ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 そう言えば、ルーピン先生とトンクスの結婚式が近いらしいけど、それについて私が話すことはなにも無い。

 結婚式で私が言うことなんて『おめでとう、末永くお幸せに』くらいしか無いし、あとは基本はご飯を食べているだけ。そんな私が結婚式に出たところで、何をしに来たんだと言う目で見られるのが関の山だろう。晴れの舞台なんて経験ないしね。

 ……いや、むしろ言う言葉は『末永く爆発しろ』かもしれないけど、とりあえず私の会話能力がそこまで落ちていないことに期待したい。じゃないと時々妙なことを口走る危険がある。

 

 さて、それはそれとして最近はまた物騒なことになってきている。新聞では毎日多くのマグルが殺されていることが報道され、そしてアズカバンからの集団脱走の話がリータ・スキーターによってあげつらうようにして書かれている。

 その他にも、色々な人が誘拐されていると言う話も載せられていた。殆どは私の知らない相手ではあったけれど、それでも中には何人か知り合いがいた。

 私の杖を作ったオリバンダー老だったり、ダイアゴン横丁の気のいいバーテンダーだったり……ヴォルデモートに有用だったり、あるいは私達に協力しそうな人が、少しずつ消えていっている。

 これで魔法省が完全に乗っ取られれば、新聞か何かで私を指名手配すればあっという間に私に対する包囲網は完成してしまう。詰みだね。

 

 その包囲網から抜け出すのは大変だろう。ハリーさんからは直接の協力は受けられないし、相手はヴォルデモートのお陰で死を恐れずに特攻してくる。死を恐れない無限の敵。そんなものを相手にするのはハリーさんでも難しいだろう。

 まあ、ハリーさんが本当にヴォルデモートが支配した世界全部と戦うことになったら、まずヴォルデモートを殺すことから始めるだろう。

 それからヴォルデモートの近くにいた幹部のような者を殺し、それらの死体を使って色々な工作をするに違いない。その方がハリーさんからしてみれば効率的で楽だろうし、必要以上に相手を害するのはハリーさんの好むところではないだろうから。

 

 ……それはそれとして、私は結婚式の準備を進めている。料理の下拵えや掃除、食器を磨いたり必要ないものを片付けたり、ウィーズリーおばさんが作っている料理を見て覚えてみたり、やれることは山のように積み重なっている。

 どうやらウィーズリーおばさんはウィーズリーおばさんで色々考えてはいるようだ。

 その結果としてやることが『私達を引き離して相談をさせない』って言うのが正しいのかどうかは置いておくとして……ね。

 

 まあそんなわけで、色々とやることはある。できることもある。やけに仕事を押し付けてくるから暇はないけれど、かわりにやりたいこともできやしない。やらなくちゃいけないことも、できないし。

 誕生日が来れば新しい魔法の練習もできるし、今まで習った魔法の復習もできる。ハリーさんのお陰で引き出しはとても多いし、ロンのお陰で分霊箱は破壊することができることがわかっている。

 あとは場所を見付けるだけなのだけれど、それもハリーさんのお陰でなんとかなっている。

 で、あとは私の誕生日を待って、野暮用を済ませてから出発するだけ。次の日に結婚式があるからそれに参加したあとは自由にしていいだろう。

 ……いつ襲われても大丈夫なように、着替えやら胃薬やら何やらが入った巾着袋を携帯しておこう。いったいいつ襲われてしまうかもわからないのだから、そのくらいの用心は必要な筈だ。

 ……でも、ハリーさんからもらったあの巾着袋って目立つんだよね。特にドレスとか着てる状態で持つと、明らかにそれだけ浮いてしまう。服の中に隠せればいいんだけれど、残念なことに私のドレスは身体の線が出るタイプで、何かをしまっておける場所なんてないんだよね。

 ……ハーマイオニーなら胸の谷間にでも隠せるのかもしれないけど、私はハーマイオニーとは違って胸も背も無いからそう言う真似はできないんだ。残念ながら。

 

 ……どうせ私の胸は残念ですよ。前も後ろも同じようにまっ平らで触ったときの感触の差が無さすぎて相手が触れてしまったことにも気づかないような残念さですよ。

 まあ、実際には触らせたことなんて殆ど無いけどね。触ろうとした相手はしっかりと叩いてきたし。

 

 まあどうでもいいや。あと二日で私は堂々と魔法が使えるようになるし、用意できるものも準備できる内容も大分増える。やれるだけやって、後悔しないように生きよう。私にできることなんて、精々そのくらいだしね。

 

 ……でも、ちょびっとだけ不安なことがある。

 もしもハリーさんが敵に回ってしまったら。なんらかの心変わりなどで、皆を殺しに来たりしたら……絶対に止められる人なんていない。絶望しかない状況だ。

 ハリーさんが世界の敵になったら、きっとハリーさんは全く手加減しないで全てを滅ぼすまで止まらないだろう。魔法族も非魔法族も、魔法生物も非魔法生物も、全部まとめて塵となる。

 ……それを知られたら、世界はハリーさんを排除しようとするか無理矢理に引き込もうとするかのどちらか。どちらにしろハリーさんが不機嫌になって世界終了のお知らせだ。

 バレるのが10年ほど遅ければ、私達の誰かが魔法省なりなんなりの高官となってそういった動きを牽制できたりもするのだろうけど、今バレたら私の想像はほぼ確実に現実となるだろう。

 大人には賢しい人が多いからね。自分の言い分が正しいと一度でも思い込むと、それが間違いだったと認めたがらない。明らかに間違いで、明らかに失策で、明らかに失敗であったとしても、それでも自分の考えたことを盲目的と言ってもいいほどに信じ込む。

 

 自分ほど信用できない存在なんて、この世にあるわけないのにね。いい歳してそんなことにも気づかない人間が、だいぶ多い。

 ……困るよね。そんな人ばっかりだとさ。

 

 正しいか正しくないかなんて、状況によって変わるに決まってる。戦争で敵を殺すのも道端で誰かを殺すのもやっていることは同じなのに正しいか正しくないかと言われれば変わってきてしまう。

 現状は戦争中。私達とヴォルデモートによる、戦争の真っ最中。勝てば生き、負ければ死んで敵として蘇る。その点、ダンブルドア先生は幸運だったかもしれない。実際に死んでしまった人の言葉を聞けない以上、生きている私達が何を言おうと関係無いけれど。

 

 ……あー、面倒。

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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