ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 ハリーさんから貰った箒に乗って、クィディッチ場で練習する毎日。雨の日も風の日もあるけれど、そんなのは関係無いとばかりにキャプテンであるウッドは練習を続けた。

 雨にうたれれば着ているものはぐっしょりと濡れ、強風に煽られて何度も箒から投げ出されそうになる。身体が小さい私は他のチームメイトなら少し強いと思う程度の風でも何度か吹き飛びそうになって、必死に箒にしがみついた。

 そんな風に色々な邪魔が入っても、どうやら私は去年のシーカーよりずっと優秀らしい。何度もスニッチを捕まえることができたし、スニッチがどこに居てもすぐに見つけることができた。

 ……ダドリー達に苛められないように視界を広く保つ方法を身に付けたり、バーノンおじさんやペチュニアおばさんの顔色を伺うために細かい状況の変化にまで気を回す事を覚えたのがこんな風に役に立つなんて、全然思ってなかった。

 

 スニッチの金色を見付ければネビュラスはまるで矢のようにスニッチに近付いてそれを掴み取らせる。ブラッジャーがいくら追い掛けてこようとネビュラスは平然と振り切り、私を自由な空に運んでくれる。

 やっぱり空を飛ぶのは楽しい。嫌なことを全て忘れ、誰にも縛られることなく自由でいられる。この速さは、ハリーさんを除けば私だけのもの。こうして楽しむために、私はもうすぐある初めての試合も頑張ろうと思う。

 

 ……そう、例え私がニックの絶命日パーティに参加するためにハロウィーンのパーティに参加できなくても、ゴーストのパーティでまともな人間が食べられるようなものが出てくるわけがない(腐りきった鮭や、もしかしたらケーキと呼ばれていたかもしれない炭の塊、大量に蛆がわいたハギスと言う肉料理に、マリモかと聞きたくなるくらいに緑色の黴が生えたチーズ等が出る)とハリーさんから聞いたとしても、それでも私は頑張ろうと思う。

 ハリーさんがまたいつかみたいにハロウィーンの食べ物を持ってきてくれると言ってくれたし……それに、黴が生えてようが蛆がわいていようが食べれない訳じゃないしね!

 

「食べられないわよそんなもの!?」

「え? 昔食べたけどそれなりに大丈夫だったよ? ちょっとお腹壊しちゃったけど」

「なんでそんなの食べたの!?」

「お腹が空いて死にそうだったから」

 

 ……どうしてか涙を浮かべたハーマイオニーと、なんだか誰かに怒りを向けているらしいロンに抱き締められた。いったい二人に何があったのかはわからないけれど、とりあえず今の私は幸せだと思う。

 

「……エリー。二年生が終わったら、僕の家に遊びに来いよ。と言うか学校が始まるまで泊まっていけよ。歓迎するからさ」

「私の家でもいいわよ」

「……いいの?」

 

 ロンとハーマイオニーはにっこりと私に笑顔を向けて頷いた。友達の家に遊びに行くなんて……ハリーさんを除けば初めてかもしれない。

 ……でもハリーさんはなんだか友達と言う気がしない……友達より近いけど親友って言う訳じゃなくて……どうなんだろう?

 まあ、今はハリーさんの事じゃなくて二年生が終わってからの事を考える。ハリーさん曰く、今年私がダーズリー一家から居なくなったことは特に問題にはなっていないらしいので、普通にあの家に帰ることはできそうだ。

 でも、一度戻ってみて確認できたけれどあの人達は私のことが大嫌いらしい。バーノンおじさんが三日のうちに私にしてくれたことと言えば、家に入れてくれただけ。お金は無いから結局残り物を自分で食べられるように調理した物を食べ、荷物は自分で一度片付け……三日の間、私はあの家で完全に『いないもの』として扱われた。これまでのように暴力を振るわれたり、私の部屋から勝手に色々な物を捨てられたりしなかっただけよかったのかもしれないけれど……あまり長くあの家に居たくはない。

