ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
さて、何故かはよくわからないけれど、汽車の中で私はマルフォイからの報告をいつもの面子で受けていた。
ハリーさんを筆頭として、私、ロン、ハーマイオニーの四人と、マルフォイ側のマルフォイ、クラッブ、ゴイルの三人を合わせた計七人だ。
「僕は父上に言われて『死喰い人』となった。左腕にその証拠の『闇の印』がある。
けど、僕はちょうどいいからあっちに従うふりをして情報を集めようと思う。……クラッブとゴイルも一緒にだ」
マルフォイはキリッとした表情でそう言った。ハーマイオニーの前だから格好をつけたいと思っているのかどうかは知らないけれど、とりあえず格好いいとは思う。
でも、多分マルフォイはバルバモートに色々な命令を受けているんだろう。例えば、ホグワーツ内を探索して情報をバルバモートに流したりとか、ダンブルドア先生を暗殺したりとか、そんな感じの事を。
「……で、実際のところどんな命令を受けてるの?」
「……聞きにくいことを平気で聞いてくるね、ポッター」
「情報が無いと頭は回せないからね」
「情報だけでいいのか。だったら折角作った所だがこのパスタは俺が責任をもって全て消費して」
「頭に回す栄養も必要ですよねっ♪」
「速いっ!? 全く動きが見えなかったのにいつの間にかエリーの手元にパスタが皿ごと移動したよ!?」
「ハリーはハリーで異常だし、ハリーにそれなりに付き合いがある私達ですらなんだか奇妙なことができるようになっちゃってるんだし、私達より大分ハリーに近い立ち位置にいるエリーがこのくらいのことできないとは思えないしね」
トマトソースにチーズが入っただけというとてもシンプルなパスタソースを、少しだけ細めのパスタに絡めたもの。とても簡単で、それだけに作った人の腕が出る料理。シンプルな料理とはそういうものだ。
ただ、ハリーさんの場合はどんなものでも非常に美味しく出来上がる。ハリーさん自身の料理の腕が凄まじいと言うことと、なぜかいつでも温かな状態で料理が出されていると言うことも大きいだろう。
いつも材料をどこから出しているのかとか、いつの間に作っていてどこにしまってあるのかとか、そういう疑問を最初は持っていたけれど……ハリーさんと一緒にいる間にだんだんとどうでもよくなってきてしまった。
……今はそれよりもパスタを食べよう。冷めたり伸びたりしたらあんまり美味しくなさそうだし。
ハリーさんから渡されたフォークにパスタを絡めて一口。
…………え、なにこれ美味しい。ソースに使われているトマトの味が凄い。それからチーズも、今までに食べたことがないくらいに美味しい。
「庭で育ったトマトを潰して裏漉しして煮込んだスープにニンニクを刻んで軽く炒めたものを加えた。ついでに少々肉とハーブが入っているから腹持ちはいいし香りも悪くないはずだ。
チーズも自家製だな。うちの庭に放し飼いにされているとある動物の乳をチーズに仕立てた。作りたてだから味に深みはないが、その方が作りたてで新鮮なソースには合うだろうと考えて使わせてもらった。
パスタ自体は大した物じゃない。適当に庭に自生していた小麦を挽いて粉にしたものを捏ねて茹でただけの物だ。ちなみに、さっき言ったニンニクやら肉やらも庭や庭の動物から取ったものだ」
「完全に自家製って……しかもパスタを小麦を挽くところからって……」
「材料の採取も俺がやった。原料から精製が必要ならそれもやったし、ついでに程よく雑味の混じった水は庭の湖の水に少し手を加えたものを使っている」
「本当に全部自分で作ってるのね……」
ハーマイオニーがちょっと絶句するのもわかる。流石はハリーさんやることがおかしい。普通は手作りって言ったって材料は買ってくるだろうに、ハリーさんの場合は何でもないことであるかのように材料から作っちゃうとか……結婚してください。
「ふぇっほんふぃへくわふぁい」
「食うか喋るかどっちかにしろ。せめて一度口の中のものをなくしてから喋れ」
「……(もぎゅもぎゅ……ごっくん。ぱくっ!)……ふぇっほんふぃへくわふぁい」
「なんで一回空にしたのにもう一回埋めてから話し始めるのよ!?」
「ふぉこひごはんわあふかあ」
「ああもう何が言いたいのかわかっちゃうのが嫌!」
ハーマイオニーが頭を抱えてしまったけれど、いったいどうしてそんな風になっているんだろう? 頭を抱えなくちゃいけない理由なんて無いと思うんだけど……私にはわからないだけで無い訳じゃないのかな? 知らないけど。
とりあえずパスタが美味しい。泣きたくなるほどにパスタが美味しい。トマトとチーズの組み合わせは至高の一つだと思うんだ。いやいや本当に。
……今年から拡大してやるらしいDA集会で、その辺りの物も教えてくれたりしないかな? 教えてくれたら凄く嬉しいんだけど……。サバイバル的な感じで自力でその辺りにあるものだけを使って自分なりの料理を作る訓練とか、この物騒な世の中の事を考えるとやっておいた方が絶対いいと思うんだよね。
「その場合は家の庭に出向した上でそんなに危なくない場所に個別に放置しておくぞ」
「そんなに……なんですか?」
「家の庭はおよそあらゆる死に方ができるからな。溺死、轢死、圧死、爆死、焼死、縊死、失血死、その他諸々のまともな人間に想像できる限りのありとあらゆる死に方くらいはできるからお勧めしないがな」
「私もそれは流石に嫌ですかね」
「……まあ、料理の基礎の基礎だけなら教えられるぞ? 昔に教えた相手は20年かけても覚えられなかったどころかますます酷くなっていく一方だったが。どうやれば一般的な辛口カレーを作る材料から
「どんな人ですかそれ」
にっこりと笑顔を浮かべたハリーさんは、なにも答えずに私に向けていた右目を閉じた。
「……まあ、どうしても習いたいって言うなら考えとくよ。考えるだけだから実際にやるかどうかはわからんが」
「ありがとうございます」
ハリーさんはそれだけ呟いたかと思うとすぐに寝息をたて始めた。この状態でも話だけは聞いているので、とりあえず必要な話はしておけば大丈夫。
……よし、今年も頑張ろうかな。色々と。何を頑張るかはまだ決めてないけど……そうだね、とりあえず生きていくことを頑張ってみようかな。
バルバモートが私の命を狙っていることを理解してしまった今となっては、たったそれだけの事でも十分に目標と言えるものになるだろうしね。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き