ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
魔法生物飼育学の正式な教師であるハグリッドがホグワーツに帰ってきた。なんだか凄い怪我をしているけれど……これ、多分殴られた傷だよね? どんなものに殴られたのかはわからないけど、少なくともハグリッドと同じぐらいかもっと大きいくらいの身長がある相手だと思う。
それで、ついでに言うと傷の殆どが真新しいものだと言うことを考えると……その原因は割と近くに居ることがわかるよね。
今はその姿が見えないってことは、それは多分『禁じられた森』に居る。けれど『禁じられた森』に居る生物でハグリッドにここまでの傷を与えられるのは、私の知る限りではケンタウルスくらいなんだけど……ケンタウルスがハグリッドを攻撃するとしたら、その傷は明らかに蹄の痕になるか、あるいは弓矢による傷のどちらかであるはず。しかしハグリッドの傷は蹄の痕ではないし、打撲と切り傷が主体だ。刺し傷は無いと言っていいほど少ない。と言うことは、ケンタウルスではない。
……となると、新しく何か危ない生物をハグリッドが作り出したか、あるいはハグリッドがどこかから何かをつれてきたかのどちらか。暫くホグワーツから離れていたことを考慮すれば、恐らく後者が正解なんだろう。
……でも、ハグリッドの話ではハグリッドはマダム・マクシームと一緒に巨人のところに交渉に行っていたはず。そんなところから動物なんてつれてこれるような余裕があるとは思えない。
けれどハグリッドは結構な無理をしてでも何かを連れてこの場所にまで戻ってきた。ハグリッドがそれをするだけの価値があるものと言えば……。
「……ねえ、ハグリッド? まさかとは思うけど、巨人を一人連れ帰って『禁じられた森』に住まわせてる訳じゃないよね?」
ハグリッドは目を泳がせた。やっぱりハグリッドは嘘を言うのは苦手らしい。ハグリッドらしいと言えばハグリッドらしいんだろうけれど、そう言うところをアンブリッジの前で出してしまうのはちょっとどころじゃなく危険だ。ホグワーツから追い出されてしまうかもしれない。
……まあ、例えそうなったとしてもアンブリッジがいなくなればハグリッドも戻ってくることができるだろうし、心配する必要はあんまり無い……かな? むしろ悪戯好きの誰かが『禁じられた森』に入り込んでしまった時の事を考えておいた方が良い気がする。
……それにしても、バルバモートが巨人を従えた……か。一部の巨人は敵にはならないとは言え、それでも驚異と言うに足るだけの事柄ではある。
その他にも、吸魂鬼に未だ生き延びている死喰い人、かつて死んでしまったが蘇った死喰い人、脱獄を成功させたピーター・ペティグリュー、多数の人狼や『服従の呪文』で従わせている人達も含めればそれこそ数えきれない人数が私達の敵になるだろう。
……目下、一番の敵が魔法省だって言うのは笑い話にもならないけどね。笑ったとしてもひきつった笑いか、あるいは半分泣いているような笑いのどちらかだと思う。救えないね。
「……一応、ハリーさんにも伝えておくよ? ハリーさんだったら、およそありとあらゆる事をなんとかできるだけの能力があるからね。ハグリッドが連れてきた人がもしも暴れたりした場合に気が向いたら助けてくれるかもしれませんし、口固いですし、誤魔化すのも上手いし戦闘も強いから口を割らされるようなことも無いだろうから」
「いや、待ってくれエリー。できれば秘密に……」
「……ハリーさんが偶然出会った時に存在を知らなかったら首がもがれちゃうかもよ? 去年に釣った翠魚竜の首を片手で捻り折ったのは知ってるでしょ?」
「頼む」
「うん、頼まれた」
一瞬で前言を翻したハグリッドだったけれど、その判断は実に正しいと思う。私のように今を必死に生きるのも一つの生き方だけれど、たまには未来を見つめてみないといけないこともあるし。
特に、ハリーさんの関わることではそれが顕著だ。ハリーさんが関わった場合、最悪破滅するよりも酷いことになる。さっき例として挙げた借金の話もそうだし、それ以外にも色々と常識的に考えればまずいことが起きるのがわかる。
……訂正。そこまで常識的に考えなくても普通にわかる。危険度では類を見ないもの。
ハリーさんの前ではバジリスクも霞む。実際に片手間で一方的に倒されていたことがあるし、そうでなくとも水に棲むドラゴンを大衆の前で首を捻って殺して見せたことすらあるのだから、ハリーさんが危険だと言うことはある意味全国で共通で広まっているはずなのだ。
……だと言うのにアンブリッジはまったくもう……本当に危機感が足りていないと言うか、権力の方はともかくとして生命としての危機管理能力が衰退しすぎているような気がしてならない。ハリーさんが本気出したら、世界が破滅しちゃうよ? いや、本当に。
「……気配がするわ。少しずつ近付いてきてる……アンブリッジよ」
ハーマイオニーが外にアンブリッジの気配を察知したらしい。私はすぐに透明マントを被り、使っていたマグカップをマントの中に隠す。
……それにしても、話をしていたら本人が来るだなんて……噂をすれば影、とはよく言ったものだと思う。噂一つで本人を確実に呼び寄せられるんだったら、私は魔法省の中でバルバモートの噂をするけどね。そうしたらいくらなんでも信じなくちゃ駄目でしょ。
もしもそれでも信じられなかったら、とりあえず今の魔法省は切り捨てることになるだろう。ファッジが頭じゃ魔法省はダメになる。むしろ今まさに駄目になっている。
「それじゃあね、ハグリッド。勝手口から出ていくけど、マグカップも外に置いておくから」
「ああ。足跡を消していくのも忘れるなよ」
「勿論」
私達はハグリッドに別れを告げて、勝手口から静かに外に出た。アンブリッジはそれには気付いていないようなので、一歩歩くごとに足跡を『消失』させながら城へと向かっていく。
あの半人間嫌いのアンブリッジが、ハグリッドをどう扱おうとするかはなんとなく予想できる。あらゆる出来事を自分にとって都合の良いように解釈し、あまつさえそれを自分自身が本気で信じてしまう。権力を握るのに向いた人ではないことは確定だね。
万が一の確率もないだろうけど、億が一、兆が一アンブリッジが魔法省大臣になったら、間違いなく五秒でリコールをかけようとする組織が50は現れるだろうと言うことを予想するのは、五歳の子供でもできるだろう。
……あ、もうすぐご飯の時間だ。早く城に戻ってご飯にしよう。お腹空いた。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き