ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 夢を見る。暗い未来の夢を見る。

 バルバモートに勝って、英雄として祭り上げられて、沢山の人に褒められて。

 お金をもらって、家をもらって、土地をもらって。

 

 けれどそれ以外の全部を失った。

 

 私が暮らしていたプリペッド通りの家の階段下の倉庫は家ごとなくなり、短い間シリウスおじさんと過ごした屋敷はバルバモートの意思を汲んで動くようになっていた魔法省の家宅捜索その他で何もなくなってしまった。友達と会う機会もめっきり減って、今ではふくろう便で手紙のやり取りをするくらい。そのふくろうも私と長く一緒に居たヘドウィグではなく、別のふくろう。

 そして、ハリーさんはまるで初めから存在しなかったかのようにいなくなってしまた。

 

 記憶はある。どんな話をしたかも思い出せる。けれど、それはどんどん薄れていくのがわかる。

 話した内容が記憶から知識に。ハリーさんの声色は薄れ、どこかで聞いたことがあるような気のする掠れた女の声に。少しずつ覚えていたはずの事を忘れていく。

 ハリーさんの事を調べたけれど、既に何もわからなくなっていた。イギリスの戸籍にはハリー・オライムレイと言う名前は存在せず、ハリーさんの持っていた店の場所は深い深い森になっていて。

 写真の中からはハリーさんの姿が消えていて、日刊預言者新聞でハリーさんが三大魔法学校対抗試合で優勝した時のインタビューは丸々別物に置き換わっていた。

 やがて私の記憶からもその人(・・・)の記憶が消えて、私が何をしたかったのかもよくわからなくなって。

 

 

 

 夢を見る。明るい未来の夢を見る。

 バルバモートに勝って、英雄として祭り上げられて、沢山の人に褒められて。

 けれど、私はそれを捨てて消えた。

 お金もない、家もない、私自身の持ち物は何もない。

 

 でも、私に新しく家族ができた。

 

 深い深い森の奥。人なんて早々訪れない場所にたった一つのお屋敷で、私はハリーさんと一緒に暮らしている。

 ヴォルデモートの事が全部終わってから、ハリーさんはよく眠るようになった。丸一日どころか、放っておくと三日も四日も眠り続けることがよくある。私はそんなハリーさんを一日に一度は起こして、一緒に食事をして、クリーチャーとぽつぽつとお話をしながらゆっくりと日々を過ごしている。

 場所を知っているロンやハーマイオニーが時々遊びに来て、クリーチャーにわかりにくく歓迎されながらちょっと楽しんでおしゃべりしたり今の情勢とかの事を聞いたりして。

 

 

 

 夢を見る。混沌の世界の夢を見る。

 救うも滅ぼすも自在に行う誰かが、私のいるこの世界を回している。

 世界を大きな二つに分けて、その両方と関わりながら自分にとって良いように世界が回るように作り替えていく。

 世界は混沌に向かう。全も悪も全てを混ぜられ、単色になった世界では誰もが平和を享受し、笑う。

 戦いは起きず、全ては戦いが始まる前に決着がついた世界。誰もが作り上げられた平和と幸福の中で平穏に生活を続けている。

 

 

 

 夢を見る。秩序の世界の夢を見る。

 救うも滅ぼすも自在に行う誰かが、私のいるこの世界を回している。

 世界を大きな二つに分けて、その両方と関わりながら自分にとって良いように世界が回るように作り替えていく。

 世界は秩序に向かう。善悪全てが定められ、無数の色が規則正しく整然と並べられ、そして互いに喰らい合う。

 争い、消し合い、しかし減っては増え行くそれぞれの色が消える前に、世界そのものが消え去った。

 

 

 

 夢を見た。夢を見た。私の世界の夢を見た。

 明るい、暗い、混沌の、秩序の、白の、黒の、夢を見た。

 その世界の中、いつも中心にいるのは私……ではなく―――

 

 

 

 夢を見ていた。目覚めた私は自分の身体を抱きしめる。

 寒い。季節的にと言うのもあるけれど、それ以上に今見た夢の内容が私の心をかき乱している。

 ハリーさんは言っていた。魔法使いの見る夢は時に未来や過去を見通すことがあると。それ以外にも今現在のどこかで起きていることを見てしまったり、この世界ではないどこかの世界で起きたことを見てしまったりすることもあるという。

 もしも今見た夢がハリーさんの言ったような夢だとするならば、私はこれから一体どうすればいいんだろうか。私が見た夢の内容を知ってしまって、私はこれからどうすれば……。

 

 悩んで悩んで、私は杖を取る。杖の先端を自分に向けて―――

 

「―――『オブリビエイト』」

 

 

 

 ハーマイオニーに起こされて目が覚める。今日は夢の一つも見ないでしっかり眠れた。その割に身体がちょっと疲れてるのは……ハリーさん不足だね。間違いない。ハリーさんが足りなくなってくると私の身体は今まで溜めたものの中からハリーさんが作った物を選択的に取り出してハリーさん成分を得ようとするから何とかならなくもないんだよね。まあ完全に私の妄想だけど。

 いくらなんでも人間にそんなことを可能にするスペックがあるとは思ってない。魔法使いだからってできることには限界があるだろうし、私のスペックってそこまで高くないのはわかってるからね。私の場合、他の人より優れているのは食べたものを保管しておける容量と限界時間くらいなものだ。あと悪食さ……悪食は優れているに入れていいのかな?

 まあとにかくそのくらいだからね。今の状態なら水と胃薬さえ飲めれば半年くらいは絶食できそうな気がするよ。できればやりたくないけど、ロンとハーマイオニーは私と違ってちゃんと食べないと死んじゃうからね。我慢できるところは我慢していかないと。特に命にかかわるところはね。

 まあそんなわけだから、呼吸と食事は忘れちゃだめだよね。私みたいに成長が止まっちゃうぞ? 特に呼吸の方は即座に命に関わってくるから気を付けようね! 普通ならわざわざ呼吸について気を付けないといけないようなことにはならないはずなんだけど!

 

 さあ、もうすぐホグワーツ。一体ホグワーツがどうなっているのか……心配なような、ちょっと楽しみなような、複雑な気持ちがある。ハリーさんがいなかったら不安一色だったんだろうけど、流石ハリーさんだよね。そこにいるだけで状況を見事に変えてみせるんだから。

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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