ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
「ハリーさん!なんでそんなことを書いたんですか!?」
「なんとかなるから。とりあえずカート寄越しな」
ハリーさんが手紙に書いた内容を知ってからハリーさんに色々言ってみたが、ハリーさんは全く気にせず私の荷物を全部どこかに消していく。多分あの袋にしまっているんだろうけど、それより今はこれからどうやってホグワーツに行くかを考えるのが一番重要だ。
そもそも私達はホグワーツがどこにあるのかは知らない。イギリスにあることは間違いないが、イギリスのどの辺りにあるのかは魔法使いであろうとも正確に知っているものはあまりにも少ないのが実際のところだ……と、ハーマイオニーが教えてくれた。
しかしハリーさんはなんでもない事のように行くと言う。
……もしかして本当に行けるのかもしれないけれど、あんまり無茶苦茶な方法だったりマグルにばれてしまうような方法だったりしたら絶対に止めなければならないし……。
「ほれ、行くぞ娘っ子」
「へ? はわわぁっ!?」
ひょいっとハリーさんの肩に抱え上げられてしまった私は、また9番線と10番線のある路線に来て……今度は普通に抜けることができた。
柵の向こう側には見送りをしていたらしい人達がたくさん居て、ホグワーツ急行がいなくなった今でもまだ残っている。
「じゃあ行くぞ」
「……どこに?」
「どこって……ホグワーツだよ」
そう言った直後にハリーさんはぴょんと線路に飛び降り、どこからともなく取り出したかなり大型のバイクのサイドカーに私を放り込んだ。
サイドカーの中は魔法が掛けられているのかかなり広く、私が足を伸ばすこともできた。ちょっと中を覗いてみると入ってすぐのところに靴箱があって……なんと言うか、三人くらいなら普通に中で暮らせちゃうんじゃないかって言うくらいの空間が広がっている。
「……あの、ハリーさん? このバイクは……」
「自作だ。いいからさっさと中に入ってろ。頭を出す時にはヘルメットとゴーグルを忘れるなよ」
「あ……はい」
「…………あと、確かその中には色々と危険物が入っていた筈だから、あんま奥の方には行くなよ。奥の方には『未来永劫エクスカリバーの歌が頭の中でピッチや音量が上がったり下がったりしながら聞こえ続けるようになる呪い』とか『語尾が~~だフォイ!になる呪い』とか『カラーシオ』とかがあった筈だから」
「なんですかその凶悪な罠と意味のわからない罠とどういう効果か想像もできない罠は」
「持久力のある呪いと入った相手を特定する呪いと……全身にハバネロやら山葵やら唐辛子やら辛子やら山椒やらと言った辛いものを濃縮した液体を塗りつけられる痛みを与える呪いだな」
「ハリーさん外道!?」
「舌噛むぞ」
「なn」
ヴォンッ!とエンジンがかかり、私はがぢんっ!と舌を噛んだ。身体が後ろに押し付けられ、発進直後から凄まじい勢いで景色が後ろに飛んでいく。ゴーグルをつけていなかったら間違いなく目を開けてもいられなかっただろうと思える中で、ハリーさんはなんでもないように更にアクセルを噴かした。
「Gとか風とかがきつかったら中入ってな。あと、中は揺れないからってずっと座りっぱなしだと深部静脈血栓症で死ぬかもしれないから、ちょっとは運動しとけ」
「はい!でも大丈夫です!」
ごうごうと凄まじい音を立てて風が顔に叩き付けられるが、ゴーグルのお陰なのかヘルメットのお陰なのか、あるいはこのバイクのサイドカーのお陰なのか私の呼吸は苦しくもなんともない。舌は少し痛いけど。
……と言うか速い。このバイクは明らかに普通の……マグルがレースに使っているような物よりもずっと速度が出ているような気がする。
……私はバイクのレースなんてテレビでちらっとくらいしか見たことはないけれどね。私がテレビを見ているとおじさんもおばさんも無理矢理にでも仕事を作って与えてくるし、ダドリーは私を突き飛ばして自分の見たい番組に換えてしまうから。
更に言ってしまえば、ダーズリー一家が私をレース場なんて言うところに連れていってくれる筈がない。私の世界は……実は結構狭いのだ。
けれど、こうしてハリーさんに振り回されていると世界の広さを知ることができる。どこまでも広い世界の中に、私の手を引いて連れ出してくれる。
だから、私はハリーさんのことが嫌いになれない。あれだけからかわれて、あれだけ振り回されて、あれだけ驚かされても……ハリーさんのやることにはある一定の線があって、それを越えてくるようなことはしないってわかっているから。
今回の休みだって、誰より早くダーズリー一家から私を連れ出してくれた。ダーズリー一家ではやっぱり私は異物であって、私に与えられるものは仕事と罵倒とほんの僅かな食事だけだったけど、ハリーさんがくれたあの保存食で生きていくことができた。
……だからもう本当に……
「ハリーさん、結婚しません?」
「しません。……ほら、ホグワーツ急行が見えてきたぞ。乗り移るから準備しろ」
「はい。…………はい?」
……今、『乗り移る』とか言う言葉が聞こえたような気が……。
ちらり、と下を見てみる。凄い勢いで地面が後ろに消えていくのが見える。
視線を上げて前を見てみる。ホグワーツ行き特急列車がこのバイクよりも僅かに遅い程度の速度で進んでいるのが見えた。……あ、ロン達だ。ハーマイオニーも居る。……あの赤毛の女の子はどこかで見た事があるような…………ああ、ロンの妹だっけ? 名前は知らないけど。
そしてハリーさんに視線を戻す。なんでもないような顔で頷かれてしまった。
「む……無理です」
「大丈夫大丈夫、俺なんて昔ジェット機の翼から戦闘機の翼に跳び移った───」
「ハリーさん基準で言われてもそんなのハリーさん以外にできる人なんて───」
「───奴を見たことがある」
「いるの!? ハリーさん以外にそんな無茶苦茶するような人が!?」
「ああ、居るぞ。すぐ近くで見てたからよく覚えてる」
「……はぁ……そんな人が居るんですね…………」
「……ちなみに俺はその戦闘機を空気を踏んで走って追いかけて捕まえたぞ」
「もっと酷いのがここにいた!? 知ってたけど!」
うん、ハリーさんに比べればその人は大したこと無いですね。空を飛べないからそんな風に飛行機から飛行機に乗り移って……
「追い付いてからはあっちも空を飛び回って空中戦になってなぁ……」
「飛べた!?」
ああもうわけがわからないよ……もしかして魔法使いの常識だとみんなこんな感じで軽々しく空を飛んだりするのかなぁ……?
私はこちらに気付いてかぼちゃジュースを窓に吹き出したロンに向かって話し掛けてみる事にした。丁度窓も開いたみたいだしね。
「ローン!魔法使いって生身で空を飛べるのー!?」
「飛べる人も居るけど大体箒を使うかなー!って言うか何があってそんなことになってるんだい!?」
「かくかくしかじかでー!」
「わからないよそれじゃあー!」
汽車とバイクの音の中で、私とロンは怒鳴るように話し続けた。……確かにこれなら乗り移った方がよかったかも……。
なお、使われているバイクはかつて何十という船を落とし、城壁をぶち抜き、棒髭子爵を跳ねたバギブソンゴウラムですwww
今回も数人……ナンデモナイヨ!フォイナラ跳ネテモ大丈夫ダヨ!
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き