ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
夢を見る。石が組み合わされてできているように見える部屋で、どこかで見た覚えのある小男が『私』の前でガタガタと震えて跪いているのが見える。いつもは何も聞こえないのだけれど、今回は僅かにそれを聞き取ることができた。
「ワームテール……無能で臆病で卑怯で小さい我が僕……」
「は……はい、我が君……」
ワームテール。その呼び名には覚えがなくもない。確かその名前は、バルバモートに私の両親の居場所を教え、私の両親が死ぬ原因を作った相手。アズカバンが抜かれていたのは知っていたけれど、それでもまさか本当にバルバモートの元に戻っていたとは思わなかった。
だって、ワームテールはバルバモートの力を一時的にとは言っても失わせる原因となった相手。例え戻ったとしても、間違いなく殺されておしまいになるはずだ。
それなのに、何故かワームテールはいまだに生きている。『私』の……いや、もう認めよう。バルバモートの前に跪き、許しを請い続けているとはいえ、まだ生きている。
「ワームテールよ……お前をここに呼び出した理由はわかるな? アズカバンからお前を引きずり出してから、これほどの時間が流れているのだ……少しは考えたのだろう?」
ワームテールの口から情けない悲鳴が漏れた。まあ、恐怖の対象にそんなことを言われたら普通は怖がるし、殺されるに違いないと思っていた相手の前に居るだけでどれだけ精神を削っているのかは何となく理解できる。
とにかく、ワームテールはまだ生きていて、そして今は本人にとっては絶体絶命の状況にあると言うことは十分に知ることができた。
「ワームテール……ワームテールよ……そう恐れるな。俺様は貴様を殺すつもりはない」
その言葉に、ワームテールは恐る恐ると顔を上げた。頬はこけ、目の下にはひどい隈があり、あまりにもみすぼらしいその姿は同情を誘われずにはいられなかった。
「そう、殺すことなどせぬ……」
しかし、バルバモートはそんな感情など全く覚えていないらしく、ゆっくりとワームテールの頭を掴もうとするかのように手を伸ばす。確かに殺しはしないのかもしれないけど、どう考えても何らかの害を与える気満々だ。
そんなところはハリーさんに似たものを感じる……ああ、バルバモートとハリーさんって繋がってるんだっけ? ハリーさんが前にそんな感じの事を言っていたような気がする。
「ひぃっ!? お許しを!お許し下さい我が君……!」
「何を怯えるのだ、ワームテール……怯えることなど……なにも、無い」
バルバモートはそう言いながらゆっくりと手を伸ばし、ワームテールの頭を片手で掴んだ。
瞬間、ワームテールが絶叫する。苦痛に満ちたその悲鳴は、まるで痛みと言うものをそのまま音に変換したかのようだ。
ワームテールはのたうち回ろうとするも、バルバモートの手が放れないためひたすらにその場で手足を震わせるのみ。
……あれ、絶対痛いよなぁ……。
……と、言うところで目が覚めた。どうやらまた私はバルバモート視点の夢を見てしまっていたらしい。
多分だけど、あれは流石にバルバモートの予想から外れているのだろう。じゃなかったら、あんな風に自分達の恥みたいな部分を見せるとか思えないしね。
まあ、とにかく今日は最悪に近い目覚めになってしまった。仕方がないのでちょっとハリーさんの布団に潜り込みに行こうと思う。抱き付くくらいだったらハリーさんは引き剥がそうとはしないし、ちゃんとパジャマで行けば周りの人達も『ああうんいつものこといつものこと』って受け流してくれるから大丈夫。
でも、前にハーマイオニーにそれで大丈夫って言ったら『何がどう大丈夫なのか産業で説明して』って言われたので、
『一次産業の畜産業では雄と雌を一緒にして新しく肉を産ませる。
でも、ハリーさんは私に一切興味がないから新しい命は産まれない。
結果として無駄な食費が増えるようなことにはならないから大丈夫』
って説明したら頭をハリセンでひっぱたかれた。『産業で』って言うから産業に例えて三行で言ってみたのに、ハーマイオニーってば酷いよね。あんまり上手いこと言えなかった私にも原因があるのかもしれないけど。
「そうじゃない……そうじゃないのよエリー……」
「あ、起きてたの? ハーマイオニー」
「今起きたのよ……あと、私があの時ひっぱたいたのは、あそこは乗る所じゃなくてツッコむ所だったのにノリノリでボケを返してきたからよ」
「だったら初めの内にツッコミ入れておけばよかったんじゃ?」
「最初はノリツッコミだと思ってたのよ……いくらなんでも予想できないわ。何度も言うけれど、私は別に何でも知っている訳じゃないんだから」
「ハーマイオニーは何でも知ってると思ってたよ」
「……何度も訂正してきたはずなんだけど……」
「訂正される度に聞き流してたと思う」
ハーマイオニーは眉間を指先で揉み解した。実に頭が痛そうだと思うけど、原因は私だからなんとも言えない。言ったらまた怒られそうだし。
まあ、聞き流していただろう事はまず事実だから否定なんてできないし、そもそも否定なんて最初からする気が欠片も無いんだけどね。謝ることはあるかもしれないけど否定はしない。
そんなわけで私はハリーさんのベッドに向かう。男子は女子寮に普通は入れないけど、女子は男子寮に普通に入れるんだよね。不公平かもしれないけど、ホグワーツではそういう風になっているんだから仕方無い。
ハリーさんの布団に入ろうとすると、ハリーさんがふわりと布団を持ち上げて迎え入れてくれた。なんだか凄く子供扱いされているような気がするけど、子供だからこうやってハリーさんと一緒に寝られるんだったらそれでもいいや。
朝までもう少し時間がある。ハリーさんとと一緒なら、きっと今度はいい夢見れるよね?
……でも、もしもここでえっちな夢でも見ちゃったら……私、色々耐えられる自信は無いよ? 夢の中のハリーさんはそれはもう……。
……うん、忘れた。忘れたから今寝ようすぐ寝ようさあ寝よう。耳とか顔とか首とかが真っ赤になって見えるのは気のせいだからね。だから落ち着いてしっかり深呼吸をして……すー、はー……ハリーさんの匂いがする。当たり前だけど。
……うん、お休みなさい。
フラグ(意訳*明日は夢のペット生活です)
次回作は……?
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