ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
速度を合わせた状態でハリーさんに浮遊呪文その他で汽車の中に放り込まれた。その時の音が騒がしかったせいか色々なところから人が来て、マルフォイが来た瞬間にまたクヌート銅貨が残像だけを残して飛んでマルフォイが華麗に後方四回宙を見せ付ける。着地には失敗したけれど、何の構えも無しにあれは凄いなぁ……。
……それはそれとして。
「……流石はハリーさん……誰にも気付かれない内に汽車の中に乗り込んできてるし……」
「はっはっは、バイクから汽車に乗り移るくらいなら練習すれば大体の奴はできるよ」
「そんな練習する機会もなければ練習の成果を見せるべき時もそうありませんって」
「練習しとくか?」
「全力でお断り申し上げます」
「そいつは残念」
ハリーさんはいつもの通りの両目を閉じたままの笑顔を浮かべて言った。全然残念そうじゃないけれど、実際に残念だと思っているのかいないのかは不明。どうなんでしょう?
あともう一つ。
「なんで逆さまになって天井に胡座掻いて座ってるんですかハリーさん」
「仕方無いだろうが座る場所がなかったんだから。普通先客を無理矢理どかしてそこに座って平然としてたりはしないだろう?」
「なんででしょうか、正しいことを言われてる筈なのに、ハリーさんがそれを言っているって事実だけで凄く胡散臭く感じます」
その場に居るほとんどの人が私の言葉に頷いた。頷いていないのはハリーさんの学校での行動を直接見ていないロンの妹だけで、ロンとハーマイオニーは深々と頷いている。
ハリーさんはそれを見て軽く苦笑して、それからなんでそんな風になっているのかわかっていないロンの妹に視線を向けた。
「初めまして、赤毛の娘っ子。俺はハリー・オライムレイ。放置しておけば害の無い、眠たがりで普通な魔法使いの卵だよ」
「あ……えっと……ジニー・ウィーズリーです」
「はいよろしく」
ひらひらと手袋をつけたままの左手を振りつつ、ハリーさんは天井に逆さまの椅子を作って座ってしまう。そして去年と同じようにマントを布団の代わりにしてくるまって、目を閉じて眠り始めてしまった。
小さな小さな寝息が響く中、ロンはポツリと呟いた。
「……ハリー……さんって、つくづく人外だよなぁ……」
「何を今さら。ハリーが人外なのはよく知ってるでしょ。マルフォイを見なさいよ。去年より多く回ってたわよ」
「最後のところだけ聞くと忘年会の隠し芸大会で傘にボールを乗せて傘を回して上を転がす時の台詞みたいだね」
くすくすと笑い声を上げる私達を、ロンの妹……ジニーは目を白黒させて眺めている。
「……そうそう、そう言えばこうやってちゃんと話すのは初めてだったかな……初めまして、エリー・ポッターだよ。これからよろしく、ジニー」
「あの……はい、よろしくお願いします」
ジニーは私の手を握り返し、硬くはあるものの笑顔を浮かべる。なんだかこの一年くらいで人からの視線に随分と慣れてしまった私でもわかる程度にはジニーの視線を感じる。
……確かに私の背はまだまだ低い。同年代の中では相当小さい自覚はあるし、今年からの入学だろう一年生達を含めても身長が私より低い人なんて居るかどうか……って自分で思うほど。
『私が低いんじゃない、周りのみんなが高いんだ』と言い訳することすらおこがましいほどの差が……ね? 初めて私を『生き残った女の子』として見る人の目に驚愕と失望しか浮かばないくらいに…………ね?
……自虐はやめよう。キリがないし何も生まない。それと私の心が折れそうだ。いつまでも伸びない背は私のコンプレックスの一つでもあるし。
……胸の方も身長が大きくならないのと同じくらい大きくならない。もしも今胸と身長のどちらかを10センチ大きくしてくれるって言われたらどっちが欲しいかって言われたら間違いなく身長の方を選ぶだろうけど、それでもその身長に見合うくらいの胸もほしい。これでも女の子だしね。
「……そんなあなたに長身薬~。一粒飲む度に5ミリずつの成長をお約束します……」
「宣伝ですかハリーさん。あとその薬買いますいくらですか」
「ちょ、エリー!? なn」
ヂッ!とどこかで聞いたことがあるような気がする音が鳴り、ロンは泡を噴いて気絶した。ずるずると椅子から崩れるように滑り落ちるが、私は見た。上から何かが降ってきてロンの顎先を掠めた直後に上に巻き戻るように消えていったのを。
上にはハリーさんしか居ないけれど、ハリーさんは眠り続けている。絶対ハリーさんの仕業だろうけど……証拠なんてどこにも残っていない。証拠がなければちゃんとした刑を受けさせることなんてできないのが法律って言うものだ。
ハリーさんは今までにも色々とバレたら不味いことを繰り返しているらしいけど……それらもバレてないから犯罪として扱われてないんだとか。
……うん、反則と言うか、駄目だって言うことはわかってる。許されないことだって言うのもわかってる。
でも……ハリーさんのご飯は美味しいから……っ!
「エリー、貴女……お菓子につられて見知らぬ人についていったら駄目よ?」
「ハーマイオニーは私のことを子供扱いしすぎだと思うの」
「適正な扱いだと思っているわ。……はい、かぼちゃジュース」
「わーいありがとうハーマイオニー!」
「はいはい。…………やっぱり適正じゃないの」
ハーマイオニーが何か言っているけれど気にしない。……やっぱり魔法界の料理は美味しい。ハリーさんの作った料理ほどじゃないし、ホグワーツで日常的に出てくる料理ほど美味しい訳じゃない。
ハリーさんが言うにはホグワーツの料理は屋敷しもべ妖精って言うらしい彼等が作っているそうだけれど、彼等の作る料理は本当に絶品だと思う。
イギリスの料理は大雑把で雑で『食べられればいい』っていう料理だとハリーさんは言っていた。そのせいか調理法も雑で、しっかりとした技術を使ってちゃんと作ってやればイギリス料理も美味しくできると。
そう言って作られたハリーさんの料理は凄く美味しくて……あの嘔吐ミールと呼ばれることもあるオートミールすらゆで加減と味付けであんなに美味しくしてくれて……。
……やっぱり結婚するなら料理の上手な人だよね?
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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