ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 その時は来る。私が戦わなければいけない相手が、私を殺しに来る時が。

 いつになるかはわからない。けれどそれは必ず来る。

 だって、今のままでは彼らは絶対に勝てないからだ。

 

 既に大勢は決まっている。死喰い人の多くが殺され、こちらの被害は軽微。一部の死喰い人は逃げ出そうとして、けれど結界に阻まれて逃亡できずにいる。死喰い人にも強い人はいるようだけれど、そのトップであろう彼女、ベラトリックス・レストレンジは何故かこちらの人員を大きく減らすような行動をしてこない。これではまるで負けるために戦いを挑んでいるような―――

 

 違和感が私を襲う。なんで違和感があるのか……いや、それよりも、どこで違和感を感じたのかを考える。

 戦いの流れは綺麗なもので、死喰い人達の敗北に向けて流れている。一応警戒していた暗殺者も、流れ弾も飛んでこない。そして、その流れから外れようとする者がいると……必ず、ベラトリックスに殺される。

 

 考えている間も状況は進んでいく。まるでそれは一つの劇のように、流れが決められ結末まで定められた作品のように。そして、その結末を見る者がより多くなるように。

 

 そう、私はこの戦いを、いつしか劇としてしか見ることができなくなってしまった。昔から私は世界一つ分外れていて、最近ではその世界を隔てる壁が薄くなってきていたのだけれど、それでも完全に失われたわけではない。ただ、私と世界を隔てる壁が薄くなるとまるで本を読んだ時に感情移入するように楽しく思えるようになっているだけなのだ。

 そのせいか、そうやって世界を見てきた私は人の意思で作られた茶番劇のような物を見ると、なんとなくそこに含まれた意志や流れがわかるようになっていた。

 

 そんな私が確信をもって断言する。この戦いには誰かの意思が深く関わっていて、そしてそれを理解した上でベラトリックスはそれに従い、戦っている。

 なんでベラトリックスがそんなことをしようとしているのかはわからない。けれど、私の感覚を信じるのならばそうなっているのは間違いない。ならば、どうしてそうなっているのかを考えるよりも今どうするのかを考える方が優先だろう。だって、このままな流れに乗れば私にとって悪くない結果に終わるはずなんだから。

 

 きっとこれから一瞬反撃が行われるだろう。なぜなら劇と言うならそういった盛り上がりのための助走のような物は必要だからだ。山無し落ち無しではつまらない。だからこそ何らかの形で今の状況をひっくり返しに来るはずだ。と言ってもこれは私の感覚が正しくて、この戦場を全部支配している誰かがいて、その誰かが私の勝利を描いている場合に限るんだけどね。

 でも、私はそれにならないとどうにも勝てそうにない。これが恐怖劇だったら……諦めるしかないね。

 

 そしてやっぱり突然にその時は来た。ほとんどの敵が倒されて、少しずつ空気が弛緩してきた矢先のこと。突然ホグワーツの一角がダイナマイトでも仕掛けられたかのように吹き飛んで、周囲に瓦礫をまき散らす。まあ私はダイナマイトで建物が吹き飛ぶところなんて見たことが無いから想像でしかないんだけれど。

 

 その爆発は私を巻き込むことはなく、けれど私のいる部屋を半壊させる。土埃が晴れると、私の姿が外からはっきりと見えるだろう。

 そして同時に、私の前に現れた相手の姿も。

 

「―――」

 

 私は相手の姿を見て、絶句した。ただ一目見て理解した。そして、私がどうするべきなのかも。

 

 杖を構える。その相手は私を見据え、周囲にいる多くの人間たちを撃ち伏せる。その殆どが気絶し、一部は絶命し、そして極一部だけが地に伏せたままではあるけれど私とその相手が向き合うところを見つめている。

 会話は無い。必要ない。相手がその手に持つ杖が動き、無色の衝撃が走ると同時に私はその呪文を跳ね返す壁を張る。けれど出力は相手の方が相当高く、跳ね返すことはなく、けれど私が回避するだけのわずかな時間を稼いで壁は粉砕された。

 

 強い。まともにやっていては決して勝てないだろう。

 相手の足元から杭を出して身体を突き刺そうとすれば、その杭は全て腕の一振りでへし折られる。

 相手の周りを真空にしてみても、当然のように意識を保ったまま効果範囲から逃れてくる。

 私が放つ爆発は跳ね返されて私自身を襲い、私は瓦礫に身を潜めて隙を伺うことしかできない。

 

 けれど、そこに突然誰かが乱入してきた。魔法使いの決闘に乱入するのはご法度らしいのだけれど、これは決闘ではなく戦争だと初めに言われていたから大丈夫だろう。多分。

 マルフォイが腕に抱き着くように纏わりつく。足にはクラッブとゴイルが。首にはロンとハーマイオニーが噛り付き、マルフォイが抑えているのとは逆の腕にはネビルが噛みつく。まるで人の鎧のような、けれど実際には拘束具であるそれを纏っていては、流石に少し動きにくいのだろう。僅かに移動の速度が鈍ったのがわかる。

 

 周囲から呪文が飛ぶ。その全てが攻撃呪文ではなく拘束や動きを阻害するもので、相手は次々と飛んでくるその拘束を受けて殆ど動けなくなっている。

 石化呪文、金縛りの呪文、拘束呪文、妨害呪文。物理的にも魔法的にも動けなくなっているその相手の胴体に私は杖を向け、呪文を唱えた。

 

「アバダ・ケダブラ」

 

 初めて使う死の呪文。私の意思に逆らうことなく放たれた緑の閃光は、一直線に対象を貫いた。

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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