ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 学校に行く準備を終えて、私はハリーさんと一緒にキングズ・クロス駅に行く。ハリーさんは何故かどこにも荷物を持っていないように見えたけれど、ハリーさん曰く『去年のうちに学校で色々やっといた』らしく、ポケットから小さな巾着袋を取り出して見せてくれた。中には色々……本当に色々なものが詰まっていて驚いたけれど、どうやらこれはハリーさんじゃなくてもできる技のようで普通に呪文学の教科書(ただしかなり高学年用)に載っていた物のはずだ。

 ……ハリーさんは去年の間にこんなものを平然と作ってしまうなんて……本当にすごいことだと思う。

 

「ちなみにそれ少し前まで人間の死体が入ってたやつだからあまり覗き込んだり臭いを嗅いだり舐めたりしない方がいいぞ」

「ぶふぅっ!? げほっ!げほっごほげほ、ぅぇ……っかふ、こふ……」

「冗談だ」

 

 咳き込みながらハリーさんを睨み付けるけれど、ハリーさんはどこ吹く風と受け流す。

 

「入ってたのは茄子だよ、茄子」

「……茄子?」

「キレ茄子とか言う茄子でな。ほっとくと勝手にキレるし構ったら構ったでキレるし話しかけるとキレるしでしかも身がなく美味くもないって言う百害あって一利もないと言われる茄子だ。一応食えば腹だけは膨れるが、不味いわ栄養は少ないわ寄生虫が居ることがあるわ五月蝿いわ調理が面倒だわでなぁ……」

「なんでそんなもの入れてたんですか……」

「通るのに邪魔だったから一回入れてすぐ捨てた」

「そんな理由!?」

「その程度の理由だ。……ほれ、空いたし行くとしよう」

 

 ハリーさんに言われて私は9番線と10番線の間にある柵に向かって歩いていく。あまり勢いをつけすぎると向こう側に居る誰かにぶつかりそうになった時に危ないのでゆっくりと。何でもないかのように普通に進んで行き、そして……ガヅッ!と鈍い音を立ててカートが柵にぶつかった。

 

「…………え?」

 

 力を込めてみるけれど、何故か柵は抜けられない。ぐいぐいと押してみても一回引いてやり直してみても、その柵はびくともせずそこに立ち塞がっている。

 

「……ああ、なるほど、あいつはまだ納得してなかった……と」

 

 いつの間にかハリーさんが私の隣に立っていて、ぺたぺたとその柵に触れている。なんでか凄く落ち着いているけれど……ハリーさんならこんな状況でもなんとかできるにちがいない。

 ハリーさんが壁を触っている姿を見ていると、理由も無いのにそんな風に思えてくる。実際にはハリーさんにだってできないことはあるんだろうけど……なんとなく、このくらいの事ならなんとかできそうだ。

 

「……よし、時間はまだあるし……ふくろう便をホグワーツに送ろうか。これで遅れたとしても大丈夫だ」

「はい!?」

「ほら、紙とペン貸してあげるから書いて書いて。ふくろうは娘っ子の白いの使わせてもらうよ」

 

 ぽいっと渡されたのはマグル達がよく使う安物の紙とボールペン。ハリーさんもこう言うのを使うんだとちょっとびっくりしたけれど、別に使っていたからってどうと言うことはないんだよね。

 だけど、乗れなかったらって……ハリーさんでもどうにもできないってこと!?

 

「ハリーさん……なんとかならないんですか……?」

「俺一人なら問題ないだろうが娘っ子が居ると手間がかかるから却下。こっちの方が楽だしな」

「……私の……せい?」

「俺一人なら力任せに殴って破ればいいけど誰かと一緒に通るとなるとちゃんとトンネル的に穴を開けなくちゃいけないから面倒って話だ。山を抉り飛ばしてガタガタの道を行くのが俺で、ちゃんとしたトンネルを作る必要があるのが俺以外の奴。一番楽なのは駅ごと消し飛ばす事なんだが、それをやるとホグワーツ特急もこの駅も駅に居る人間も人間以外もまとめて消し飛ぶから最終手段だな」

「最終手段としてでも使う可能性があるって言うのは不味くないですか!? と言うか恐ろしいことを言わないで下さいよ!」

「騒がしいぞ娘っ子。静かにしろよ。防音してなかったら割と大変なことになってたぞ?」

 

 ……大人しく椅子に座っておく。周りには確かに人がたくさん居るし、ハリーさんが何かしていてくれたお陰でどうともなっていないけれどなにもしていなかったら確かに騒がしくて迷惑になっていただろうってくらいには声を荒げていた。

 ここはまだホグワーツではない。ハリーさんの事を誰もが知っている場所ではない。ホグワーツだったら『またハリーさんか』で済むことでも、周りに居るのが何も知らないマグルばかりではそんな風に納得してはもらえない。私はそれをよく知っている。

 だから私はここでは黙って手紙を書く。羽ペンも羊皮紙も使わないで書くのは久し振りだと言うこともあってなんだか変な感覚だけれど、それでもマグルであるダーズリー達と一緒に暮らしていた事もあるので普通に書く事ができた。

 それを確認したハリーさんは内容を読んで最後に何かを書き足し、それからどこに持っていたのか封筒にその手紙を入れてヘドウィグに持たせて空に放つ。

 

「届けたらそのままふくろう小屋に行ってくれていいぞ。こっちはこっちでなんとかなるだろうからな」

 

 ヘドウィグはゆっくりと鳴いて、微かな羽音と共に空高く舞い上がっていく。真っ白な翼が青い空に消えていき……見えなくなった。

 すぐに私とハリーさんはあの柵に向かう。やっぱり柵は越えられなかったけれど、あの手紙をヘドウィグが出していてくれれば大丈夫なはずだ。これ以上ここに居たら次から通る人達の邪魔になるかもしれないから、私達はそこから移動した。

 キングズ・クロス駅のすぐ近くで、ハリーさんのおすすめの店に入る。ご飯はしっかり食べてきたけれど簡単な軽食を食べられる店に入って、適当に時間を潰していく。

 そして結局どんどんと時間は過ぎて、時間ギリギリにもう一度入ろうとしている内に……ホグワーツ行きの急行列車が発進する時間になってしまった。

 

「あの……ハリーさん……?」

「……よし、どうやら封鎖は解かれたな」

 

 十一時を五分ほど過ぎてから話しかけてみると、ちょうど何かに気付いたらしいハリーさんが立ち上がった。ほとんどただ休憩していただけだったけれど、一応落ち着きはした。焦っても良いことはないものね。

 

「……ところで、さっきの手紙の最後になんて書いたんですか?」

「本当に遅れたら自力で何とかすると書いておいた」

 

 …………はい?

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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