ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 死。それは生命の終着点。生きている限り確実に訪れる、絶対の終焉。

 人は時にそれを恐れ、恐れるがゆえにそれを克服せんと多くの努力を繰り返したが、しかしその努力が報われたことがないと言うのは現在の状態を見れば一目瞭然であるはずだ。

 非常に高い魔力を持ち、その魔力によって自らの身体の老化を止め、長い時間を生きていくことができたとしても……死はそれを容易く越えて私達を連れていく。

 

「……残っているのは腕だけ……か」

 

 ハリーさんは落ちていた腕を拾い上げる。その手には黒い石の填まった指輪が握られ、けして渡さないと言うかのようにしっかりと握り締められていた。

 

「……分霊箱か。まあ、冥土の土産くらいにはなるだろう」

 

 ハリーさんはその指輪をぐしゃりと握り潰した。ダンブルドア先生でも壊せなかったその指輪は、ハリーさんの手によって無惨に砕かれた。

 ひらひらと手を振って指輪の破片を落とすと、今度は近くに落ちていた杖を拾い上げる。

 あれは、ダンブルドア先生が最後に使っていた杖のはず。それを指先でくるくると弄び、大きく穴の開けられた壁に向けて振る。

 するとあっという間に壁が元通りに埋まり、ぐちゃぐちゃになっていた校長室の中も最後に見た時と同じように整頓された。

 

「……敬語は苦手だから省かせてもらうが、誰かここで何が起きたのか説明してくれないか?」

 

 ハリーさんがそう言った相手は、校長室の壁に並んだいくつもの写真。それは確かホグワーツの歴代校長達の写真で、その全員の視線がハリーさんに注がれていた。

 

「『どうぞ』は常に役に立つ……」

「いいから(さえず)れ豚」

 

 その中の一人が何かを言った瞬間、ハリーさんの手がその声を発した一枚の絵に突き込まれ、そして額から無理矢理一人の男を引きずり出した。

 

「おら話せ」

「な……いったい何がぶろっしゅ!?」

 

 ハリーさんの拳が鼻を押し潰すように顔面にめり込んだ。あれは痛いね。鼻骨が折れたのかかなり激しく鼻血も出てるし、生身の人間ならあの勢いで頭を揺らされたらそれだけで脳震盪くらいは確実に起きてるだろうし、本当に平気なのかと。

 

「おら話せ」

「ひ、ひひゃまっ!わだひをだれだどぼるべるぐっ!?」

「いいから話せ」

「ご、この『げがればずずっ!?」

「わかった、話さなくていい。だが死ね今死ねすぐ死ねさあ死ね骨まで砕けて死にさらせ」

「ハリーさんの拳がついに音速を越え、数十数百の拳の壁となって名前もわからないフィニアなんとか・ナイジェラなんとかに突き刺さるー。拳の壁に、拳の波に、飲まれていくー(棒)」

『止めろよ!?』

「あ、今日はいい天気なので助けない方向で」

 

 そう言っている間にもハリーさんによってフィニアなんとか・ナイジェラなんとかの顔がどんどんと変形していく。『ざまあみさらせ』とか『無様だね』とかそんなことは考えてないし思ってもないけれど、とりあえず止めない。

 だって相手はハリーさん。ハリーさんが一度やると決めたことを、私がちょっと口を出したくらいで変えてくるとは思えない。だってハリーさんだし。

 

 そんなわけでハリーさんによって歴代校長の一人がいとも容易く挽き肉とも蛋白質とも言い難い赤とピンクと白の混じり合う肉塊になっていくのをじっくりと眺めていよう。

 

 ……できれば、これでほんの少しでも心が痛んでくれればいいんだけど……なんと言うか、ダンブルドア先生が死んだ証拠を見せられても何にも感じなかったんだし、見ず知らずの人がこうしてボロボロにされていても……ねぇ?

 正直に言って、どうでもいいとしか思えないんだよね。私ってこんなに冷たかったっけ? 昔はもう少しましだったと思うんだけど……。

 

 ……まあ、いいや。別に額の中身が血まみれの肉塊で埋まったところで私が困る訳じゃないし、どうせならしっかり話を聞きたかったところだし。

 

「ハリーさん」

「ん? どうした娘っ子。イエティと粉ダニの間の子でも見付けたか?」

「物理的に合の子にするの無理がありませんかねその組み合わせ」

「錬金術の応用で一度情報そのものとそれに附随する物質って所まで分解して魂レベルで融合させながら肉体を再構築すれば行ける」

「真面目に答えてほしい訳じゃなくてただのツッコミだったんですけど……ハリーさんが細かい内容を聞きたがるってことは、ハリーさんも全部知ってる訳じゃないって事ですか?」

「何を当たり前の事を言ってるんだよ。俺は別に全知全能って訳じゃないし、知らないことだってたくさんある。前からそう言ってただろう?」

 

 ……そういえば言われてたような気がする。確かに、ハリーさんにも知らないことはある……って言う風に言っていた。

 ただ、その後に私がした質問にすらすらと答え続けてたからハリーさんのよくやるジョークの一種だとばかり思っていた。

 

「知ってて聞いてるとかじゃなく?」

「全部を知ってる訳じゃないから多少の答え合わせをしようと思ってな」

 

 そう言いながらハリーさんは黒い手袋をはめた左手の指をフィニアなんとか・ナイジェラなんとかの頭に突き刺している。しかしフィニアなんとか・ナイジェラなんとかの頭には傷が見えないことから、あの手袋は特殊なマジックアイテムの一種なんだろうと推察する。

 そしてさっきまでのハリーさんの言動と今やっていることから合わせて考えると……あの手袋で脳味噌から直接記憶を読み取っている?

 

「娘っ子、大体正解。自作の世界に一つしかないアイテムでな。使うと相手に発狂する程度の痛みを与えるが記憶を読み取ることができる優れものだ」

「発狂するって……不味くないですかそれ」

「直せる」

「人の精神にそんなに簡単に干渉しちゃっていいんですか?」

「法では裁けない」

「限りなく黒に近いグレーですかそうですか」

 

 ああもうハリーさんってば本当に外道。いったいどうしてこんな風に育っちゃったんだろう? 親の教育云々の問題じゃないだろうし……原因はいったいなに?

 

「魂じゃないか? どうでもいいが。……よし、記憶の吸出し終わり。ご協力ありがとうございましやがれ……と」

 

 ハリーさんはそう言ってフィニアなんとか・ナイジェラなんとかを無理矢理に元居た額縁の中に押し戻した。

 ……うん、常識外れ極まりないね。ハリーさんだから常識外れなのが普通だって言っちゃえば終わりだけど。

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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