ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side エリー・ポッター

 

ホグワーツ特急に乗り、ホグワーツに向かう。それまでには色々な問題があったけれど、どうにかホグワーツに行くための汽車に乗ることができた。

9と3/4番線が見付からなかったときにはどうしようかと思ったけれど、近くにいた親切な魔法使いの人に教えてもらってやっと汽車を見つけ、それから発車する前にどこかに座れる場所を探す。

ほとんどのコンパートメントは埋まっていたけれど、最後尾の方になってようやく開いている場所を見つけた。そこには一人先客が居たが、顔も体格もローブと帽子で隠していて見ることができなかった。

 

「あの……ここ、空いていますか……?」

 

私がそう問いかけると、急にトランクが浮いてコンパートメントの中に入っていく。そして隅の方にちょこんと鎮座したとき、私は目の前の人が魔法でトランクを入れてくれたんだと言うことを理解した。

 

「あ……ありがとう、ございます」

 

その人は何も答えなかったが、私は気にせずコンパートメントの中に入って扉を閉めた。

……どうしてだろう、この人とは初めて会った気がしない。この得体の知れなさとか、何を思っているのかわからない姿とか、もう着替えを終わらせている用意周到さとか……。

ふと、何を考えているのかわからなくて用意周到で得体の知れない知り合いの事を思い出し、それからもう一度目の前で眠っているように見える人をじっと観察する。

 

「……もしかして、ハリーさん……ですか?」

「お休み」

「名前を聞いた返事がお休み!?」

 

ハリーさんだ!この訳のわからなさといいからかい方といい声といい、間違いなくハリーさんだ!絶対そうだ!

と言うか、ハリーさんはもう魔法が使えるんだ……凄いなぁ……。

 

そうこうしている間に汽車が発車した。ゆっくりと加速しながら進んでいく汽車を女の子が追いかけているのを窓越しに見ながら、どうやら浅く眠っているらしいハリーさんを起こさないように静かに教科書を読むことにした。

少しするとコンパートメントの戸が開いて、さっき見たばかりの赤毛の男の子で一番年下らしい男の子が入ってきた。

 

「ここ空いてる? 他はどこもいっぱいなんだ」

「寝てる人がいるから、静かにね?」

 

その男の子は無言で頷き、そして静かに席についた。

 

「……えっと……僕はロン。ロン・ウィーズリー。君は?」

「エリー・ポッター。……よろしく」

 

私が名乗ったらその途端にその男の子……ロンは目を見開いた。

 

「そ、それほんt───」

 

瞬間、ハリーさんの拳が凄まじい速度で振るわれた。ヂッ!とロンの顎を削り飛ばすような位置を拳が抜けていき、ロンは白目を剥いて気絶してずるずると背凭れ付きの椅子からずり落ちていった。

恐る恐るとハリーさんの方を見てみると、ジロリと右目だけで隣に座っていたロンを睨み付けている。そしてまたすぐに目を閉じて、何事もなかったかのように寝息をたて始めた。

 

「……話すのはいいが、騒ぐな」

「……はい」

 

最後に残されたその言葉に私は小声で返す。できればここに騒がしい相手が来ないことを祈るばかりだ。

あと、ハリーさんはやっぱり間違いなく人外。構えすら無い状況からのあのパンチは普通ありえない。ハグリッドに聞いたけれど、魔法使いって言っても肉体的には非魔法使いと大差は無いらしい。あくまでも魔法が使えるか使えないかの違いくらいしか無いとハグリッドは言っていた。

だから、普通の人間があの速度で正確に相手を気絶させるために顎先を殴って即座に手をローブにしまうなんてのが絶対に無理なのと同じように、魔法使いだって……。

……もしかして、魔法で自分の身体の動きを早くしたりしてたのかな? だったらまあ……。

 

「車内販売はいかが?」

 

眠る二人を見ながら考えていたら、外からひょっこりとカートを押すおばさんがコンパートメントの戸を叩いて言った。私はすぐに唇の前に指を立ててから、眠っている二人に視線を向けた。

それで事情を察したのか、おばさんはにっこりと笑顔を浮かべて声を小さくした。私は朝御飯がまだだったのでポケットの中のお金を確認してからカートの中に沢山並んでいるお菓子を眺める。どれもこれも見たことがないものだったけれど、どれも美味しそうだった。

私はどれもこれも少しずつ買った。蛙チョコレートや百味ビーンズ、ドルーブルの風船ガムみたいな完全なお菓子の他にも、かぼちゃパイや大鍋ケーキと言ったそれなりにお腹が膨れそうな物も……。

まあ、私の両腕では持ちきれなくなっちゃったので途中で一度座席に置いたけれど、後悔はしていない。

 

ぱくぱくと朝御飯兼昼御飯を食べる。まずは割と安全そうなかぼちゃパイと大鍋ケーキ、杖型甘草飴等から食べていく。ロンはまだ起きないけれど、さっきからお腹が鳴り続けているからそろそろ起こしてあげた方がいいかもしれない。

口の中にかぼちゃパイを押し込んで、それから気絶しっぱなしのロンを揺り起こす。多分頭を揺らされたんだろうロンだったが、ハリーさんはあれでも一応手加減していたのかロンは呆気ないほど簡単に起きた。

……いや、よく見たらハリーさんのローブから杖が一瞬突き出していた。ハリーさんが何かやったんだろう。

 

「う……あ、あれ……? ここ……」

「……おはよ、ロン」

「あ……あ、ああ、うん、おはようエリー……えっと……?」

 

どうやらロンはどうして自分がここで眠っていたのかわからなかったみたいだ。……まあ、私だってあんな風に寝かされたらきっと何がなんなのかわからないまま起きていたと思うけど。

 

「……ロンは、何でかわからないけど突然気絶するように眠っちゃって……あ、さっき車内販売の人が来たんだけど、ロンもどう?」

 

そう言って私がかぼちゃパイを差し出すと、ロンは素直に受け取った。けれどそこでふと何かを思い出したみたいで、私にかぼちゃパイを押し返してきた。

 

「……悪いんだけど、僕は自分のがあるから……」

「……嫌そうな顔してるんだけど……?」

「だって……ほら、僕はコンビーフ嫌いだって言ってるのに……」

「…………どうぞ」

「……ありがとう」

 

ロンはなぜか涙目になりながら私からかぼちゃパイを受け取った。

 

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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