ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 戦いというものはわからないもので、気が付いたら一瞬で戦況がひっくり返ったりすることもままある。つまり、今まで私たちが優勢だったからと言っていつまでもそれが続くとは限らないと言うことだ。

 それを証明するようにホグワーツに陣を構えていた人たちの一部が一瞬にして削り飛ばされた。消し飛ばされたでも吹き飛ばされたでもなく削り飛ばされたというのは、つまり私にはその一角が挽肉になっていくところも全部見えてしまっていたということに他ならない。それでも私の意識にあるのは怒りとか悲しみとかじゃなくて食欲なあたり、本当に社会の中で生きる人間としては失格だ。今はまだ隠せるけれど、今より長く生きていったら元々の感覚を失ってしまいそうで少し怖い。

 

 削り飛ばしていったのは一人の女。あれは前に見たことがある。

 名はベラトリックス・レストレンジ。シリウスの従姉であり、闇の陣営における幹部格。ネビルの両親を『磔の呪い』で拷問した本人で、ついでになんかよくわからないけどどうしてか私のことをちょっと気に入っているらしい。理由は知らないけどね。

 ベラトリックスは恐らく無言呪文を連射し、次々にこちらの味方を仕留めていっている。一部はなんとか耐えているけれど、多くの死体が積み重なっている。と言うか正直あの威力の呪文を受けてぎりぎりとはいえ立っていられるとかホグワーツの教師陣って凄い。心からそう思った。

 けれど、ベラトリックスの歩みは止まらない。杖を振り、戦場を優雅に歩きながら死体を作り上げていく。反撃しようと魔法省から来た人たちや先生方が対応しようとしているけれど、それでもベラトリックスは止まらない。走ったりすると流石に集中が斬れるからあの速度なんだったらまだいいんだけれど、あの表情からして多分そんなことはない。

 

 そんなベラトリックスの前に、立ちふさがる三つの影。その影に向けてにやりと笑みを向け、ベラトリックスは一度歩みを止めた。

 

「―――ドーモ、ベラトリックス=サン。ドラコ・マルフォイです」

「同じく、ビンセント・クラッブです」

「グレゴリー・ゴイルです」

 

 両手を合わせ、マルフォイたちがお辞儀をする。それに対してベラトリックスも同じように両手を合わせ、視線は外さないようにしながら頭を下げた。

 

「ドーモ、ドラコ・マルフォイ=サン。ベラトリックス・レストレンジです」

 

 アイサツは大事。ニホンという国の古い書物、コジキと言うものにもそう書いてあったそうだ。ハーマイオニーがそう教えてくれたけれど、実際のところそうやっている間に不意打ちとかしたら駄目なのかな? スゴイ・シツレイたるとか何とか言われたけれど、自分と相手しかいない状態かつその一撃でしっかり殺せたのなら問題ない気がするんだけど。

 ともかくアイサツを終わらせた直後、ベラトリックスの右手の小指の先端が突然重すぎる荷物をひっかけられたかのように下を向く。けれどベラトリックスもその動きに逆らわず手を回し、空間ごと自分を握り潰そうとするクラッブの手を横から弾き、自分の小指にかかっている重量をマルフォイの右足の小指の爪の付け根に無理矢理移動させたらしい。どうやったのかはわからないけれど、マルフォイ以外にそんなことをされたら間違いなく爪が割れるだけじゃなく足の指の骨折まで行くだろう。それを察したゴイルが重心を自分に戻し、ベラトリックスが杖を振り、狙われたクラッブをマルフォイが守ってカウンターを返し、しかしそのカウンターを撃ち落とされる。

 見るだけなら私もできるけれど、あれに割り込んだりするのはかなり難しいだろう。アイサツ前のアンブッシュは一回に限って許されてるけどあれ相手にアンブッシュとかほとんど効果なさそうだし、そもそもの話としてゴイルの体重が手の小指の先端にかかっても爪が割れたり剥がれたりしないって言う時点でまともな人間の身体はしていないって言うのがよくわかる。

 三人を相手に堂々の立ち回りをしているベラトリックスを周囲にいる魔法使いたちが流れ弾を当てるような形で狙う。けれどそれでも一切攻撃が通らない。防御力最強のマルフォイに加えて空間ごと削り取る特殊攻撃型のクラッブと相手の身体に自分にかかる重量をそのまま押し付ける間接デバッファーのゴイル、更に周囲で戦いながらあわよくばと攻撃しようとするセドリック達を、ベラトリックスは一人で振り回している。

 そしてそうなっているということは、ホグワーツの守りにも穴が開くということで。守りに穴が開いてしまえばそこから入ってきて欲しくないものが入ってくるということで。入ってくるとするなら少数で、けれどその少数でも十分な働きをさせるのならば特に優秀なのがくるのは少し考えればわかることで。

 

 ……けれどまあ、そんな私が少し考えただけで想像できる状態へのフォローができていないはずもなく。先生たちが実力のある生徒たちを率いて死喰い人の波を押し返している。

 特に効果的なのはフレッドとジョージの発明品らしいちょっと火力がおかしいクソ爆弾のような物。クソ爆弾は殺傷能力がほとんどなくて代わりに酷い匂いをさせる液体と固体の合いの子くらいの物が辺り一面に飛び散るようにできているのだけれど、今使われているのは明らかに金属製でしかも燃えている。手榴弾と何も変わらないような気がするけれど、よく考えてみると魔法使いは魔法に対しての対策はかなりしてあっても物理に対しての対策はあまりしていないように思える。実際に結構な数の死喰い人がその爆弾によって戦闘不能に追いやられているように見えるし、どうやらあの炎に焼かれた部位は治療が非常に難しくなるようですぐさま戦線復帰は難しいだろう。

 これなら数の不利を覆す一因になるかもしれないけれど、双子の道具だって無限にあるわけじゃない。いつかは残数がなくなることも考えておかないといけない。

 

 つまり、その時が私の出番になるってことだね。わかる。

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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