ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
歓声が響くホグワーツの大広間。生き残ったみんなで祝杯を挙げ、ほぼ全員が酔いつぶれてしまうまで騒ぎは終わらなかった。
けれど、不思議と真夜中になる頃には誰もがその場で寝落ちして、大広間は文字通りに雑魚寝の場となっていた。起きているのは私と、数少ない屋敷しもべ妖精たちだけ。
そんな中、私は一人夜のホグワーツを歩いていた。誰もいない庭の真ん中で、じっと星を見上げる。
「———説明はしてもらえるんですよね」
「勿論だ」
ゆらり、と影が起き上がるようにしてハリーさんがその場に現れる。その姿は私が最後に見たそれとは大きく違っていて、けれどなぜかとてもよく見慣れたものだった。
「どこから聞きたい? 何を聞きたい?」
「全部……と言っても話してくれないことはわかってますし、関係のないことまで話そうとするでしょうからそれはいいです。ただ……いつからですか?」
「安心しろ。この期に及んでとぼけたりはしない。
いつからと聞かれたら答えは一つ。『初めから』だ。……いや、完全にそういう訳でもないか?」
「もう少し具体的にお願いします」
「わかったわかった。そうだな……三大魔法学校対抗試合の最終種目が終わった時、俺が優勝杯に触った先ではヴォルデモートが復活を企んでいたからそこで殺しておいたんだ」
「じゃあ、やっぱりバルバモートは……」
「そう、俺だ」
確信はあった。そしてハリーさんの口から直接聞くとなんだか納得もできた。そして、なんとなくではあるけれどどうしてハリーさんが今のようなことをしていたのかも予想ができた。
きっとハリーさんは、面倒臭いのが嫌だったんだと思う。ヴォルデモートを殺したとして、それを知っているのはハリーさんだけ。そうなると、ヴォルデモートに心酔していた一部の人達がいつどうやって動くかわからない。だから、ハリーさんがヴォルデモート改めバルバモートに成り代わることで、全ての敵を一点に集めて殲滅することにしたんだろう。
そしてその狙いは成功した。ダンブルドアも殺したのは多分ハリーさんがバルバモートに成り代わっていることに気付きかねない相手だったからだろう。優秀だからこそ殺される、というのは少し思うところが無いわけでもないけれど……まあ、ハリーさんだし仕方ないかな。
それに、今の私の感覚からすると正直に言ってそんなものはどうだっていい。ダンブルドアが生きていても死んでいても、そっか、の一言で終わらせられる気がしてならない。実際に死んでしまった時もそんな感じだったし、生きていたとしても多分こんな感じだと思う。
それはシリウスにも言えることで、色々と私の事を考えてくれたことには感謝しているけれど、死んでしまったという事実に悲しみが沸き上がってこない。
要するに、私は精神的にはまともな人間じゃないってことだね。
「ちなみにだが、分霊箱に関してはかなり前に見つけて壊しておいた。娘っ子達が探して壊してきたのは全部俺が用意した偽物だ」
「そうなりますよね。だってバルバモートがハリーさんだったってことはヴォルデモートの分霊箱はその時点で全部壊されてたってことですもんね」
「実のところ分霊箱と本体の繋がりを断ち切ってやれば分霊箱が残っていようが関係なくあの世に送ってやることもできたりするんだけどな」
「話の根幹がぶっ飛びましたね……ちなみにそれって私達にも———訂正します。ハリーさん以外にできる人っています?」
「いると思うぞ。対霊体戦闘だったら俺以上のスペシャリストがいるし、俺は基本的に意志力と身体能力任せだからな」
いるんだ。人間って凄いね。いや人間って決まったわけじゃないんだけど、この言い方だと多分人間だよね? 別に人間じゃなくても全く構わないけど、人間って凄いね。
「ダンブルドア先生を殺したのはどうしてですか?」
「無駄に察しがいい相手ってのは厄介でな。それにあの爺は自分の目的のために誰かを利用することを躊躇わないタイプだから生かしておいたら後々俺の事をまた巻き込んできそうだと思ってな」
「じゃあシリウスは?」
「あいつは頭の中身が子供すぎてな。今のブラック家に居られると闇が煮詰まりすぎて暴発しかねなかったから消えてもらった。一応ポッターも長い純血の家だし、ブラックの血もどこかに入っているから継承することができるし、あそこをなんとかするには建前だけでも継承しておかないと契約やら宣誓やらで酷いことになる」
「……ハリーさんはポッターの生まれなんですか?」
「ああ、お前の兄だ。だから結婚はできんのだ、すまんな」
兄。確かに私には双子の兄がいたと聞いたことがある。けれどその兄はお母さんたちと一緒に殺されたって聞いていた。他の誰かがそれを言ったのだったら私は不謹慎だと怒り、拒絶していたかもしれないけれど、どうしてかハリーさんの言葉は受け入れられた。
いや、自分でも何となくわかっていたんだ。私とハリーさんの間には切っても切れない縁のような物があると。
私は父の事も母の事も覚えていない。そしてダーズリーからは分かりやすい、あるいはまともな愛情は受けることができていなかった。ダーズリーからすれば私の事を国外の孤児院にでも放り込まなかった時点で温情だったのかもしれないけれど、私にはその愛情はわからないものだった、少なくともおじさんから愛されていると思ったことは無かったし、おばさんも私が死んでしまっていればよかったとは思っていないだろうけれど、それでも愛しているとは言えなかっただろう。
でもまあわかる。魔法の使えないマグルであるおじさんおばさんたちが、昼夜関係なく泣きわめいては魔力を暴走させてしまう私を捨てていないだけでも十分な物なんだと今の私なら納得できる。少し前まではそんなこともわからなかったけれど。
……ああ、心が砕けてしまいそうだ。今まで私が持っていたのはハリーさんと一緒に居たいからだったのに、私が守った国の法律がそれを阻むだなんて。
「いや兄妹が同じ家で暮らすことは何らおかしくないと思うが? 特に娘っ子は身寄りがないんだし」
「それもそうですね」
まあ、実のところ私は一緒に居られさえすれば結婚しなくてもいいのだ。ただ、血のつながりが無い男女が最も長く一緒に居やすい関係が結婚だったと言うだけの話。結婚しないでも私とハリーさんの間に絆があって、私とハリーさんが一緒に暮らせるのであれば何も問題はない。
そう、何も問題は無いのだ。
次回作は……?
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