ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side エリー・ポッター

 

マルフォイがゆっくりにされた『飛行訓練事件』以来、ハリーさんは同学年のほぼ全員から『ハリー……さん』と呼ばれるようになった。勿論例外は居るものの少数で、大概『ハリー……さん』だ。

ハリーさん自身は『さん付け』なんてしなくていいと言ったけれど、それでも残念ながら寮が違う人はほぼ確実に『ハリー……さん』と呼んでいる。あのマルフォイですらそう呼んでいると言うあたり、よっぽどハリーさんの事が怖かったのだろう。

 

それはそれとして、今日はハロウィーン。人生で始めて眺める以外の方法で関わることができそうな気がしたが、よくよく考えてみればここはホグワーツ魔法学校。普通に魔法使いと魔女がいる。

だったら何をするのかと思えば、普通に収穫祭としてのハロウィーンを楽しむらしい。

今まであまり食べられなかった分を取り戻す勢いで食べていたら、二ヶ月かけて漸く平均体重よりちょっと軽いくらいにまで体重が増えた。今までは間違いなく痩せすぎだったので平均になれたのは嬉しいが、そのかわりにこれからは体重を増やしすぎないようにする事に気を付けなければならない。

ハリーさんは……あれだけ食べていても全く太った様子がない。いったいどんな身体の構造をしているのか本当に不思議になってくる。

……もしも体質だったなら、ハリーさんは全世界の全ての女性の敵になるでしょうね。羨ま妬ましい。

 

……いやいや、ただの想像でハリーさんを悪者にしてはいけない。したところで特に痛くも何ともなさそうだと思ったとしても、冤罪はよくない。うん、よくない。

 

「体質だな」

「ハーマイオニー、ちょっとハリーさんに肥満の呪いとかかけてみてくれない?」

「無理よ。かけても弾かれたわ」

「やったのかよ」

 

ロンが何か言ったような気がしたけど聞こえない。なんにも聞こえない。

でも、ハーマイオニーの呪いが弾かれたとなると私にはどうすることもできない。

 

「いやいや、俺は食った分はちゃんと使ってるから太らないのであって、食ってそのまま動かなかったら太るぞ? 多分」

「……本当に?」

「多分、だ。……用事ができたまた後でな」

 

ハリーさんはなぜかすぐに席を立ってしまった。いつもより食べるのが早かったからすぐにお腹が一杯になったのかもしれないが、それでもちょっといつもと何かが違うような気がする。何が違うのかわからないのが不安だけれど、もう居なくなっちゃった相手には聞くこともできない。まあ、後でハリーさんに直接聞けばいいや。

 

「……なんかさ、ハリー……さんが居なくなってる割には料理の減りが早くないか?」

「…………あれ?」

 

確かに、なぜかいつの間にかかなりの量の料理がなくなっていた。一ヶ所から消えたのではなく全体から無くなったようなので暫く気付かなかったが、間違いない。

流石のハリーさんもここまで食べるようなことはないだろうと思うほどの量だったけれど……今もどんどんと減っていく料理によくわからなくなっていく。

とりあえず、今は食べていよう。食べられる時に食べなかったら死んじゃうもの。

 

そうしてパクパクと食事をしていると、突然クィレル先生が部屋に飛び込んできた。どうでもよかったのでパンプキンパイを頬張っていると、何故か周りが突然騒がしくなる。よかったね、ハリーさんがここに居なくて。居たら間違いなく全員鉄拳制裁かクヌート銅貨の雨霰だったよ?

そしてダンブルドア先生が杖先から小さな爆発を何度か起こして大広間を静かにさせた。

 

その結果、私は食事を一度中断して寮にまで戻ることになってしまった。とりあえず、こんないい日にトロールを入れた奴は誰だろう? 呪ってもいい?

 

「……食べ物の恨みは恐ろしいって言うけど、貴女に関しては本当にそうね」

「……もうちょっとでいいから食べたかった。ピーブスがやったんだったら、ハリーさんにあの呪文を習って使ってやる」

「本気で怒ってるのね」

 

ハーマイオニーによしよしと慰められながら、私は寮の前に戻り……ふと、思い出した。

 

「……ハーマイオニー……ハリーさんは?」

「ハリー……? 先に戻ってるんじゃないの?」

 

きょろきょろと周りを見回して、ロンを見付けた。

 

「ねえ、ロン? ハリーさんを見なかった?」

「え? ベッドにはいなかったけど……いないのか?」

 

…………まあ、ハリーさんなら大丈夫だろう。きっとなんでもない顔で戻って……

 

「大広間から料理持ってきたぞー」

「ハリーさん、結婚しませんか?」

「エリー!そんな簡単に結婚とか言わない!もっと自分を大切にしなさい!」

「……嬉しかったんだもん」

「可愛くしてもダメ!」

 

ハーマイオニーに怒られながらも、ハリーさんが持ってきてくれた料理を楽しむ。やっぱり、ホグワーツの料理はみんな美味しい。

私は口に広がる料理の味に、へにゃりと笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

side ミネルバ・マクゴナガル

 

地下室から移動していたらしいトロールが見付かったのはあれからすぐのこと。ただし、見付かったトロールは既に何者かの手によって殺されていた。

しかし、いったいこの学校の誰がこんな殺し方をするのだろうか。私はトロールの無惨な死体を眺めて考える。

全身の骨が全て抜かれ、眼球と耳と喉を潰されて騒げなくなった所で頸動脈に鋭い刃物で一閃。最後のそれだけでも十分に殺せるだろうに、下手人は何故かこうして猟奇的な手段を使ってトロールを殺して見せた。

 

そして更に、トロールの血で書かれたこの血文字。『ヴォルデモート、帰れ。むしろ還れ。土に』と言う……まあなんと言うか挑発のような警告のような、とにかくふざけた内容の短い文。『例のあの人』が今この学校に居ると確信しているかのような文が、トロールの死体のすぐ近くの壁に残されていたのだ。

こんな文章を残すものがこの学校に居るとは考えにくいが、だからと言って外部からの侵入はまず不可能。そして実際にトロールが入ってきて死体として見付かったのは紛れもない事実。

とにかくこの事をダンブルドアに報告しなければならない。

私はすぐにこの状況を記憶し直して、ダンブルドアの居る校長室へと歩き出した。

 

……頭上にまで噴き上がっていたトロールの血飛沫の中に、『参上』と、見慣れぬ文字で書かれていた事にも気付かずに。

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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