ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 クリスマスも終わり、ハリーさんが『毎日ごっそりと枕に髪の毛が残るようになる呪い』を作ったり(被害者は主にスネイプ先生)、ハリーさんが『常に「戦争ハ愚カナ事デス!繰リ返シテハナラナイノデス!」という声を聞かされながら全身にガムテープを貼られては剥がされ貼られては剥がされを繰り返される痛みを与える呪い』を作ったり(被害者はクィレル先生)、ハリーさんが『何年か前に描いた絵を反転して脳裏に浮かべる呪い』を作ったり(被害者は同人誌を描いていたらしい腐女子の方々)、ハグリッドが卵から孵したドラゴンを頑張ってロンのお兄さんに受け渡して何事もなく寮に戻ったり、マルフォイが自己紹介の時に「フォイと呼んでくれ」って普通に言うようになってしまったり、クィディッチの試合があったりしたけれど……これくらいの事ならもう平和って言い切っちゃっていいんじゃないかな。うん。平和だよ平和。

 ちょっとクィレル先生がノイローゼっぽくなって学校からいなくなってしまっていても、スネイプ先生が胃を抑えて呻きながら授業をしていても、ダンブルドア先生が凄く疲れたような声でクィレル先生が教職を退いたことを伝えてきたりしても、私が平和だと思えばきっと世界は平和であるはず。実際にはどうなのか知らないけれど、とりあえずダーズリーの所には戻りたくないかな。戻らなくちゃいけないんだけど。

 ……誰でもいいから泊まり込みで仕事をくれたりしないかなぁ……。

 

「あ、じゃあうち来るか? 三食おやつに昼寝付き、実就業時間は午前三時間午後四時間半で日当30$、業務内容は主に掃除と皿洗いと接客で週休一日」

「いいんですか!?」

「まあ、悪かったら言わないわな」

 

 ハリーさんはさらりと言うが、これは間違いなく破格の条件だ。今までちょこちょこ色々な場所で小さく働いてはもらっていた金額から考えると、破格すぎてもはや疑わしいレベル。よっぽど不味いことでもさせられるのかと思えば、仕事の内容は掃除と皿洗いと軽い接客だけ。しかも接客については注文をメモして直接料理を作っているキッチンに行けばいいそうだ。

 

「……ハリーさんって、何者ですか?」

「眠たがりで面倒臭がりで鬱陶しがりの紅茶専門店経営者だよ。紅茶は家の庭で自作してたりするけど」

「……もうほんとに私をもらってくれませんか? 色々仕込まれてますから料理も掃除も割と上手にこなせますよ?」

「年齢考えて物言いな、娘っ子」

 

 ハリーさんは私の告白を平然と払って言った。割と本気で言ったつもりなんだけど、どうやら冗談として受け取ったらしい。

 確かに年齢的に結婚できる歳じゃないですけど、それでも結構本気なのに……。

 

「まあ、家に戻ったら手紙をくれや。暫くしたらこっそり迎えに行くからよ」

「シンデレラ的な……」

「死神的な意味にしてやろうか?」

「死神は間に合ってます」

 

 食べ物が殆ど無いって言う意味で。

 

「……お前さんはある意味修羅場を潜ってきてるんだな」

「修羅と言うより餓鬼がいっぱい居そうな気がします。私のお腹の中とか」

「……とりあえずこれを持っていくといい」

 

 ハリーさんが渡してくれたのは見たことのない小さな袋。手を入れてみたら……なんと肩まで腕を入れても底に触れない。そしてその中には……保存の効く食べ物が沢山入っていた。

 

「本当にありがとうございます」

「できれば使わないで済むことを祈っているよ」

「私もその方が嬉しいです」

 

 望み薄ですけど。ハリーさんが一般的な意味で普通になるのと同じくらいに望み薄ですけど。ハリーさんの異常識が常識に組み変わっちゃうくらいの確率で使わないで済むでしょうけど。

 要するに、まず無理。

 

「娘っ子。お前さんはもしかして馬鹿なのかね?」

「馬鹿かどうかはわからないですけど、まだまだ知らないことなら沢山あります。ハリーさんを更正させる方法とか」

「諦めろ」

「絶対そう言う類いの回答が返ってくると思ってました」

 

 私とハリーさんはそんな感じに軽く掛け合いながら、暫く離れることになるホグワーツを歩き回る。当然の事だけれどもう学校を出る準備は終わらせてあるし、ハリーさんも……まあ、ロン曰くハリーさんは「どこからともなく物を出し、どことも知れない場所に消す」らしいから、本当にハリーさんが何かやったのかどうかはわからないけれど……とにかく、ハリーさんも準備は終わらせているらしい。

 私はロンとハーマイオニーに軽く別れを告げ、マルフォイ達にも暫く会えないことを言っておいた。マルフォイ達はなんと言うか、純粋な人間だと言うことがこの一年でよくわかった。マルフォイは親の言うことをよく聞いて、純粋であるがゆえによく染まり…………そして純粋であるがゆえにハリーさんと出会って再構築されてしまっている。

 ロンもそれを理解していてマルフォイを嫌うことはやめたし(ただし、口喧嘩はよくする)、ハーマイオニーとマルフォイも……まあ、仲は悪くない。

 クラッブとゴイルはマルフォイの変わりように驚いてはいたが割とすぐ順応したし、マルフォイを中心としたスリザリンの一年生の間では少しずつ意識改革が起こってきている。

 勿論まだまだそれは始まったばかりだし、それをして見せたハリーさんはそんなことを意識してすらいないだろうけれど……私はそれがとても尊いことだと思っている。

 

「あ、そう言えば賢者の石を使った保存料だけど、割と効果はあったぞ。不老不死にしたり完全金属である金に変えたりするから何かをその状態のまま止めておくには最高の物だと思ってやってみたんだが、予想通りだったよ」

「あ、あれってその場のノリじゃなくてしっかり考えた上で発言してたんですね? びっくりです」

「俺はお前さんが俺の事をそんな風に思ってることが知れてびっくりだよ」

「だってハリーさんじゃないですか」

「俺は未来で毎日十八時間しっかり眠れる健康的で退廃的な生活を送れるように日々努力してるぞ? 裏で未来の敵になりそうな奴を排除したり、使えそうな所に爆薬仕込んでおいたりさ」

「ばっ……何やってるんですか!?」

「爆薬仕込んだ」

「……冗談ですよね?」

「冗談だといいね?」

 

 冗談じゃなさそうだと思いつつ、私はちょっと疲れたのでハリーさんの言っていることを理解しようとすることをやめた。ついでに何を聞いても内容の吟味をすることも暫くやめた。

 

「……ついでに娘っ子の持ってるその保存食にも使ってあるから。副作用は無いことを確認してあるから安心して食べな」

「なんてもったいない賢者の石の使い方……」

 

 ありがたいですけどね。うん。

 

 

 

 

 

 




 
 エリー達がドラゴンを運び出す時に見つからなかった理由

ハリー「せいっ」
フィルチ「うっ!?」
ハ「よしよし……さて次は副校長だ……せいっ!」
マクゴナガル「うっ!?」

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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