ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
ニックの絶命日パーティーに行く途中にハリーさんに会った。なんでも絶命日プレゼントをニックにあげたらしいけれど、何をあげたのかは教えてくれなかった。
けれど、絶命日パーティーに参加するなら多分すぐわかるだろうと言っていたので楽しみにしておくことにする。勿論、ハリーさんが取っておいてくれると言ったハロウィーンの料理も楽しみにしている。むしろ本命はそっちだ。
ハロウィーンパーティーの行われている大広間の前を抜けて、ニックの絶命日パーティー会場である地下室に降りていく。階段を一段降りる度に周りの温度がどんどん下がっていくような感覚があるし、廊下を照らしている蝋燭は黒くて細く、不気味な青い炎を灯している。
更に進めば黒板を爪で引っ掻くような嫌な音が聞こえてきて背筋にぞわぞわとしたものが走る。こんなものを音楽と呼ぶなんて、ゴーストの感覚は本当に理解できない。
それでも進み続けていくと、やがてニックの絶命日パーティーの会場だろう地下牢の戸口の前に黒いビロードの幕が垂らされていた。
……ニックだったら戸口の前に立っていて客人達を迎え入れるくらいの事はしそうだと思っていたのだけれど、どうやら私の予想は外れてしまったらしい。けれどまるで冷凍庫に入り込んでしまったかのような冷気が私の周りを流れていて、吐いた息があっという間に真っ白になる。
「ゥゥィヤッフォォォイ!!」
……そんな風に周りを見回しながら進んでいくと、なにかが凄い速度で飛んでいった。一瞬見えたそれはニックの首から上だけだったような気がするけれど……ニックの首は一センチにも届かない皮で繋がっていたはず。
「……ハーマイオニー。今のって……」
「……ニックだったわね。と言うか、動体視力だったら私よりもエリーの方が断然良いでしょう?」
「そうかもしれないけど、これについては間違いなのかもしれないって思ったし。最後に『フォイ』って言ってたし」
「僕も一瞬マルフォイかと思ったよ。ニックがあんな嬉しそうな声を上げながら首だけ飛ばしてるなんて思わないだろ?」
私達三人の意見は完全に合致した。今飛んでいったのは確かにニックの首で、しかも今だかつて無いほど嬉しそうな声を上げていた。と言うかマルフォイも首だけ飛ばすことは無いと思うな私。
……と、ここでふと思い出した。ハリーさんが渡したニックへのプレゼントのことと、ニックが私をこうして絶命日パーティーに招待しようとした理由の一部の事を。
つまり……ニックはついに念願の首無し狩クラブへの入会要件を満たすことができる状態になったのだと言うことを理解した。
でも、素直にめでたいことだと祝福する前にこれだけは聞いておかないと。私はハーマイオニーの方に首を向けて、聞いてみた。
「ゴーストの首を綺麗に切断できるのって、魔法使いや魔女としては普通のこと?」
「そんなわけ無いでしょ。もしそうだとしたら、ニックはとっくにほとんど首無しニックからただの首無しニックになっていたわよ」
「それじゃあハリーさんのプレゼントってやっぱり……」
その場の三人の意見が一致した。これで私が絶命日パーティーに出てパトリック卿とか言う人に色々言う必要は無くなったわけだけれど……まあ、出るって言ったんだからとりあえず一度はしっかり顔を出そうと思う。必要なことだしね。礼儀として。
キョロキョロと辺りを見回しながら地下牢を歩く。さっきからニックの頭がスニッチすらおいてけぼりにするほどの速度で飛び回っているが、あまりに速いので話しかけることもできなければ本人の身体を見つけることもできない。
ただ一つ言えることは、ニックが首を投げるなりなんなりして動かす速度は、よくマルフォイに向かってどこからともなく飛んでくるクヌート銅貨よりもずっと遅いと言うことだけ。それは間違いないことだ。
「……ねえ、エリー? ニックはああして飛び回って私達の話を聞いてないみたいだし……もう戻らない?」
「駄目だよハーマイオニー!そんなことをしたら『新入りの癖に先輩に挨拶も無しとは随分チョーシくれてやがんなぁ? ア?』とかそんな感じに因縁つけられて相手の気が済むまで服で隠れて外側から目立たないお腹や背中を殴られたり蹴り転がされたりするんだよ!?」
「しませんぞ!?」
「どこの常識よそれ!? 思いっきりヤンキーとかマフィアとかそっち系統のヤバい人達じゃないの!?」
「ホグワーツには寮の中以外にそんな縄張りとかは無いはずだよ!?」
私の言葉にハッフルパフの寮のゴーストである太った修道士とハーマイオニーとロンがツッコミを入れた。だけど、私にとってはいつもの事なんだけどなぁ……。
……そう言えば、ここ一年くらいはそんなことも無かったっけ。一度戻ったダーズリー家では外に出なかったから苛められる相手も少なかったし、ハリーさんがすぐに来てくれたし……本当に救われている。
「いや、ですからホグワーツでそのような理不尽な暴力が振るわれることなどあり得ぬのです。ダンブルドアがそれを許しませんし、我々自身もそのようなことをすることはありません」
「そうよ、もしあったとしてもそれをした途端になんらかの罰則が相手に課せられるわ」
「そうだよ、だから安心して……そうだ、ニックにエリーが来てたことと挨拶しようとしていたけどできなかったことを伝えておいて貰えない?」
「もちろん。さあ、もう上がった方がいい。身体が冷えきってしまいますからな」
ロンが太った修道士にニックへの伝言を頼み、ハーマイオニーに連れられて私は地下牢から出て降りてきたばかりの階段を上がる。よくわからないけれど、とりあえずもう帰って大丈夫そうだ。
「……エリー。あなたは時々常識から思いっきり外れるわね」
「常識って言うのはその人が今まで経験してきた事の集大成だからね。個人で違っていて当然だよ。ハリーさんのはちょっと外れすぎだと思うけど」
「極一部においてあなたも同じくらい常識外れなの」
ちょっとショック。いくらなんでもハリーさんほど外れているとは思いたくない。一部において私が人間らしくないのは自覚があるから別にいいけれど、それの原因はダーズリー家で私が人間扱いされていなかった事が原因だから私のせいじゃない……と、思いたい。
実際のところ本当は私の性格が元々人間らしくないのかもしれないけれど、きっとダーズリー一家の方が人間らしくない内面をしているはずだ。
……じゃなかったら、私がこんな小さくて常に栄養失調だったりしないはずだしね。
次回作は……?
-
鬼滅の刃
-
鋼の錬金術師
-
金色のガッシュ
-
BLEACHの続き
-
他の止まってるやつの続き