ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
毎日お仕事。だけど今までと違うのは、これは私のための仕事だって言うことだ。
誰かに言われてやらされるのではなく、私が決めて私がやりたいからやる。そうやってできる仕事って言うのは気分がいい。
とは言っても、自分のやりたいことだけをやるのとは少し違う。やりたいことをやりながらもしっかりと仕事であると言う意識をもって、この店の雰囲気に合った適切な、けれど不便にはならないようなサービスを提供します!
「……ノリノリだねぇ、娘っ子」
「あはは……まあ、どうせやるんだったら楽しんでやれた方がいいじゃないですか」
「その点については同意するがね。……で、ロニー坊ややハー子からの手紙はまだ来ないのか?」
ハリーさんはどうやら私の心を折りたくて仕方ないらしい。せっかく忘れて楽しんでいたのに、何でもないみたいに思い出させてきた。外道、流石ハリーさん外道。
「……まあ、原因はわかりきってるけどな」
「そうなんですか!?」
「俺は耳がいいからな。誰が何をやってるせいで娘っ子に手紙が届いていないかくらいは簡単にわかるさ」
ハリーさんはそう言って軽く右手を振り……次の瞬間にはその手に緑色の瞳の小さな人間のような誰かの首根っこを掴み上げていた。
「なっ!なな、なにが……」
「俺が招待したんだよ、ドビー。……とりあえず、家に来る筈だった手紙を出してもらおうか。お前のじゃない物を出す事くらいはできるだろう?」
ハリーさんが冷たい声でそう言うと、ドビーはゆっくりとたくさんの手紙を取り出した。その中にはロンやハーマイオニーだけじゃなく、ネビルやディーンやマルフォイの分まである。
「……さて、一応聞いておこう。俺の質問に答える気はあるか?」
「ドビーは何も話せません。それは許されていらっしゃらないのです……」
「おっと、話の途中で自分にお仕置きはさせんよ。……だったら、内容について話せないなら『内容はこうではない』と言う話ならばできるな?」
ハリーさんの言葉に首をかしげ……ドビーはゆっくりとうなずいた。
「なら話は簡単だ。お前は俺の問いが間違っている時に『違う』とだけ言えばいい。合っている時には聞こえないふりをしてなにもするな。……できるな?」
「はい!それはもう!」
なぜかドビーと呼ばれたその生き物は、小躍りして喜んでいる。なにがそんなに嬉しいのかはわからないけれど、ハリーさんに任せておけばどうしてドビーが私の手紙を盗んでいたのかわかるはずだ。
「じゃあ初めの質問だ…………お前はフォイの家の屋敷しもべ妖精で今年当主であるフォイの父親がヴォルデモー太君が若かりし頃に遺した分霊箱である日記を使ってホグワーツのどこかにある『秘密の部屋』を開いてヴォルデモー太君を復活させあわよくば娘っ子を殺してしまおうと言う計画を立てていたのを知って居てもたってもいられず娘っ子がホグワーツに行くことをなんとかして阻止しようとして手始めにホグワーツへの執着心を削ぐために娘っ子の友人からの手紙を全て届かないようにして孤独感を煽ってホグワーツでの友情なんて幻想だと思い込ませてやろうとしたところ俺の領域に娘っ子を引き込まれて何故か内部に移動することもできず話をしようにも出会うこともできず途方にくれていたところでどうやったのか俺に掴まれてここに来たな?」
…………ドビーは聞こえていないふりをした。と言うか、ハリーさんってなんなんだろう。最初っから知っていたのか、それとも推理したのかはわからないけど、それにしてもハリーさんってなんなんだろう。
……まあ、いいや。ハリーさんだし。私は私の仕事をしよう。主にハリーさんへのツッコミだけど、私のツッコミに救われてる人も結構な数いるそうだし、一応できる限りはやってみよう。
ちなみに救われてるって言うのは『自分の中の常識の危機を』って言うことらしい。ハリーさんと一緒にいると自分の常識が少しずつ揺るがされていき、いつの間にか自分の常識が間違っていてハリーさんの常識に染められてしまいそうになるんだとか。
そしてそんな時に私のツッコミを聞くと、ハリーさんに染められかけた頭の中身がしっかりと元に戻っていくのがわかるらしい。
……と、それよりも今はドビーとハリーさんの話に集中しないと……。
「何とかするから安心しろ。これでも去年ヴォルデモー太君をホグワーツから宿主ごと放り出してやったからな。日記も家のペットが破壊できるから問題ない」
「ある意味問題しか無いように聞こえるのは気のせいですか?」
「勿論気のせいだ。間違いない。ヴォルデモー太君もあの状態になれば一歳三ヶ月の赤子でも倒せるよ」
「一歳じゃ駄目なんですか? なんですその三ヶ月って……」
ハリーさんに質問するが、ハリーさんはさっさとドビーに視線を向け直してしまった。こうなったらハリーさんはその事については何も話してくれないことをよく知っているので、私は聞くのをやめた。
「そう言うわけだ、娘っ子を守るために、とりあえず校長にも色々と言っておくから安心しときな。……俺は色々知っている。嫌でも信じてもらうからな」
「ハリーさん、笑い方が邪悪です」
「悪役三段笑いとか、狂気に満ちた哄笑とかそう言う系統の笑い方はしてないと思うんだが」
「腹黒軍師が策を考えて実行して上手く行っているときに浮かべるような笑顔でしたよ?」
「俺は軍師にはなれないよ。なれたとして罠師だな」
「ハリーさんの作る罠とか救いが全く無いような気がするんですけど」
「ちゃんと最期には救われることもあるよ。後頭部にヴォルデモー太君を寄生させていた誰かさんのように。……まあ、娘っ子の話は置いといて……とりあえず事情はわかったし、こっちはこっちで何とかしてやるからさっさと帰れ」
ぽいっ、と言う感じにハリーさんがドビーを放り捨てると、ドビーは跡形もなく消え去った。いったい何があったのかはわからないけど、ハリーさんだったら何があってもおかしくない。例えば投げ捨てたドビーを狙ったところに瞬間移動させたりとか……まあ、ハリーさんだしね。うん。
……ハリーさんに染められたつもりはない。ただ、ハリーさんと私と言う存在は全く別のものだとしっかり理解してしまえば……少なくとも変に影響されることはなく受け入れることもできるようになる。これは私がハリーさんと出会ってからの一年で学んだこと。とっても役に立っている。
そこでお店のドアが開き、カランカランとベルが鳴る。ハリーさんはいつも通りの両目を閉じきった笑顔を浮かべ、私もにっこりと笑顔を浮かべる。
「いらっしゃいませ、寝子屋にようこそ」
さあ、お仕事お仕事……と。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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