ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
クィディッチの練習は、まあそこそこ上手くいっている。なにしろ一度ハリーさんに叩き潰されても折れなかったチームなので、全体的に非常に打たれ強いのだ。
どれだけ点差をつけられても諦めないし、相手の動きが自分より優れていればその部分を吸収しようと必死に観察して練習を繰り返し、最後には身に付けてしまう。
まあ、不屈のチームと言うのはいいことだよね。うん。マルフォイ率いるスリザリン・チーム程ではないけれど、あれはあれで比較対照にしちゃいけないものの一つなので何事もなかったと言うことにしておく。
打たれ強いマルフォイ率いるスリザリン・チームは、全員が日課としてフォフォフォフォイ体操をしているそうだ。ブラッジャーが直撃しても吹き飛ばされるだけで痛くもなんともなさそうだ。ブラッジャー涙目だね。ブラッジャーに目は無いし、涙なんて流れるわけがないけど。
日本のアニメだったらああいったものがいつの間にか意思を持って選手たちの強化に合わせてパワーアップするんだけど、ハリーさんが手を出したお陰で既にある程度の強化がされちゃってるからなぁ……。
まあ、それも割と昔の話だから、マルフォイの防御力が当時より大分上がった今となっては大して痛くないんだけど。
……なんだかこんな話をしていると本当に何か予想外の事態が起きてしまいそうな気がするけど、みんなだったらきっと大丈夫。
まあ、流石に『突然ブラッジャーが更に強化されて赤く染まると三倍速くうごくようになる』とか、『金のスニッチが周りの景色に溶け込むようにステルス機能が追加されてる』とか、『突然フィールドが岩山や海に変わって邪魔される』とかそんなことが起こらなければ大丈夫だろう。
まあ、そんなこと起きるわけないよね。普通に考えてそんなことが起きるなんてあり得ないよ。
「……ねえ、エリー。それはフラグを建築しているようにしか聞こえないんだけど……」
「奇遇だね。自分から言っておいてなんだけど私もそういう風に聞こえるよ」
うん、なんと言うか本当にそれが起きそうな気がする。正直、スニッチがステルス能力持ちとか捕まえられる自信がないし、三倍速で飛び回るブラッジャーとか危なすぎる。元々の速度ですら骨折とか余裕なのに、三倍になったら……。
「……貫通?」
「……爆散?」
「……粉砕?」
「「「どれだろうね?」」」
三人で顔を見合わせて呟くけれど、答えは出ない。実際に受けてみればわかるんだろうけど、あんなものの直撃を食らったらそれこそ死亡確定だ。私はまだ死にたくない。
マルフォイだったら大丈夫そうな気もするけど、とりあえず私に無理なことは間違いない。まともな人間が受けて平気な威力じゃないよね絶対。
「……マルフォイってずっとシーカーだけど、どちらかと言うとシーカーよりもキーパーの方が合ってるよね?」
「……ああ、確かに……」
「ウッド程の適正はないけど、あの頑丈さは売りになるよね。いくらブラッジャーを受けても体勢を崩すことすらなくちゃんと動けるって言うのはアドバンテージとしては凄く大きいし」
「エリーの世界最速と世界最巧を併せ持つ箒だって凄く大きなアドバンテージなんだけどね」
「それはわかるんだけど、やっぱり私は頑丈さも欲しかったんだよね……」
「エリーって回避専門だしな」
「マグルのゲームで言えばシーフってところかしら? ……あ、でも点を取ることができたら大量の得点が入って試合が終わるんだったら、シーフよりもアサシンの方が適切かしら?」
「あ……アサシンはちょっと……」
「でもやってることはアサシンだよな。確かに」
「……それは私も認めるけどさ……だからってシーカー=アサシンって言うのはちょっと言い過ぎだと思うんだ。クラムなんかはアサシンって言うよりは戦士とかランサーとかそっち系な感じだし……」
「でもエリーはアサシンだろ」
それについての否定はしないでおくけれど、全てのシーカーがアサシンだとは思わないでほしいんだ。
私みたいに小さいからスピード系のシーカーになるしかなかった人もいるし、身体が大きいからパワー系のシーカーをやってる人もいる。飛ぶのが上手く、相手の進路上に割り込んで邪魔をしたり罠にかけたりする技巧派シーカーだっているんだから。
「スピードが速くて若干器用……(ドラ○エの)盗賊ね」
「力が強めでスピードもそこそこ……(ド○クエの)盗賊かしら」
「技巧派で罠とかを使う……(ドラク○の)盗賊だよな」
「「「つまりシーカーはみんなシーフ」」」
「なに? 三人とも打ち合わせでもしてたの? 私だけ仲間外れなの? 泣くよ?」
まあ、私が泣いたからってどうなるわけでもないけどさ。
まあ、とにかくもうすぐ試合の時間。いい天気だし調子もバッチリ。朝御飯はハリーさんに頼んで色々作ってもらって食べたし、ネビュラスも持った。着替えはこの後だからいいとして、必要な物と言えば……そう、集中することが必要だ。
試合に集中する。私の仕事はスニッチを掴むこと。点数なんて関係なしに、全速力で最速で、相手よりも確実に速く掴まなければいけない。
今回は一回戦。とりあえず最速で掴んでしまえばいいんだから、これほど楽な状況はあまりない。一年に一回だけある、なにも考えずにスニッチを取ってしまえばいいだけの試合。私はそういう試合の方が好きだ。なにしろ、自由だからね。
空を飛ぶのは好きだ。何となくだけれど、私が何者にも縛られない存在になったと錯覚させてくれるから。
空を飛ぶのが好きだ。いつも外に出たら苛められていた私でも、空を飛んでしまえば苛められることがないからだ。
痛いことが嫌いだ。嫌いだから私は痛みから逃げた。逃げたから私は痛みを含めた刺激に鈍く、刺激に鈍いからこうして自分を鍛えるための努力を『苦しい』とは感じない。
どうやっているのかはわからないけれど、多分私の身体のどこかで神経の反応が鈍くなっているんだろう。
魔法的な効果で鈍くなっているのか、それとも魔法を使った結果として神経の反応が鈍くなっているのかはわからないけれど、とりあえずそれはどうでもいいや。
マダム・ポンフリーに診てもらったこともあるけれど、いったい何がどうして私の身体から痛みが無くなっていっているのかはわからないそうだし、どうにかできそうにない。
もしかしたら、こうなり始めた最初の頃ならまだ
……まあ、いいや。今日も頑張ろう。空が私を待ってるよ。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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