ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
クィディッチの試合があったけれど、一年生では参加できない事は知っての通り。私はとりあえず不満を飲み込んでチームの応援に徹することに決めた。
けれども、やっぱりシーカーが全然役に立たないらしいグリフィンドールは負けてしまい、点差は10対150と言うかなりの点差をつけられてしまっていた。
みんな悔しがっていたし、私もちょっとは悔しいと思うけれど……それよりも、飛行訓練での空を飛ぶ快感を思い出してしまった。
来年になったら、私は二年生だ。二年生なら箒を学校に持ってきてもいいと言う許可も出るし、クィディッチに選手として参加できる可能性もある。そう上手くは行かないだろうけど、夢をみるのは自由であるはずだ。
そういうわけで私はちょくちょく意識を空の彼方に奪われながらも、クリスマス休暇が来るまでの短い時間を楽しんでいた。
ハグリッドが運んできた樅の木に、フリットウィック先生が色々な飾りつけをしていくのを見るのは楽しかったし、そもそもダーズリー一家のところに帰らなくていいと言うだけでもう幸せで仕方がない。
ただ、ハリーさんが残ると知ってかなりの人数が逃げ出すようにして家に戻ると言っていたので少しホグワーツが寂しくなるけれど、それでもきっと楽しいだろう。
ちなみにマルフォイは最近ついにフォイと言う呼び名に対する忌避感が殆ど無くなって普通に返事をするようになってしまったし、クラッブとゴイルはそんなマルフォイを試しにフォイと呼んでみて何もなかった……と言う話を私にして来た。
だから私はハリーさん被害に対する窓口でもなければ懺悔室に居るシスター的な立ち位置に居るわけでもないんだから、相談されても正直困るのだけれど……それでも最近はそう言った他人の話を聞くことに慣れてきてしまっている。
まあ、精神的にそう言ったことに対する耐性は持っていないよりは持っていた方がずっといいものだけど……耐性をつける苦労に値するだけの物がとれるかどうかは別の話。ハリーさん耐性はきっと無駄な耐性になるでしょう。
だって……
「あ、娘っ子? さっき図書館で『賢者の石』に関する書物を見つけたんだけど、かなり適当にそこらへんに生えてた草とか石ころとかを大鍋に放り込んだらそれっぽいのができたんだけど欲しい?」
「いりません。なんですかそれ」
「不老不死に程近くなったり鉛を純金に変えたりすることができるだけのただの石ころ?」
「『ただの石ころ』がそんなことできるわけ無いって言うか今の今まで聞き流してましたけど賢者の石!? 錬金術の到達点の!?」
「多分。さっきやってみたら鉛が金になったし、多分本物」
「平然と何かしらの事を極めるのを自重してください!つい最近闇の魔術に対する防衛術でクィレル先生の心をぽっきりへし折ったばかりじゃないですか!」
「あれはあの程度じゃなんともならんよ。加減してるしな」
「あれで!?」
……とまあ、こんな感じにどんどんやってることが進化していくから……耐性を持っていても耐えられるはずがない。毒に耐性をつけるために飲む毒がころころと変わっていったら意味が無いように、ハリーさん耐性にも意味はない。
クリスマス休暇になってもずっとこんな感じの日常が続くと思うと……今から胃が心配です。マダム・ポンフリーによく効く胃薬でも処方してもらおうと思う。きっと私の胃は耐えられるだろうけど、もしかしたらを考えたら無いよりあった方がいい。
「ああそうだ、賢者の石を使って薬作ってみたんだけどいる? 胃薬と同じ材料に追加してみたらなんか薬効がかなり上昇した上に副作用が消えたんだ」
「何作ってるんですかあなたは!? あと私に胃薬とか何ですか心でも読んだんですか!?」
「娘っ子とハー子には苦労かけてるからちょっと早いクリスマスプレゼントでも……と」
「自覚あるならもう少し自重してくださいよ!?」
「ちなみに、この胃薬は死の呪い以外の全ての呪詛祓いの効果がある。『脚縛り』だろうが『全身金縛り』だろうが『擽り』だろうが、何だろうが治せるだろう」
「胃薬の枠を越えすぎてますよねそれ!?」
「うむ。それを称してこの胃薬に『「普通」の胃薬』の名をつけようと思う」
「普通って言う言葉の意味を調べて来てください。話はそれからです」
「だから普通じゃなくって『普通』だって。普通と『普通』の差は大きいぞ?」
「どう違うのかわからないんですけど!?」
「公孫賛は普通だけどJIMI神様は『普通』なんだよ」
「誰かー!普通の定義をハリーさんに教えてあげてー!」
近くに居た先生方には目を逸らされた。遠くに居たスネイプ先生にも目を逸らされた。ハグリッドやロンにも目を逸らされた。どうやらこの場において私の味方は一人もいないらしい。
「頑張れ娘っ子、お前さんならできるさ」
「嬉しくないです。欠片も」
ハリーさんはにっこりと笑いながら私の肩を軽く叩く。ついでに何故か胃薬も一緒にプレゼントされましたが、とりあえず貰えるものは貰っておこうと思います。
クィレル先生がなんか凄く胃薬を欲しそうにしていましたが、残念ながらこの胃薬は私のものです。
「『普通』の胃薬を飲むと魔法省がかけてる『臭い』も一緒に解けるから、どうしても魔法を使いたくなったら飲むといい。飲んでから15分は殆どの呪いを受け付けなくなるから」
「これ売りに出したら確実に売れますよ」
「なに言ってんだ? こんなもの流通させたら不味いだろう。常識的に考えればわかるだろ?」
「ハリーさんが常識を語らないでくださいよっ!」
「俺は昔、グリンゴッツの地下にいるドラゴンに餌をあげたことがある」
「よかった、いつもの異常識なハリーさんだ」
ハリーさんに常識を説かれるなんて、そんな屈辱はない。ハリーさんほど非常識で異常識な人はいないし、ハリーさんほどぶっ飛んだ人もいないんだから……そんなぶっ飛んだ人に常識を説かれたら発狂しそうだ。
……まあ、いいや。今はクリスマス休暇を迎えるのを楽しもう。ホグワーツにはあまり人がいなくなってしまうようだけれど、それでも誰もいなくなる訳じゃないし食事も出る。ダーズリー家とは違って私に殆ど何も食べさせずにいるようなこともないのが、私にとって一番幸せだ。
「じゃ、俺は今度は賢者の石を使った保存料を作ってくるから」
「なにに使うんですかそんなもの」
「色々できるぞ。じゃあなー」
ハリーさんは瞬く間に走っていなくなってしまった。いったい何をどうしてやればそんなことになるのやら……。
私は一つ、大きく溜め息をついた。
非常識→常識が無いこと、常識に当てはまらないこと。
異常識→本人なりの常識があってそれに従っている。
以上、非常識と異常識の差でした。
ちなみに、異常識は造語です。
次回作は……?
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