ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 アンブリッジがホグワーツから追い出されてすぐのこと。いったい何があったのかはわからないけれど、突然ファッジが魔法省大臣の職を退くことになった。いったい何がどうしてそうなったのかは知らないけれど、多分バルバモートが関わっているんじゃないかと思う。

 そう思う理由は凄く簡単。またリ痛が魔法省の内部で起きた出来事を赤裸々に記事にしてくれたからだ。

 なんでも、バルバモートとバルバモートに仕える忠実な部下である『死喰い人』達が堂々と正面から侵入し、立ちはだかる人間を容赦なく殺害し、魔法省が保管していた沢山の闇の魔術の物品や特殊で貴重な道具をみんなかっさらっていってしまったらしい。

 その事は流石の魔法省であっても隠し通すことなどできず、ついにバルバモートの事が魔法界に周知されることとなった。

 

 なお、ずっと白痴状態のアンブリッジはその時に殺害され、騎士団のメンバーも多数殺された。そんな中でファッジがなんとか助かったのは、ダンブルドア先生が緊急事態だと言うことで魔法省に押し入って無理矢理救い出したからだそうだ。

 そこでバルバモートは、殺すことは部下に任せて自分に必要なものを様々な場所から持っていくことにしたらしく、あっという間にいろいろなものがなくなっていったそうだ。

『逆転時計』を作るために必要な時の砂。闇の検知器を作る器具に、貴重な薬品。世の中に数個しか存在しないと言われるようなものを、それこそ片端から奪われてしまったそうだ。

 そして一番の致命傷はと言うと、『煙突飛行ネットワーク』のマスターキーを奪われ、いつ、誰が、どこからどこに飛んだのかがバルバモートにすぐに伝わってしまうようになった事だろう。

 マスターキーを奪われた弊害はそれだけではなく、バルバモートが自分達しか使えない独自のネットワークを新しく作成し、それを自由に使うことができると言うことだ。これは非常に痛い。

 さらに言ってしまえば、その時に魔法省に勤めていた殆どの人間が一度は『失神』させられていると言うこともまた頭痛の種となっている。何故バルバモート達が『死の呪文』ではなく『失神呪文』を使ったのかはわからないが、恐らくかなりの人間が失神している間に『服従の呪文』の支配下に措かれたものと考えられる。

 ……まさかまさか、こんな風に真正面からの力業と搦め手を同時に使ってくるとは思わなかった。使ってきたとしてもどちらか片方、多分搦め手の方を使ってくるだろうと予想したのだけれど、残念なことに今回はバルバモート達の完全勝利と言ってしまってもいいだろう。

 ……何が困るかと言えば、気絶していた人だけではなく気絶していない人の中にも『死喰い人』が居るかもしれないし、気絶している人が『服従の呪文』の影響下にあるかどうかもわからないと言うところだ。これでは、私達は誰を信じてよくて誰を信じてはいけないのかを理解することができない。ダンブルドア先生が魔法省に行っていなければ、全員に『服従の呪文』と『忘却呪文』をかけて裏から魔法省の機能の旨い部分だけを使ってきていたかもしれないからそれに比べればまだましなんだろうけれど……。

 

 ……と、それはそれとして、結果的に教育令の大半が無効となったのでDA会合を一度解散し、新しく『DA』……ダンブルドア軍団として再結成した。『フォフォフォフォイ体操クラブ』と言うのはアンブリッジをごまかすための名前として遊び心と言うかふざけて付けた名前だったので、名前を変えることに関しては一切の文句は出なかった。

 そしてその存在を大々的に宣伝してみたところ、結構な人数が参加を表明してきたのは言うまでもないことだと思う。

 一般的には、バルバモートの名前は未だに広がっていない。かわりに以前に使っていた『ヴォルデモート』という名前がまだ使われている。そっちの方が分かりやすいだろうし、いきなりバルバモートとか言われても普通はわからないだろうし、当たり前と言えば当たり前のことだよね。

 

 そんな最悪に近い大失態をしてしまった魔法省の大臣だったファッジは、責任を取って辞職することに。権力者はこう言う時に責任を取るために普段に色々なことが許されている訳なんだし、妥当な判断だよね。

 だけど、これでバルバモートと本格的に争うとなった時には魔法省からの救援は期待できなくなった。むしろ、魔法省は私達に敵対的な行動を取ってくるようになるかもしれない。どこに敵が居るのかわからないという状態は、精神衛生的に非常によくない。

 だからこそ、結束することが必要だとダンブルドア先生は言うけれど……私は今の魔法省と結束した行動をとれるとはどうしても思えないんだよね。残念だけど。

 正直、ハリーさんの事をあまり知らずに侮っている人を相手に同じ意思をもって同じ敵と戦うと言うのは凄く難しいと思う。そもそもの基礎的な意識が違ってしまっているのに同じ事を同じように捉えることができるんだったら、意見の食い違いや宗派の違いによる争いなんて起きなくなると思うんだよね。

 でも実際には起きちゃってるんだし、そんな上手い話があるわけもない。残念だけど、それは間違いなく事実の一つなんだよね。残念だけど。

 

 まあとにかく、間違いなく味方だと言い切れる相手がかなり減少したことは間違いない。ダンブルドア先生がバルバモートを追い返したと言うことになっているけれど、以前バルバモートがホグワーツに侵入してきた時にはバルバモートに手も足も出なかったと言う話を聞いたことがあるし、もしかしたらダンブルドア先生はバルバモートに負けたけれど『服従の呪文』と『忘却術』の合わせ技で敗北したことも『服従の呪文』にかけられていることも忘れさせられている可能性だってある。

 あまり考えたくはないけれど、もしも本当にそんなことになっているのであれば間違いなくこちら側の状況は最悪だろう。自分達を率いる人が相手のトップの言いなりになっているなんて、冗談としても笑えない。

 

 ……ああ、だから昔、ヴォルデモート達が大きく活動していた頃に『ヴォルデモート』という名前すらも恐れるほどの恐怖が蔓延していたのか。やっと、魔法使い達の気持ちがわかったような気がするよ。確かにそれは、怖い。人間として一番怖いのは、自分が何も知らないと知った時だ。周りの人の事を知っていると思っていたのに、原因が『服従の呪文』だろうがなんだろうが信用していた相手から攻撃される。しかも、それがいつ起きるのかもわからない。確かにそれは非常に怖い。

 ……でも、私はそんな怖い相手に立ち向かっていかなくちゃならない。ダンブルドア先生から聞いた『予言』の話が本当ならば、私は……ヴォルデモートを殺せる可能性のある唯一の存在なのだから。

 

 ……うん、頑張ろう。皆に協力してもらって、ヴォルデモートを打ち倒さなくちゃ。

 

 その前に、試験をやっつけなくちゃいけないんだけどね。アンブリッジの授業の数千倍は有意義な……あ、駄目だ。マイナスに大きな数字を掛け合わせたらさらにマイナスが大きくなっちゃう。だったら……-数千倍は有意義な時間になってくれそうだ……と。これでいいかな。

 

 

 

 

 

 




 
最後まで実に平和に終わった五巻でした。
次はちょっと特殊な回になります。

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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