ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
今年もクィディッチの選手選抜がある。去年のシーカーは本当に役立たずだったようで、一年でお役御免になったようだ。
その新しい選手を決めるための選抜に……なぜか、私は参加していた。しかも一人で。
私の手にはハリーさんのクリスマスプレゼントである箒引換券と取り換えたばかりの新品の箒……『ネビュラス』がある。ハリーさん曰く、シノムラ工房と言う新興の箒製作社で作られたばかりの箒らしいけれど……なんでもファイアボルトをちょっと上回っている程度の性能があるらしい。
でも、ロンに聞いてみたらファイアボルトなんて言う箒は無いらしいので、ハリーさんにからかわれたんだと思う。
しかし、試し乗りではこの箒は抜群の性能を叩き出した。今まで乗っていた学園の箒なんて目じゃないほどの旋回能力。最高速度280kmにして完全停止状態から五秒で最高速まで行ける加速性能。太すぎず、細すぎないため握りやすいグリップ。自分の理想のコースを自在に飛び回ることができるこの箒は、ホグワーツ内に『シノムラ工房』の名をあっという間に広めてしまった。
けれどシノムラ工房は完全受注生産で、しかも一本の箒を手作業で作っていくため時間がかかる。ハリーさんがクリスマスに直接渡さなかったのも、一年生が箒を学校に持ち込めないと言う理由の他に時間が足りなかったと言う理由もあったそうだ。
手作業で作る箒と言えば『銀の矢』と言う箒が有名だったそうだが、なんでもそれを作っていた人が死喰い人に殺されてしまったために生産されなくなってしまったらしい。けれど、そう言った箒職人の熟練の技が『ニンバス2000』や『ニンバス2001』と言った工業製品に負けないことを証明したくなった数人が、一本一本の箒を丹誠尽くして作った結果に生まれたのが私の『ネビュラス』らしい。
ちなみに、本当は箒も杖と同じように個性があって、個性の強い箒は乗りこなすのが難しい代わりに乗りこなせれば工業製品の箒を遥かに越えるスペックを発揮するらしい。工業製品の箒は個性をできるだけ殺すことによってできるだけ均一化した能力を出させているそうだが、実際には個性を殺しすぎて箒本来の力はあまり出せないとか。
私の箒はハリーさんがシノムラ工房にお邪魔して私のために暇潰しついでに作っていたらしい。仕事の前に制服を作ると言って色々私の身体の尺を測っていたけれど、私の体格に合った箒を作るのにも必要だったそうだ。……うん、私小さいもんね。わかってたよ。
……とまあそんなこんなで私はクィディッチのグリフィンドール代表選手選抜に参加し……見事にシーカーの座を獲得することに成功した。
ハリーさんも誘ったのだけど、面倒だと言って参加しなかった。私がネビュラスで初飛行した時にはハリーさんも自分の箒を使って並走(走ってないけど)してくれたので箒は持っている筈だし、私が全力で飛んでもハリーさんを振り切れなかったからハリーさんも飛ぶのが上手い上に飛び慣れていると思ったのだけど……どうやら参加予定は一切無いようだ。
なお、ハリーさんの箒は私のネビュラスとは真逆の純白で、金色の細い線でファイヤーパターンが入っていた。あれはシノムラ工房で作られた箒の一作目で、名前を『ホワイトフォーミュラ』と言うらしい。
ネビュラスシリーズ最初にして最高傑作であるそれは、ハリーさん自身が自分のためだけに作り上げた物なんだそうだ。
最高速度は300km。完全停止状態から二秒で最高速度まで加速し、最高速度のまま180度反転を可能とするほどの機動性を持つ。
……でも、いくら箒の性能がよかったとしても、乗っている人の方はそんな無茶な機動に耐えられるわけがない。耐えられるのはハリーさんだけ。だからこそのハリーさん専用箒だと言うことらしい。
ハリーさんなら私よりもシーカーに向いていると思うんだけれど、ハリーさんはシーカーじゃなくてどんなポジションでも十分に活躍できると思う。
「俺がチェイサーやったら相手のキーパーが投げられたクアッフルに直撃して全身を粉砕骨折して死ぬぞ?」
「どんな威力で投げるつもりですか!?」
「ビーターやったら相手のチェイサーを含む選手達の身体にブラッジャーと同じくらいのサイズの穴が空いて死ぬぞ?」
「貫通!? 骨折程度で済ませる気が欠片も無い!? と言うか勝手に空いたみたいな言い方しないで下さいよハリーさんがやるんですよね!?」
「俺がキーパーやったら相手のチェイサーとキーパーだけじゃなく味方のチェイサーまでクアッフルで折れるぞ?」
「何を折るつもりですか!? 骨ですか!? 精神ですか!? 心でもへし折るんですか!?」
「一番安心なのはシーカーだな。最悪相手のシーカーが折れるだけで済む」
「折らないで下さい!」
「俺が折るんじゃない。相手が勝手に折れるんだ」
「結果は同じですからね!?」
「知らん。俺が普通にやってるのに勝手に折れられても困る。あれだ、チェスで何度も負けたからって俺のせいにされてもどうにもできないのと同じ感じだな」
「手加減できますよ!? 少しはしましょうよ手加減!?」
「真剣勝負で手を抜くのは悪いことだ、悪鬼羅刹のやることだってばっちゃが言ってなかった!」
「言ってないんじゃないですかぁぁぁぁぁっ!!」
ハリーさんはあっはっはと笑う。そんな笑われても私はどうにもできないのだけれど、とにかく私はハリーさんをクィディッチに誘うのは諦めた。
後にマルフォイがその事を聞いてよかったよかったと本気で安心していたけれど……ハリーさんは気分屋だからもしかしたら死なない程度に加減していつか出るかもしれないと言うことは言わないでおく。
ウッドは少し残念そうにしていたけど……いくらウッドの……キャプテンの言うことでも、ハリーさんに何かを強制させることはしたくない。クィディッチだったら相手が死んじゃうし、それ以前に意に沿わないことをやらせようとしたらいったいどれだけの被害が出るのかわかったものじゃない。
それと、マルフォイにも聞いてみたけれどファイアボルト何て言う箒はやっぱり存在していなかった。今一番の箒と言われているのはマルフォイ達が持っているニンバス2001で、マルフォイのお父さんがスリザリンのチーム全員に買い与えたのだとか。
ニンバス2001に跨がるスリザリン・チームは一糸乱れず飛行して、今年の優勝が更に難しくなった事を教えてくれた。
「でもやっぱりハリーさんが走るのより遅いですね」
「ハリーさんと比べるのが間違いだろう」
「だな」
どうやらこの件についてだけは、ロンとマルフォイの意見はしっかり合致するらしい。あと、ハリーさんのことを普通にハリーさんと呼んでいた。慣れって怖いなぁ……。
…………あれ? そう言えば、ハリーさんの箒は完全に自分で作ったもので、それでシノムラ工房の一作目で、私の箒が最新作……。
つまり、ハリーさんは自分で箒を作った挙句に箒職人たちを集めて新しく会社まで設立したの?
……ハリーさんは一体どこを目指してるんでしょうか?
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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