 だから、そんな家から連れ出してくれたハリーさんには本当に感謝している。今年は多分ロンかハーマイオニーのどっちかの家に厄介になるだろうけど……ハリーさんなら多分その次の年になったらホグワーツ行きの急行の中でまたいつものように会えるだろう。

 

 そう言うわけで、私はいつも通りの毎日を過ごす。ハリーさんの行動にツッコミを入れ、ロンやハーマイオニーの常識を立て直し、色々な人達からハリーさん被害のことやそれ以外の人間関係や人生相談などを空いた時間に受け付け、クィディッチの練習時間には空を飛び、植物を弄ったり杖を振って呪文を唱えたり、ハリーさんが某闇の魔術に対する防衛術の先生をアックスボンバーで縦に六回転させるのを眺めたり、魔法薬学でスネイプ先生にかなりしっかりと薬作りを教えてもらったり、ご飯を食べたり眠ったりして。

 所々と言うか、結構な割合でおかしい事があるんだけれど……それはそれでまた楽しい。ただ冗談を言い合える相手が居るって言うだけで、世界はこんなにも鮮やかになる。

 

 だから私は何度でも言おう。空を見上げて高らかに、私の心からの思いを正直に。

 

「私は今、幸せだよ」

 

 誰に聞かせるわけでもなく、私は晴れ渡った青空に向けて呟いた。

 

「あ、娘っ子見っけ。ちょっと暇潰しに厨房借りてクッキー作ってみたんだか食べるか?」

「わーい!頂きます!」

 

 箒に跨がった私の隣を並走しているハリーさんからクッキーを貰ってかじる。やや固めだけれど衝撃に弱いらしいそのクッキーは歯で砕かれた途端に口の中で崩れ始め、やがて雪のように消えていく。

 味自体はかなり薄味で、ほんのりとした甘味が口の中に残る程度。けれど、味よりも長く残る香りがそれに不満を抱かせない。ハリーさんが自分の家で作っているらしい紅茶の香りに、頬が緩むのを抑えることができそうにない。

 うん、やっぱり凄く幸せだ。ダーズリー家で暮らしていた時からは考えられないほど幸せ。

 

「そんなわけでハリーさん、私頑張ってあのお店で働きますから結婚してください」

「フリスクにフリーザにフリードにフリークにフリエルが居るから店員は今のところ間に合っている」

「凄くフリフリですね。どんな人達なんですか?」

「蛇みたいな女と蛇みたいな男の娘と蜥蜴みたいな男とキメラみたいな男と男か女かわからない不定形物質だ」

「人外が一人居るんですけど!?」

「フリスクとフリーザは魔眼持ちで視線を合わせると最悪即座に死ぬか石になるぞ」

「前に言ってた『目を合わせたら死ぬ相手』ですよねそれ!? お客さん相手にそれは不味くないですか!?」

「フリードは体高百mを越える銀色の翼があって空を飛び、銀色のブレスを吐き出す蜥蜴だ」

「ドラゴン!それドラゴン!Not蜥蜴!Butドラゴン!」

「フリークはライオンの頭、山羊の身体、蛇の尾を持ってる気弱な奴だ」

「キメラみたいなって言うかキメラそのものなんですけど!?」

「フリエルはその時の気分で性別も顔も姿も変えてくるからなぁ……」

「気分で性別変えるって何者ですかそれ!? スライムかなにかですか!?」

「スライムだ」

「スライムだった!? 多分それみんな危険動物ですから!一般家庭じゃ飼えませんから!」

「教育はしっかりしてある。去年も大丈夫だったしな」

「手遅れ!?」

 

 こんな風にハリーさんにツッコミを続け、クッキーを貰ってハリーさんと別れた。

 ……あ、結局プロポーズに対する返事を貰ってないや。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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