ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side エリー・ポッター

 

ハリーさんは今や生徒全般から畏怖を集めている。普段からの行動も原因の一つだろうが、それが広く知れ渡るようになった原因には……実はマルフォイが密接に関わってくる。

マルフォイは、実は凄く嫌な性格をしている。非常に高慢で他人を……特にスリザリン以外の寮の生徒を見下す発言が多く、グリフィンドールでもハッフルパフでもレイブンクローでもあまり好かれてはいない。

しかし、それと同時に多少の同情も獲得しているので、収支で言えば若干マイナス寄りとでも言えばいいだろう。

自業自得だと言う人も居るが、自業自得だとしてもハリーさんは基本的かつ根本的にやり過ぎるから……。

 

……マルフォイが関わってハリーさんがホグワーツ内でかなり有名になった原因と言えば、一年の誰もが『飛行訓練事件』を挙げるだろう。初めての飛行訓練の時に起こった、天災のような人災の話だ。

殆ど全員が楽しみにしていた飛行訓練では、グリフィンドールとスリザリンの寮生が一堂に集まって行うことになっていた。それに従って校庭に出て、そして箒の横に立つ。いつの間にかハリーさんも来ていて、授業開始の寸前まで芝生の上で眠っているのが目に入った。

ハリーさんの隣にある箒は、見た中でもかなり古ぼけている。小枝が何本か凄い方向に向いていたし、何年前からあるのかわからないほどボロボロで、箒の柄の一部が何度も握られたのが原因か若干すり減っている。

 

しかし、ハリーさんの箒も私の箒も実際にはかなりいい動きをしてみせた。初めに先生に言われて箒を取るのは一度で成功したし、その後にふわりと浮いて私が跨がりやすくもしてくれた。

そして本番……と言うところで、ネビルがまた凄いことをやった。先生が笛を吹く前に思いきり地面を蹴って飛び上がってしまい、降りてくることもできずに真っ逆さまに落ちてしまったのだ。

よかったと思うのは、あまり高いところから落ちたわけでもなく、死ぬような怪我を負うようなこともなかった事だろう。あの程度の高さなら、ちゃんと上手に落ちればかなり痛いだけで済む。

 

……さて、マルフォイが自業自得で有名になるのはここから先の出来事が原因となる。既に何度もマルフォイがどこからともなく飛んできたクヌート銅貨に額を弾き飛ばされる光景は見られていたが、それがこの場でも起きてしまったのだ。

マルフォイがネビルが落とした思い出し玉を拾ってそれを持ったまま飛んでいってしまったことが原因だ。

それを取り戻そうとロンが箒に乗って飛ぼうとした時、ハリーさんがロンの箒の柄を掴んで無理矢理引きずり下ろした。普通は箒は乗っている人物の命令だけを聞いて動くはずなのに、ハリーさんが掴んだ瞬間にロンは箒の制御を奪われてしまったのだ。

 

「何をするんだよ!?」

「飛ぶなと言われたろうが、バカめ」

 

ロンを珍しく少しだけ開かれた右目で見つめ、それからマルフォイを見上げる。マルフォイの顔が青ざめていくような気がしたけれど、どうやら後悔するには遅すぎたようだ。

瞬間、マルフォイの頭が後ろに弾け飛ぶ。箒の上でそんなことになったらそのあとどうなるか。わからないほど私も馬鹿じゃない。一瞬にして意識を失ったマルフォイはぎゅるぎゅると縦に回転しながら上に飛び、そして回転の速度を緩めないままに落ちてきた。

その手にあったはずの思い出し玉は何をどうしたのかハリーさんの手の中に納められていて、ついでに落ちてきたクヌート銅貨も指二本で受け止めた。

 

そのまま落下したら流石のマルフォイでも重傷になるだろうと焦ったけれど、ハリーさんがひょいっと杖を振ってマルフォイの身体をゆっくりと地面に下ろしてみせた。

 

「さて、お仕置きといくか。ゆっくり薬で『ゆっくりふぉいふぉい』にしてくれる」

「なんの話かよくわかりませんけどやめてあげてください死んでしまいます」

「大丈夫、何をするにもドヤ顔で一頭身で移動方法がぴょんぴょん跳ねる以外に無くて他人の神経を逆撫でするドヤ顔で生意気で饅頭で皮がしっとりしてて中身に何か入ってる生首のようなものになるだけだから」

「生首ダメ!ゼッタイ!」

「ゆっくりふぉいふぉいの中身は何かな? あんこかな? カスタードかな? イナゴの佃煮かな?」

「最後のが入っている饅頭とか誰が食べるんですか」

「フォイは食べたぞ? 罰ゲームで」

 

その言葉を聞いて全体的にマルフォイに同情する空気が広まった。そしてそんなものを本当に食べさせるハリーさんに畏怖の思いが広がっていく。

そんな空気を頭から無視してハリーさんは黒髪に赤いリボンをつけたドヤ顔の丸い何かが描かれた瓶に入った錠剤をマルフォイの口に放り込んだ。その途端にマルフォイの身体が縮んで行き、そして本当に首だけになってしまった。

しかし、なぜかマントはつけているし、クヌート銅貨がぶつかった額には十字に絆創膏が貼り付けてあって応急処置がされている。

 

「二時間もすれば元に戻るから放置しといて大丈夫だ。饅頭だから放置しといたら食われて無くなってるかも知れないけど」

「何も大丈夫じゃないですよね!?」

「まあまあ落ち着け娘っ子。とりあえず頬をつついてみるといい、柔らかいぞ」

 

目をぐるぐるにして気絶しているゆっくりふぉいふぉい……じゃない、マルフォイを持ち上げて私に差し出してくる。つついてみたら本当に柔らかかった。しかもしっとりしていて、女としてちょっと許せない。

 

「あんまり強くつつくとそこから腐るから気を付けろよ」

「腐るの!?」

「戻る前に腐ったらな。ちなみに腐った状態で戻るとバイオハザード的なゾンビに……」

「怖い!」

「……タイラントフォイフォイになる」

「どうしよう実際に会ったら多分死を覚悟しなくちゃならないほど怖いはずなのに字面的に全然怖くない!」

 

周囲は訳がわからないと言う顔をしている人が多いけれど、それでもタイラントフォイフォイと言う言葉の響きに大爆笑している人もそれなりの人数に上る。

 

と、そこでフーチ先生が戻ってきて事情の説明を求めてきた。

 

「突然フォイが落ちていたガラス玉を拾ったかと思うと『フォイフォイフォーーーイ!』とテンション高く叫び出して箒に逆立ちで乗ったまま飛び始め、ガラス玉から変な靄が出て砕け散ったと思ったらフォイがあんなんになってました」

 

大嘘っ!?

 

……と、叫ぼうとしたところでなぜか声が出ないことに気付く。後ろの方ではスリザリン寮生が同じように騒ごうとして失敗していた。

よく見てみたら、ハリーさんの袖から杖が何十本かスリザリン生の方に向いている。きっとあれがスリザリンが黙らされている理由だろう。声を出せなくされているのかな?

 

……ハリーさん、とりあえず……才能の無駄遣いは程々にしておいてください。やられる方もツッコミも死んでしまいます。疲労で。

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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