ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side ハリー

 

 やることは一つ。それ以外にはあり得ない。

 

 

 

 

 

 side エリー・ポッター

 

 ダンブルドア先生が亡くなり、騎士団のみんなは自分達が何をすればいいのかわからなくなってしまった。

 わかるのは、やるべきことではなくやってはいけないことだけ。

 ヴォルデモートを相手に、味方を疑ったり、仲間割れをしたりしてはいけない。

 マグル達だけでなく、多くの魔法使い達のためにも、ヴォルデモートに屈してはいけない。

 

 そんな当たり前のことしかわからないのに、いったいどうして私達は勝てるのか。勝つためには……正確には、勝てるようにするためにはいったい何をすればいいのか。私達には何もわからないまま、戦いへと向かって進む。

 

 ……こんな時にこそ、ハリーさんに頼ってしまう。何でも知っているような気がするハリーさん。知らないことだってあると言うけれど、私よりも……いや、誰よりも多くのことを知っている。

 その証拠に、私が壊さなければいけないものがどこにあるのか。そして、どうすれば壊すことができるのかを教えてくれた。普通の方法じゃ壊せない物を壊す方法を教えてくれた。

 だから、私はとりあえずハリーさんに話を聞いてみることにした。

 

「ハリーさん。私はこれからどうすればいいと思いますか?」

「バルバモートはとっくに魔法省を支配してるから魔法省は頼らない方がいいだろうな。あと、校長からの遺品を魔法省が不法に徴収して調べ回してるから、姿をくらますなら一月ほど待った方がいい。あれは必要なものだから。それから分霊箱を探して壊して回るべきだろう。既に三つ壊しているからあと三つだな」

 

 凄く具体的に話をしてくれた。でもやっぱり魔法省はバルバモートに支配されているんですね。予想はしてましたけど、頼れる相手が一気に減った。

 まあ、元々魔法省が頼れる相手だったかと聞かれると首を傾げるしかできないけれど、それでもあの数が敵に回ると言うのは正直きつい。ある限定された状況を除けばほとんどの場合において数は力だと言う。そして魔法省は限定された状況にない。

 ……辛いなぁ……。

 

「ハリーさん。分霊箱を持ってたりしないですか?」

「昔はいくつか持ってたが全部捨てちまったよ」

「持ってたんですか!?」

「ああ」

 

 なるほど、少し前に言っていた『持ってない』って言うのはそういうことか。確かに今は持ってはいない。

 

「どの辺りに捨てたか覚えてますか?」

「イグノタス・ペベレルの直系の子孫のうち、最後に死んだ奴の墓に放り込んでやったはずだが」

「それ捨てたんじゃなくてむしろしまっておいた感じじゃないですか!?」

「そうとも言うな」

 

 ハリーさんは自分のやったことの大きさを理解していないかのように言った。

 ……いや、もしかしたら本当に理解していないのかもしれない。ハリーさんにとっては、料理を作ることとヴォルデモートの分霊箱を得ることは事の大きさについて殆ど同じ程度にしか感じていないのかもしれない。

 ハリーさんはできることが多い。多すぎると言ってもいいほどに多い。できないことなんて何一つ無いと言ってしまえるほどだ。

 だから、常人には難しいことだったり、多くの人々が一致団結して対処したとしても解決できるかどうかと言う事でも、まるでちょっと邪魔な足元の小石を蹴ってどかすと言う程度の手間にしか感じないのかもしれない。

 

 ……今までのハリーさんの行動を考えると、それは十分にあり得る可能性だと言うのがまた恐ろしい。ダンブルドア先生がかなりの時間をかけても一つ二つしか見つけられなかった分霊箱を見つけ出し、そして既にいくつか破壊してしまっているわけだし、あり得ない話ではない。

 なんで手を貸してくれなかったかと言う点もそこに起因するんだろう。自分にとっては小指の先を少し曲げる程度の労力でできるのだから、他の誰かでも多少の労力を払えばできることだと本気で思っている節がある。

 実際にはそれが殆どの存在にとって不可能であろうが、ハリーさんがどう思うかで見てしまえば同じようなものなんだろう。実際にどうなのかは知らないけど。

 

 ……多分、私は今年は学校には来れないだろう。ホグワーツ特急なんて言う場所が簡単にわかってしまう物に乗って行くわけにはいかない。襲撃されたら一発で殺されてしまう。

 しかし他の物を使って行くわけにもいかないし、学校に行ってしまうと居場所が完全にバレてしまう。そんな状態で普通に生活ができるわけがない。

 ただでさえヴォルデモートはかなり大っぴらに動くようになっている。魔法省に襲撃をかけた件でもそうだし、ホグワーツを襲ってきた今回の件でもそうだ。私を殺しに来るときだって、大っぴらに来てもおかしくはない。

 ハリーさんが言う通り、ヴォルデモート達が魔法省を掌握しているとすれば、ヴォルデモート達はどう動こうと絶対に捕まることがない。そして万全のサポートを受けながら、じっくりと私を追い詰めていくことができる。

 

 ……なんだかこの状況って、凄く『詰み』に近い気がする。チェックメイトはされていないけど、チェックまではかかっていそうだ。ロンでも逆転できるかどうか……。

 

 とは言っても、こちらとあちらでは駒の強さが明らかに違う。

 下級とはいえ反則級の駒がたくさん居るこちらと、反則級は少ないものの反則級の中でもトップクラスの反則さを誇る駒が一つのあちら。ハリーさんをこちらに含めれば間違いなく封殺できる布陣ではあるけれど……そのハリーさんはあまりやる気無さそうに見える。

 ハリーさんは世界が滅ぼうがマグルが全員死に絶えようが関係無いと堂々と話していたし、自身がその標的にされたとしても振り払うだけの力を持っている。

 それに、ヴォルデモートは最近はあくまでマグルだけを狙いに定め、マグル生まれや半純血も等しく魔法使いとして扱うようになっている。

 こうなれば、今までは自分達が殺されるからとヴォルデモートに反抗していた勢力が一度に向こうに流れていきかねない。状況はまさに最悪に近い。

 唯一の救いは、まだ完全に勝負が決まってしまった訳ではないと言うこと。そして、挽回のチャンスはまだあると言うこと。

 私達が分霊箱を破壊していることは、まだ知られていないはず。だとすれば、全ての分霊箱を見つけ出して破壊し、そしてヴォルデモートに『死の呪文』を撃ち込むことができれば……決着はつく。

 

 ……『禁じられた呪文』を使うことを前提とする作戦なんて、あんまり立てたいものじゃないね。うん。

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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