ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
028
side エリー・ポッター
ダーズリー家に戻ってから三日後。ハリーさんがにこにこ笑顔で現れた。いったいどうやったのかはわからないけれど、いつの間にか私の分の荷物をきれいに纏めて私の目の前に立っていた。
「ど……どうやったんですか……?」
「ノリ?」
「ノリでできるような類いの物じゃないと思うんですけど……」
「俺はできる」
「…………うん、ハリーさんですしね。うん」
私はたった三日別れていただけの間にホグワーツの事が恋しくなっていた。ダーズリーの家はやっぱり凄く居心地が悪く、私は魔法を使えるようになってからと言うものずっと無視され続けていた。
ご飯は自分で勝手に作り、自分でちゃんと片付ける。今までと違うのは残飯以外も使えるようになっていたと言うことくらいで、多少食生活は改善していたが……ホグワーツのそれに慣れてしまうとどうしても見劣りしてしまう。
「それじゃあ準備はできたな? 忘れ物はないか? 財布は持ったか? 杖は? 梟は?」
「……全部大丈夫です」
「そうか。それじゃあ我が家にご招待、だ」
ハリーさんはマントの内側に私の用意した荷物を全てしまい込んでから私の手を取って、にっこりと笑う。私が次に瞬きをした瞬間……周囲の風景が全く違うものに変わってしまった。
狭苦しい部屋から広大な森へ。幾つもの山が立ち並ぶ大自然のど真ん中に、私とハリーさんは立っていた。
「狭っ苦しいところに居たんだったら広いところに出たいだろうと思ってちょっと歩く位置に出たんだが……余計な世話だったか?」
「そんなこと……ない、です。……綺麗なところですし……」
「そうか。まあ、庭の事を誉めてくれるのは嬉しいがね」
「………………庭?」
「庭だな」
「………………どの辺りまで?」
「ここからだったらとりあえず360度見渡して視界に入った場所は俺の土地だ」
「さっき山とか見えたんですけど……」
「俺の土地だ。迷ったら餓えと渇きで死ぬか、ペットに色々大変な目に合わされて死ぬかだから一人で入ることはお勧めしない」
「……あー、そう言えばグリフォンとかマンティコアとか居るんでしたっけ……」
キョロキョロと辺りを見回しながらそんな話をして歩く。
「目を合わせると即死する奴がいるからキョロキョロしない方がいいぞ」
「何て危険な!?」
「話せば良い奴だぞ。ホグワーツにも同種の奴が居るし……と言うか、ホグワーツのそいつから卵を貰ったんだよ」
「へ……へー……そうなんですか……」
「ちなみに名前はフリーザ。小型状態から大型状態になれて、半人型になれて、最終形態では蛇龍になれたりもする」
「竜!?」
「
「何でそんなのが……」
「ちなみに俺は気合いで耐えた」
「気合いで!?」
「更に言うと慣れたからもう効かないぞ」
「慣れで!?」
「娘っ子もどうだ?」
「全力で遠慮させて貰いますっ!」
ハリーさんはほのぼのした空気を感じさせたいのか、あるいはこれがこの場所の普通なのか……どちらにしろここは怖い場所のようだ。即死効果持ちの怪物が普通にうろうろしてるなんて……。
けれどハリーさんは普通にしている。どう言うことかはわからないけれど、ハリーさんはここに棲む獣達が私達の事を絶対に襲わないと確信しているかのようだ。なぜそんなことが言い切れるのかはわからないけれど……まあ、ハリーさんだから仕方がない。
そうこうしているうちに目的地についた。小さな丸太小屋のようだけれど、ハリーさんが言うには豪邸らしい。どの辺りが豪邸なのかはわからないけれど、ハリーさんが豪邸と言うからには豪邸らしい所があるんだろう。
「じゃあ地下行くよ」
「……地下?」
「地下」
地下……地下って……まさか!?
ガシャンッ!
「きゃうっ!?」
ハリーさんの手に握られた鎖が引かれ、私は鉄格子に体を打ち付けられる。ズキズキと身体が痛むけれど、それ以上に私の身体は熱くなる。
ハリーさんの顔が鉄格子の向こうに見える。私につけられた首輪から伸びる鎖を握り、私にいつもと変わらぬ笑顔を向ける。
「娘っ子……いや、エリー」
「あ……」
くい、と指先で私の顎を引き上げて視線を合わさせたハリーさんは、初めて私の名前を呼んで宣言する。
「……お前はもう、俺のモノだ───」
「……な、なんてことになっちゃったり!?」
「……なんの話だ?」
「ぴゃぁぁあぁあぁぁぁっ!!?」
気が付いたらハリーさんの顔が目の前にあった。寸前までしていた妄想のせいでハリーさんの顔をまともに見れない……。
「……ああ、一応言っとくが口に出てたぞ」
「………………hai?」
……え? ハリーさんは今なんて……。
「だから、俺が娘っ子を地下室にある檻に入れてペットみたいに飼うとかそういう想像がだだ漏れだったって言ってんだよ」
「……………………」
…………よし、ちょっと森に行こう。すぐ近くにある森で出会った獣と言う獣と視線を合わせていこう。きっとこの記憶と一緒に私を苦しませることなく消し去ってくれるに違いない。
「……娘っ子が望むなら、飼ってやってもいいぞ? 首輪も鎖も無いが……まあ、買ってくればいいしな」
「そんな気遣いはいりませんよーっ!うわぁぁぁぁん!!」
私は思いきり走り出してドアを開け……
「迷子になったら餓えて死ぬか獣に食われて死ぬかだからやめとけ」
ひょいっ、と片手で首根っこを掴まれて家の中に逆戻りすることになった。まるで子猫の首をつまんで移動させる飼い主みたいだったけど……私も最近は体重が増えてそれなりになってる筈なのに、よく片手で持ち上げたりできるなぁ……。
……よくよく考えたらクィレル先生を両手使ったとはいえ簡単に抱え上げて後頭部から地面に叩きつけたりとか、腕しか使えない状態で組分け帽子を殴って椅子と床に皹を入れちゃうハリーさんだったら簡単なことだろう。うん、きっとそうに違いない。
私はぷらーんとハリーさんにつままれながら普通に地下室に移動する。階段かと思ったらなんと転移門とか言う道具らしく、あっという間に目的地でありハリーさんがいつも過ごしているらしい地下十二階に到着した。
「じゃあ今日はもう遅いし、俺は寝る。部屋はそこら辺にある普通のを使ってくれ。時々ドアを開けて変なところに繋がるが、二三回開閉すればちゃんとした所に繋がるはずだから」
「変なところに繋がるって……どこに?」
「三階の大樹海とか」
「樹海が三階にあるんですか!?」
「ちなみにティガとかナルガとかアカムとかウカムとか
「樹海じゃないじゃないですか!?」
「古龍種は別の階層だから安心していいぞ」
「何を!?」
……とりあえず、ハリーさんの家で無駄にうろうろするのはやめた方が良さそうだ。
次回作は……?
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