ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
「で、どうやってホグワーツまで行く? ハリーさん式姿くらまし?」
「それ確か思いっきり蹴り飛ばすやつじゃなかった? あらわす方よ」
「そうだっけ? と言うか私達の中で一番力があるロンがやっても無理だと思うけど? できる?」
「ついついフタエしちゃう可能性があるけどそれでいいなら」
「「却下」」
私達はマルフォイじゃないんだから死んじゃうよ? いやほんと死んじゃうよ? ロンのあれはほんとにおかしい威力になってるんだから。
なにか移動できるものがあればあればいいんだけどね。ドラゴンとか、グリフォンとか、セストラルとか、ヒポグリフとかさ。近くにそんなの生息してないから言うだけ無駄だけど。
まあ、『姿あらわし』はホグワーツ内では封じられてるけれど、屋敷しもべ式なら使えるらしいからそれで行けばいいかな? 問題はあっちの様子がわからないから不意討ちされたり入ってきたのがばれたりしそうなことだよね。死んだふりは得意だけど、隠れるのはそこまで得意じゃない。
ホグワーツに繋がる秘密の入り口は全部押さえられてるだろうし、確実に安全と言えそうな場所と言えば……ハリーさんの家くらい? ハリーさんの家はホグワーツと直結してないだろうけど、何らかの形でホグワーツのハリーさんと話をすることくらいはできそうだ。
そうすればハリーさんに迎えに来てもらったりできそうだし……これくらいしかないかな?
もしかしてもしかすると『必要の部屋』に籠っている誰かが食料やら何やらを必要としてどこかにひっそりと繋げてるかもしれないけど、流石にそれはわからないからね。繋がっている場所も、そもそもそれをやっているかどうかも。
「だから、まずハリーさんの家に行ってみるのはどうかなって思うんだけど」
「私は場所を知らないわ」
「僕も知らない。と言うか行ったことがない場所には行けないから無理だって」
ハリーさんの家は私しか知らないらしい。そう言えば今までハリーさんの家でホグワーツ関係者は見たことがなかったかも……一部の卒業生は除いてだけど。バルバモートとか。ベラトリックスとか。
でもあの時、ハリーさんに害になることはしないって言ってたし、まあ多分安全だよね。ハリーさんがバルバモートに負けない限りは。
で、正直ハリーさんがバルバモートだろうが誰にだろうが負けるところなんて想像もできない。もしハリーさんが勝てなかったら私なんて千人居ようが一万人居ようが三分で駆逐されちゃうに違いない。ウルトラマンより酷いね。
「……わかった!それじゃあまずは私が行って、ハリーさんに連絡とってハーマイオニーとロンを迎えにいってもらうようにお願いしてくる」
「……それなら大丈夫そうね」
「じゃ、エリー、よろしく」
「任せて!」
私はハリーさんの家、正確には店の目の前を狙って『姿あらわし』をする。いつも通りの奇妙な感覚が身体を襲い、目の前に狙った通りのハリーさんの店のドアがあった。
急いでそのドアを開いて中に飛び込む。チリンチリン、とドアベルが鳴り、中の様子が視界に入る。
「あ、ババ来ちゃったわ」
「おいおい、わざわざ口に出す必要あったか? まあ、次はお前だなロリウス・フォイフォイ」
「誰がロリウスで誰がフォイフォイだ!」
「いいから早くしな!我が君がお待ちだよ!」
「くっ……!」
なんか知ってる顔が四つ揃ってババ抜きしてた。何がどうなってるのかわからない。ハリーさんとバルバモートって敵対してなかったっけ? あれ?
「……あの、ハリーさん?」
「ん? おお、娘っ子か。元気してたか? 分霊箱はあと一つといったところらしいが」
「本人いるよ!? バルバモートの前で言っちゃ駄目なやつそれ!」
「いやいや、バルバモートは大丈夫。昔のヴォルデモートだったらまずかったかも知れないけどな」
「いやダメでしょ!? ハリーさんは強いから大丈夫かも知れませんけど私は無理ですからね!? バルバモートと殴り合いとか、あのゴリマッチョと殴り合いとか死にますよ!?」
「今、命の危機感じるか?」
「それはもうビンビンと……あれ?」
全然そんなことなかった。全く危ないと思えない。正確には、危ないとは思うけど危なくてもいいやと思ってしまう。なんで?
「ところで娘っ子。ハー子とロニー坊やはどうした?」
「ロンとハーマイオニーだったら多分ここは安全だから先に私が行って確認を───」
そうだ。この感覚は───!
「娘っ子は本当に聡いな」
ハリーさんの両目が私をじっと見つめる。それだけで私は呼吸ができなくなっていく。右の碧の瞳と、左の紫の瞳。二つが私の意識を引き付けて放さない。
「なぁ、娘っ子。ちょいと聞いてくれ」
ハリーさんに促されて、その場にすとんと座り込む。いつの間にかバルバモートもベラトリックスもルシウス・マルフォイも消えていて、ここには私とハリーさんしか存在しなくなっていた。
それに気付いていないわけがないのに、ハリーさんは何事もなかったかのように私だけを見て話しかける。
「実はな。俺は今回バルバモート側なんだ」
その言葉を聞いた途端、私の中で何かが壊れた。人間として失ってはいけない何か。心ではない。感情でもない。意思でもない。言葉にすることはできないけれど、確かに私の中にあったはずの何かが壊れ、砕け散った気がした。
大切なものだったような気がする。けれど、どうでもよかった気もする。ただ、ハリーさんの近くにいるためだけに大切だったような。
───ふと、バルバモートに視線を向ける。けれどバルバモートは私に視線すら向けずにいる。私を殺そうとしているはずなのに、今はまるで興味がないと言うのがすぐにわかる。道端に落ちていた石……と言うほどではない。なんと言うか、貴重ではあるけれど使い減りしないすでに持っている道具が店に並んでいるのを横目に見て通り過ぎるような、そんな感じだ。
なんでバルバモートが私にそんな目を向けるのか。理由はわからないけれど、私はバルバモートに敵として見られていないのは確実だ。
「まあそう言うわけだから、娘っ子。ちょっと俺のためにお前の人生をくれないか?」
「いいですよ?」
思っていたのとは大分違うけれど、ハリーさんに人生が欲しいと言われてしまったら私が断れるわけがない。どうせだったら結婚とかそういうのだったらもっとよかったんだけど、残念ながらそれはできなさそうだ。どうなるかはわからないけれど、私の命をハリーさんのために使えるんだったら悪くない。
「じゃ、ロニー坊やとハー子にこれを渡してくれや。それで大体全部が終わる」
「はい」
私に杖が向けられ、『服従の呪文』がかけられる。ただし、私自身の行動が抑えられるわけではなく、ハリーさんの意志を直接伝えられるようになるだけだ。
そして、やるべきことはただ一つ。ロンとハーマイオニーにハリーさんから渡された道具を渡すだけ。移動キーとでも言えば簡単に受け取ってくれるだろう。
「ああ、ちなみにホグワーツの方はもうやってある。娘っ子のそれは、ある意味最後の仕事って事になるな」
「あはは……じゃあ、頑張りますね、ハリーさん」
「おう、頑張れ」
『服従の呪文』による幸福感と、ハリーさんに撫でられる充足感。今の私にできないことなんてあんまりないと思えるほどの全能感に背を押され、ハリーさんにキスをした。
「じゃ、いってきます」
「……少し驚いた。おう、行ってこい」
ああ、私は幸せだ!世界の誰よりも、何よりも、私は幸せを感じている!
次回作は……?
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