
それに、ハリーさんが私達の分を取っておいてくれているはず!
ハリーさんを探してみると、何故か凄く優雅にお茶を飲んでいた。どうやら満足するまで食べたらしく、ハリーさんの前のお皿は殆どが空っぽになっているのが見えた。
「……ああ、娘っ子か。とりあえずここに出すと片付けられるから寮に戻ってからな」
ぐぅ~……
……私が返事をする前に、私のお腹が大きく返事をした。
珍しく右目を開けて私を見たハリーさんが、どこからともなく三角形の白い何かを渡してくれた。
「中身は昆布とおかかとシャケだ。落ち着いて食え」
「これってなんなんですか?」
「おむすび、ライスボールだ。日本ではかなりポピュラーな料理で、殆どの日本人はおむすびを食べたことが一度はあると言われるな」
「はー……いただきます!」
とりあえず一つ食べてみる。僅かな塩気と柔らかさ、そしていつ作られたのかはわからないけれど暖かいご飯が美味しい。もう一口食べてみると、真ん中の辺りから黒くて細い帯のようなものが見えた。
「ハリーさん、この黒いのはなんですか?」
「昆布だな。海草の一種を甘辛く煮込んで作られたご飯の供だ。カプレーゼのトマトとチーズのように、ご飯と昆布を一緒に食べてみろ」
「はーい!」
カプレーゼが何かはわからなかったけれど、とりあえず昆布とご飯を一緒に食べる。すると私の口のなかに広がるのは、さっきまでは物足りないと感じていたご飯と昆布の塩気と旨味が織り成すハーモニー。あっという間に一つ目は無くなってしまい、私は二つ目のおむすびに手を伸ばす。
そしてまた一口食べてみると……今度は昆布とは違うものが中に入っていた。
「はむ……ふぁりぃふぁん、これふぁ……」
「口の中に物が入ったまま喋るな。あとそれはシャケだ。鮭を軽く塩漬けした後に火を入れてから骨を取った後の身を砕いた物だ。サンドイッチの具とパンのように、一緒に食べてみるといい」
「ふぁい」
またパクリと一口食べると、昆布の甘くありながら塩気もある味とは全く違う、ほんのりと甘く塩辛い中に魚類特有のさらさらした油の旨味が染み込んだご飯の味が口の中に弾ける。しっとりとしながらべたつかないようにか昆布のおむすびよりもほんの少しだけ固めのご飯とシャケの塩気がよく合っていて、これまた凄く美味しい。
そして三つ目……ハリーさんが言っていた内容からすると『おかか』と言うらしい物が入ったおむすびを取り、そして口に運んでいく。
「……娘っ子は本当に美味そうに物を食べるよなぁ……」
「はむ……んむ?」
「いや、なんでもない、冷めないうちに食べるがよかろ」
ハリーさんに言われた通りにおむすびを頬張る。何が使われてるのかわかったらいいんだけど……私、ずっとまともなものを食べてないから何が使われてるのかぜんぜんわからないや!とりあえず美味しいってことだけしか!
「よーしよくわかった、なにも言わなくていい美味いのはよーくわかった。とりあえずイギリスのどこかに隕石が落ちる可能性が急上昇」
「危ない!?」
ツッコミした瞬間に口の中に入っていたおむすびが消滅した。瞬間的に飲み込んだ覚えがあるような無いような……まあ、噴き出してはないから無駄になってない、ならもういいよね。
ご飯を無駄にするとか本気で許しません。本気で。
さて、それはそれとして……。
「隕石って被害凄いことになるでしょう!?」
「半径1200キロくらいが文字通りに吹き飛んで大量の砂塵が大気中に降り注いで太陽の光が射し込まずにかなり早めに氷河期に突入、さらに隕石が衝突した衝撃で地球の公転軌道がずれて地球の磁気によるバリアが乱れて太陽からの有害な放射線だけが大気中の砂塵を貫いて地上に放射されて地上に生息する殆どの生物が死滅し、最悪地球は公転速度を保てずに太陽に呑まれて燃え尽きる。多分俺は平気だが」
「なに冷静に凄まじい被害予告を出してるんですか!? それとそれで平気とか人間やめすぎですからね!?」
「おいおい、これは予想ですらないただの想像みたいなものだぞ? これぞ正に被害妄想」
「誰が上手いこと言えと言いましたか!」
「俺の魂が真っ赤に燃える、娘っ子をからかえと轟き叫ぶ」
「そんな声無視してください!」
「まあ安心しろ、多分隕石なんて降らないし、降ったとしても家一軒が中身ごと消滅する程度の被害で済むさ」
「それも駄目ですよね!? 被害者出ちゃいますよね!?」
「隕石降らないのが駄目だと言うのか。娘っ子も随分過激に……」
「なってませんから!」
「まあまあ落ち着け、はい緑茶」
ハリーさんから渡された緑色に透き通ったお茶を飲む。なんだか凄くおむすびに合う味がして、私はまたおむすびを食べる。
……うん、美味しい。
「エリー……ご飯につられて見ず知らずの人についていったりしたら駄目よ?」
「はむ?」
「……この子いつか誘拐されるんじゃないかしら」
「そこらへんは俺もちょっと心配。娘っ子は純粋だからなぁ……」
「誘拐犯筆頭はハリーなのだけど?」
「今年の夏休み開始三日で誘拐したな、そう言えば」
「してたの!?」
「ぅむ……ハーみゃイオニー、食事中はしじゅかに……」
「エリー!? ハリーへのツッコミは……」
「ご飯優しぇん……んく。命には代えられないからね」
「……食に関してはエリーの常識がぶっ飛ぶのね……理解したわ」
「それ以外はエリーは一般的な常識を保ってるのにな。ハリーさんと違って」
「ロンもロンでハリーの事をハリーさんって呼ぶのに随分慣れてきたみたいじゃない?」
ハーマイオニーがロンに向かって何か言っているけれど、今はご飯が大事。ツッコミよりもご飯。
それに、去年はトロールが来たせいでちゃんとハロウィーンを楽しめなかったし、今回はちゃんと楽しみたい。そう思っても罰は当たらない筈だ。
もし当たったら……ちょっと世界を呪っちゃうかもね。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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