ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 クリスマス。私にとっては私は寒い廊下で残り物の寄せ集めを一人で食べ、暖房の無い物置の中で布団にくるまって寒さに耐えながら次の日を待つだけの日だったけれど、どうやらホグワーツでは随分違うクリスマスを送ることができそうだ。

 クリスマス・イヴの小さなパーティーでは自分の食べたいものを好きなだけ食べることができたし、寒い日なのに冷めきった具の殆ど無いスープと骨に薄く肉が残ったチキンだけをこりこりとかじり続ける必要もない。今までの人生で最高のクリスマスになった。

 

 ……そう言ったらロンとハリーさんがなんだか凄く怖い顔をした。でもすぐに食え食えと料理を差し出してきてくれて、私はぱくぱくと出されるままに食べ続ける。

 最近、少しずつ胃の大きさが大きくなってきている。栄養が足りなかったせいで全然伸びていなかった背も伸び始めているし、年齢から見た平均身長に届く目が見えてきていて嬉しいです。

 ハリーさんやロンにはまだまだまだまだ届きませんが、せめて……せめてお腹じゃなくて肩くらいの高さにはなりたいですし。

 ハーマイオニーから見ても小さい私は、これまで本当にいつもいつも子供扱いされてきた。そのお陰で学校で他の女子に庇ってもらえたり、ちょっとご飯を分けてもらえたりして生きてこれたんだけど……それでもやっぱり可愛いじゃなくて綺麗と言われるような大人になってみたい。女子であるなら多分大体の人にはわかって貰えると思います。

 

 そしてクリスマス・イヴの夜が明けたクリスマスの日。私はベッドの足元に置かれたプレゼントの山に目を奪われ…………とりあえず、ハリーさんに相談に行くことにした。

 

「……ハリーさん。朝起きたら、私のベッドの足元にクリスマスプレゼントがたくさん置いてあったんです」

「よかったな。それで?」

 ハリーさんはいつもの通りに顔をこっちに向けてはくれるものの、凄く眠そうで目を開ける気配もない。目がいつも閉じているのはいつもの事だから別に構わないし、意識がしっかりこちらに向いているのもわかるから何も問題は無いんだけれど……なんだか嫌な予感がする。

 

「……ハリーさん、私に何かプレゼントしました?」

「普通の胃薬」

「それ以外です」

 

 ハリーさんはちょっと考えると、まあいいかと小さく呟いてから頷いた。いったいハリーさんは何を……?

 

「箒交換券を一枚。一年の間は箒を学校に持ってくることはできないから来年になるけど、俺の知る限り最高性能の箒を一本と交換できる予約券みたいなものを……」

「ハリーさん、結婚を前提にお付き合いを───」

「……胃薬の瓶に仕込んでおいた」

「───しなくていいです」

 

 ハリーさんはなんでこうあらゆる出来事にオチをつけないと気が済まないんだろうか。

 

「俺としてはそんなに簡単に結婚を申し込もうとする娘っ子の方が心配だよ」

「安心してください、冗談が通じる相手か本気でしていいと思っている相手にしか言ってませんから」

「あ、じゃあいいや」

 

 ハリーさんはそう言ってさっさと布団に潜り込もうとするが、それを阻止する。

 

「あと、これがなんなのか知りませんか」

「ベペレル家に伝わる透明マントだろ。普通のに比べて気違い染みて高性能なやつだから、大事にしとけよ」

「……ベペレル?」

「ベペレル。……ペベレルだったか? まあ、それはどうでもいいが……知らないのか?」

「知らないです」

「あ、そう。まあ、教えないけどな」

「なんで!?」

「俺もあんまりよく知らないんだよ」

 

 ……びっくりした。ハリーさんにも知らないことがあったなんて……。

 

「ハリーさんにも知らないことがあったなんて……」

「俺も普通の人間なんだから知らないことがあったところでおかしくもなんともなかろうに」

「スネイプ先生の好きな人の名前は?」

「リリー・エバンス」

「ダンブルドア先生の好きな人は?」

「ホグワーツの住人」

「どうしてハリーさんはスネイプ先生に嫌われているの?」

「それをお前にバラすとか、流石の俺でもそこまで外道じゃないつもりだ」

「ハグリッドの秘密は?」

「アクロマンチュラって言う飼育禁止の危険魔法生物を飼っている」

「ヴォル……『例のあの人』の秘密は?」

「『分霊箱』を6つ作って隠してあるからそれが全部破壊されるまで死なないこと」

「……え?」

「おっと」

 

 ハリーさんが私に杖を向け――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬、私の意識が途絶えたけれど、次の瞬間にはハリーさんが珍しく右目を開けて私の目を覗き込んでいた。

 その綺麗な翠色の瞳は何故かダンブルドアの真っ青な瞳を思わせたけれど、すぐにいつものように閉じられてしまった。

 

「……えっと……あれ?」

「ヴォルデモー太君の秘密だろ? だから、あいつは実は純血主義のくせに魔女とマグルの間に産まれたって言ったんだよ」

「あ……ああ、そうなんですか……?」

 

 ……なんだろう、何もおかしくない筈なのに、何かがおかしいような気がする。何もおかしくないんだからおかしいと感じること自体がおかしいはずなのに、おかしいことにおかしいと思ってしまう。

 

「結構長く話したな。もうすぐ朝食の時間だぞ」

「え、本当ですか!?」

 

 クリスマス・イヴのご飯はとても美味しかった。だとすると、クリスマスのご飯もまた美味しいはず!

 私はハリーさんのベッドから立ち上がり、朝御飯を食べに大広間に向かう。

 

「ランランルー♪ 楽しみだなー♪」

 

 ……なんだかハリーさんに微笑ましいものを見る目で見られてる気がするけど、気にしない~♪

 

 寮から出て、大広間に向かって歩く道中で、ふと先程の違和感についての答えを得た。

 

「……『ヴォルデモー太』って、間違って呼んでたな。そう言えば」

 

 原因がわかってすっきりしたところで、今日も美味しく楽しい一日を始めよう。

 

 

 

 

 

 side ハリー

 

 エリーがいなくなったことを確認して、溜め息を一つ。流石に今エリーに分霊箱のことを話すのは不味いと思ったので万にはちょっと届かない程度の数の杖で狙った場所の記憶だけを綺麗に消してやったんだが、どうやら成功したようでよかったよかった。

 失敗していたら色々と不味いことになっていた可能性も十分にあったが、何もなかったし俺としては万事問題なし。唯一何かあるとしたら周りに居る誰かに聞かれてしまったかも知れないと言うことだが、それについても恐らく大丈夫だ(【直感:EX-】発動中)。

 それにしても、同時に同じ魔法を使えば杖が別々の物でも問題なく相乗するらしいと言うことにちょっと驚いた。一発一発がかなりの威力を持つ『忘却術』を数千発分の相乗と共に撃ち込んだ。これはもう校長がどれだけ頑張ったところで解けやしない。

 ああ、疲れた。

 

 俺はいつも通りに布団に入り、すやすやと眠り始める。何しろ最近は色々と面倒なことが多かったからな。エリー達に賢者の石やらなにやらかにやらの情報を渡さないように封鎖を続けるのはなかなか大変だったしさ。

 ああ、面倒くさかった。

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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