ハリー・ポッター ～ほんとはただ寝たいだけ～

173-B

　side ロン・ウィーズリー

　気合でグリンゴッツ破りをすることになった。これはどんな罰ゲームだよ……？　普通グリンゴッツ破りとか一人でやらせたりしないよな？　どう考えてもおかしいだろこれ？

　……一番おかしいのは真正面から破りに行ってゴブリンの罠とかを全部打ち破って物を壊せちゃった僕だって話があるけど、僕以上にハリーさんの方がおかしい。それは間違い無いはずだ。

　内容を説明すると、まずグリンゴッツに侵入し、そこでふと気づいた。僕、目的の物がどこにあるとか全然知らないんだけど！？

　頭を使うのはハーマイオニーの仕事だったし、僕自身はハーマイオニーの考えた作戦に乗って動けば今まではそれでよかったけど、今回は僕が考えて何とかしないといけない。ここに僕の味方は僕しかいないんだから、何とかしないといけない。

　そもそもグリンゴッツの内部の構造とか全然知らないし、どこに何があるとかどこを進むとどこにつくとか全くわからない。そしてもう既に出口がわからない。ほんとどうしよう。

　いや待て、こんな時こそ落ち着いて行動するべし。そして落ち着いたら当たり前の事から整理していけば解決策は見えてくるはずだ。

　ゆっくりと息を吸って、吐く。もう一度大きく息を吸い、吐く。

　見つけなければいけない物は、『例のあの人』の魂の一部が封じ込められたハッフルパフのカップ……確かそう。そしてそれを見つけたら壊して、さっさとこの薄暗い穴倉から出ていって、ホグワーツに行く。そういう段取りだったはずだ。

　一度ここを出たら次に入ろうとする時には更に警備がきつくなっているだろうから、今回の侵入で決着を付けないともっと面倒なことになるのはわかりきっている。でも場所はわからない。だったら考えるしかない。目的の物は一体どこにあるのか。

　ハーマイオニーからもらったメモには、レストレンジの金庫に入っているって話があった。けれどレストレンジの金庫の場所を知らないし、知っていたとしてもトロッコが使えない以上は歩いて行かなくちゃいけない。レストレンジの金庫はかなり深い所にあるそうだけれど、多分ウィーズリー家の金庫と同じくらいの場所だと思う。家の長さだったら同じくらいだし、多分ね。

　それと、何度も行ったことがあるから一応覚えてはいるんだけれど、一応扉の上にはどこの金庫かがわかるように文字が書かれているらしい。ゴブリンの使うゴブリディック語とか言うものらしいけど、ハーマイオニーならともかく僕がそんなものを読めるわけないよね。どうしよう？

　……。

　…………。

　……………………。

　よし、全部ぶち壊そう。全部と言ったら全部だ。

　まず、目的の金庫はグリンゴッツでもかなり深い所にある。これは確定だ。レストレンジは長く続いている純血の家系だし、王族とも呼ばれることがあるブラック家とも何度も婚姻関係を結んだことがあるくらいの銘家だ。だから相当深い所にあるというのは間違いない。それは多分ウィーズリーの金庫よりも深いだろう。

　つまり、ウィーズリーの金庫を見つけたらそこより深い所にある金庫を見かけたら片端から全部ぶち壊して中にあるカップらしきものを根こそぎ砕いていけば何とかなる。そのあたりは気合で何とかする。試しに近くにあった金庫の扉にﾌﾀｴﾉｷﾜﾐｱｯｰ!してみたら結構簡単に砕けたし、行けるはず。一発二発で行けなかったとしても千発もぶち込めばたぶん行ける。

　という訳で、出発。一番下に行く方法はとても簡単だ。基本的にグリンゴッツは地下深くにある谷を利用して作られている。その谷を見つけて飛び降りれば一番下まであっという間だ。トンネル部分もあるが多分大丈夫。気合で何とか……うん、何とかしよう。

　そんな訳で I can fly!!

　下の方から攻略中。上の方より下の方が扉の頑丈さが上だったが、予想通りと言うか予想以下と言うかどこも30くらいﾌﾀｴﾉｷﾜﾐｱｯｰ!すれば通れるようになった。そして中にあった様々なカップっぽく見えるものを片端から殴り砕いていく。ﾌﾀｴﾉｷﾜﾐｱｯｰ!を使わなくても砕けるような物はハズレだと思うからひたすら下から上に上にと登りながら金庫破りを繰り返し、罠やら呪いやらも殴って砕いていった。ドラゴンも砕いた。

　……ドラゴンって言えば、多くの魔法使いにとっては目の前に現れたら絶望するしかないような相手のはずなのに、なんで簡単に倒しちゃってるんだろうな、僕。これも全部ハリーさんのせいだ。ハリーさんがあんなに簡単にドラゴンを攻略して見せたせいでなんと言うか簡単に何とかなるものだと思えてしまって仕方ない。しかも実際に何とかなっちゃうあたり何とも言えない。そしてそれが必要なことなんだから文句も言えない。

　ともかく殴れ。いいから殴れ。とりあえず殴れ。なんかそんな感じの言葉が異国にあるとか無いとか。ハーマイオニーが言ってたんならともかく、ハリーさんが揶揄うように言ってたから多分嘘だな。もしあったとしてもハリーさんが言った言葉とかそんな感じだろう。

　と、そんな風に考え事をしながらグリンゴッツを攻略していったところ、なんかそれっぽいのを見つけたので壊しておいた。アナグマの描かれた金のカップで、しかも僕が普通に殴っただけじゃあ壊れなかった。特殊な方法じゃないと壊れないって話だったけど、僕が本気で殴れば壊れるらしい。本気で殴ったら粉々になったから、多分これで完了だ。

　後は僕がグリンゴッツから無事に出ていってホグワーツに行ければいいんだけれど、グリンゴッツもホグワーツも『姿あらわし』ができないようになっている。ハリーさんの使う『姿あらわし(物理)』だったらできるだろうけど、あれは本人がやるならともかく本人以外に使われると余裕で死ねるからノーカウントで。

　そんなこんなで考えていたんだけど、そもそも洞窟って土とか岩とかにできた空洞だ。だったらもう僕自身がそれを作って地上に出て仕舞えば万事解決することに気づいた。つまり、全部ぶち壊せばいいんだ（２回目）。

　壁を殴って上向きの坂道を作り、再び殴る。とにかく殴って殴ってひたすら殴って、ちょっと硬めの場所にはﾌﾀｴﾉｷﾜﾐｱｯｰ!して道を作る。

　どれくらい時間が経ったのかはわからない。そもそも僕がどのくらい落ちたのかもわかっていなかったし、ここがどこかを知る術もない。ただ、壁が全体的に柔らかくなってきたから地表が近いと思う。

　進んでいる間にいろいろ不安になることも考えてしまったけれど、まあ現実にそんなことは起きようがないから流した。ハリーさんがハーマイオニーとエリーを両側に侍らせてハーレム作るとか……無い無い。なんで考えたんだろうねこんなこと。

　あ、光が見えた。