ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
スラグホーンはどうやら本当に私の事を手に入れたくて仕方がないらしい。こう言うとなんだか邪推してきそうな人が出てくるような気がするけど、実際スネイプ先生にお願いして罰則と言う名前の個人授業を受けさせてもらっていなかったらまた面倒なことになっていたと思う。
……けれど、いつまでもこうして逃げ続けるわけにもいかないし、いつかは決着をつけないといけない。それがいつになるかはわからないけれど、必要なことであると言うことは確定的に明らかだ。
……だけど、今はそれよりももっとやらなければいけないことがある。マルフォイがそろそろ一回か二回くらい動かなければ色々と怪しまれると言うので、すぐにわかるようなことでダンブルドア先生の命を狙いに行くと言ったのだ。
ただ、マルフォイはそれを私からダンブルドア先生に伝えておいてほしいと言う話もしたので本気で殺す気は欠片も無いようだけれど……いったいどうするつもりなんだろう?
「『夜の闇』横丁に呪いの首飾りがある。買い叩いて適当に誰かに持たせてダンブルドア先生に渡しに行かせるから、グレンジャーとウィーズリーはそれを止めてくれ」
「ここでお前を殴って止めるのは……」
「無しだ。それをやったら僕の父上は間違いなく暗黒大帝に殺されてしまう。僕は父上を守りたい。道がとっくに別れてしまった父上だけど、それでも父上は僕の父上だからね」
……マルフォイが何か良いことを言っている。マルフォイは家族思いなんだね。その感情はあんまり理解できないけどさ。
「……だけど、使うものは『しっかりと殺すという意図がわかるもの』じゃなくちゃならない。それだけ危険なものを使うわけだから、触れただけでも相当の影響がある筈だから……絶対に直接さわるのは駄目だ。ハンカチでもタオルでもマントでもなんでもいいから、何かを間に入れて触るんだ。死ぬよ」
危険なものを使うけれど、やり方をお粗末なものにすることで被害を出さないようにする。ホグワーツ全体のことは信用できないから、自分にとって信用あるいは信頼できる相手にのみこの話をして協力してもらう。
こうしてマルフォイが活動している間はマルフォイのお父さんは大丈夫らしいし、バルバモートに気付かれないようにかつ本当に殺してしまわないように気を付けつつ向こうの事を知ろうとしているらしい。
「次に会う時にバルバモートに首だけ運ばれてきて『感動の再会だな? どうした、お前達はこれと友だったのだろう? 笑えばいいではないか』……とか言われるような事態にはならないようにしてね」
「この話を聞いた感想で即座にそんなんが出てくるとか、エリーはいったいどれだけ悲観的な想像をしてるんだよ!?」
「物事をいい方向に捉えるのは得意だけど、悪い方に捉える方が得意なんだよね。基本的に根暗だから」
「エリーが根暗とか無いから。根暗じゃなくて常識がかなり歪んでるだけだって」
「そうよ。聞く限りでは随分酷い生活を続けてきたみたいだし、常識を構成する大切な時期にちゃんと愛情を受けてなかったから常識がおかしくなっちゃってるだけよ」
「……そうかもね。私、相手にもよるけど痛いの好きだし」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
ちょっとカミングアウトしてみたら、その場に居た私以外の五人が絶句した。私だって突然ロンが『ハーマイオニーに殴られるのがだんだん気持ちよくなってきたんだ』とか言ってきたらドン引きするだろうから別にいいけどさ。
でも、ここでそんな発言をしたら色々と場が混沌としてしまうし、ここは軽く流しておくのが一番だ。
「私って、よく叩かれてたのね? だからか基本的に身体の感覚が鈍めでさ。痛いかどうかはともかくとして、叩くくらいに強くないと触られてるってわからないことがよくあるんだよね」
「そう言う地雷な事とかは先に言っておいてくれないかな? なんと言うか、やっちゃった感がものすごいんだよ。ほんとに」
「事実なんだからしかたない。実際ちょっとほっぺをつねられたくらいじゃ喋ろうとするまでわからないことが殆どだし」
「……それって結構致命的なんじゃ……」
「刺激に鈍いだけでわからないわけじゃないし、痛いのには結構鈍いけど熱いのとか冷たいのとか身体の調子の良し悪しには割と鋭い方だから大丈夫だと思うけど」
「……だからエリーって辛いものとか好きなの?」
「かもしれないね。ちゃんと他の味もわかるから本当にそうなのかって聞かれるとちょっと怪しいけど」
私は軽くそう答えるけれど、やはり何故か空気は重いまま。こんな時こそ爆弾を落として固まった空気を消し飛ばしてしまうのが一番だ。
そんなわけで一つ落としてみようと思う。
「そう言えば、ハーマイオニーって毎日抱き枕を抱き締めて寝てるけど、なんで時々ロンやドラコの名前を呼んでるの?」
「身に覚えがないわね」
「そう言う割には表情がひきつってるように見えるけど?」
「気のせいよ」
「ハーマイオニー。嘘をつく時に無表情になるって言うのは『何かを隠してる』って言ってるのと変わりないからね? いつでも無表情の人が無表情のまま嘘をつくならともかく、いつもは無表情じゃないのに無表情を作って内心を隠すって言うのは不自然極まりないからやめた方がいいよ?」
「……覚えておくわ」
「ちなみにハリーさんの場合は大概目を閉じているから嘘をつく時に『開心術』の妨害として目を閉じてるのかそうでないのかわからないんだよね。嘘だとしても目は合わせられないから『開心術』で探りも入れられないし、もう詰んでるよね」
「何の話をしてるのよ」
ハーマイオニーは呆れたように溜め息をつく。どうやら凍った空気は大分解凍してきたようだ。
……東の国に居ると言う仙人と言う存在は、霞を食べて生きているらしい。つまり、霞を食べると言うことはごく少量の水と水滴の核となった小さな小さな塵を食べているわけだ。
だったら凍った空気も食べられないことは無いだろうし、いつか出会うことがあったら凍った空気を使ったかき氷とかシャーベットでも作って食べさせてみたいと思う。
空気味って……絶対なんの味もしないよね。なんと言っても元がただの空気だもの。
あ、でもそれにハーマイオニーの吐息が混じっていたらロンやマルフォイが財布を片手に並んで買うかもね。
あぁ、無駄な想像って楽しい。なんでこんなに楽しいんだろうね? 何の意味も無いのにさ。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き