ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 魔法省の大臣であるコーネリウス・ファッジ。その高等補佐官をしているドローレス・アンブリッジ。ファッジの方は知らないけれど、アンブリッジの方はどうやら年貢の納め時が来たようだ。

 ハリーさんが最後にかけた二つの呪い。『ゲシュタルト崩壊を起こしやすくなる呪い』と『ゲシュタルト崩壊が治りにくくなる呪い』の二つによって、アンブリッジは殆ど廃人と同じような状態になってしまったのだ。

 まず、ゲシュタルト崩壊とは、同じ文字を何度も何度も読み返しているとその文字がどんな意味を持っていたのか、どんな読みなのかを忘れてしまい、理解できなくなってしまう現象のことを言う。

 それを起こしやすくすると言うのは大したことがないようにも思えるけれど、実際には凄まじいことだったりする。

 なぜならば……ゲシュタルト崩壊は、視覚だけで起こるものではないからだ。嗅覚でも味覚でも聴覚でも触覚でも起きてしまう現象で、実際の原因は人間の脳の局所が頻繁に使用されることでその部位に溜め込まれている化学物質が一時的に枯渇してしまうためにその部位の情報が取れなくなってしまうことだと言われている。

 

 さて、ここからが本題となるわけなのだけれど……もしも全身のありとあらゆる感覚に全く同時にゲシュタルト崩壊が起きてしまったならば、いったいどうなるのか。

 

 まず始めに、視界に映る全ての物から『意味』を読むことができなくなってしまう。視界には入っているのに、その映像が見えているのに、それでも意味がわからないとなればそれはもう盲目であることとなにも変わらない。可視の盲目と言うのもなんだかおかしいような気もするけれど、やっぱりこれが一番正しいような気がする。

 それから聴覚。視覚と同じように音を聞くことはできるのだけれど、その音がいったいどういう物かはわからなくなる。音がただの音なのか、それとも誰かの声なのか。どんな意味があってどこから出ているのか。それらが全てわからなくなってしまう。

 そして触覚にゲシュタルト崩壊が起きれば、全ての接触が感知不可能になってしまう。どれだけ触られてもわからないし、どれだけ触られなくてもわからない。いったいどんな気持ちになるんだろうか?

 同じように、味覚に起きれば味がわからなくなって全ての食事で砂を噛んでいるような気分が味わえるようになるだろうし、嗅覚で起きれば臭いがわからなくなる。正確には、臭ってはいるけれど臭っていると理解することができなくなってしまう。

 身体を動かす筋肉を支配する部位でそれが起きれば身体の動かし方を忘れ、いつしかあらゆる感覚が鈍くなり、薄れ行き……

 

 心臓を動かすことも呼吸することも忘れ、死を迎えることとなる。

 

「まあ、そうなる前に一応魔法省に連絡だけはいれてあるから大丈夫だろ。こんな普通の15歳が使った呪いなんて大人とか本職にかかれば至極簡単に解除できるに決まっているじゃないか常識的に考えればわかることだろいったい何を考えているんだ非常識な奴め」

「……ハリーさんに『非常識な奴』って言われた。この中でと言うか世界で一番非常識だろうハリーさんに『非常識な奴』って言われた。なんだかすごくショック」

「だが俺は間違ったことは言っていない。普通に考えて15の子供がかけた呪いは大人や本職なら簡単に解除できて当たり前だし、大半の奴に聞けばそうだと答えるだろうしな」

「注釈で『ハリーは除く』ってつけていいならその通りね」

「俺は実は中身は15じゃないから最初っからノーカンだが?」

「じゃあ普通ね」

「一応言っておくと、お前らのかける呪いは割と凶化版だから本職の中でもトップクラスの奴じゃないと解除どころか呪文に干渉されて被害者が増えることになりかねないが?」

「 」

 

 ハーマイオニーがハリーさんの言葉に絶句する。まあ確かに、ハリーさんの作った呪文とかもかなり沢山使っていたわけだし、そんなふうになってしまってもおかしくはないんだろうけど……でも、自分達が自分の言った『普通』の中に入らないと言われてしまうのはちょっとショックだよね。自分が言ったことで、自分自身で否定しようにもできないって言うところが特に。

 

「そっか……私はもう普通じゃなかったのね……」

「『ホグワーツ十怪人』の筆頭として名を連ねているのにいったい何を当たり前のことを言っ」

 

 ゴギャンッ!と派手な音を立ててマルフォイの首が上下逆になった。あれって間違いなく痛いとかそう言うレベルの問題じゃないよね。死んじゃうよねあれ。首が上下逆とか、死んでない方があり得ないよね?

 

「ぅ……」

「マルフォイ!大丈夫かマルフォイ!しっかりするフォイ!」

「……ウィー、ズリー……僕は……もう駄目だ……」

「何言ってるんだよ!僕は信じないぞ!どうせ暫くしたら首をちょっとぐらぐらさせながら『あー、死ぬかと思ったフォイ』とか言って立ち上がるに決まってる!そうなんだろ!? なあ、そうなんだろマルフォイ!」

「……え、何でわかったの?」

「フタエノキワミアッー!」

「ヘブゥッ!?」

 

 ……どうやら大丈夫みたいだね。アホみたいに高い防御力とHPによって即死を防ぎ、普段から恒常的に行われている自動回復によって窮地を脱し、ロンに触れたことで発動したHP吸収で回復を加速させて生き延びていた。

 ちなみにロンがマルフォイを殴った理由には、吸収された分のHPを回復すると言う目的があったのは間違いない。マルフォイのHP吸収によるHP回復って相手の体力の最大値から吸収した分のHPの割合を出して自分のHPを同じ割合だけ回復すると言う方式なので……まあ、HPの値が非常に高いマルフォイならば相手から減らした分以上の体力を平然と回復して見せる。

 ちなみにロンの回復は与えたダメージの数値から計算するので、この二人が殴り合っていると気が付けば二人ともHPが全快していると言う不思議な状態になったりする。びっくりだよね。

 ……まあ、実際にあれで生きているって言うところでもう人間じゃないけどさ。あれは人外。はっきりわかる。

 そうは言っても、実質的にはこの場にいるほとんどの人間が人外に一歩踏み込んだ位置に居るんだけれど……知らないふりをしておこう。ショックを受けそうな人が何人か居るし、そうでなくてもハーマイオニーが傷心中なんだから傷口に唐辛子と山葵の粉末を混ぜ合わせてマスタードで溶いて塩で味をつけた物を刷り込むような真似は控えるべきだろう。

 そう言うわけで、それは次の機会にしよう。いつでも用意はしてあるしね。

 

 ……ああ、アンブリッジの不幸でご飯がおいしい。今日も元気にOWL試験のための勉強ができそうだ。

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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