ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 side エリー・ポッター

 

 夢を見る。夢を見る。深くて昏い、夢を見る。

 夢の中で、『私』が何かを話していた。『私』の言葉を誰かが聞いて、誰かは『私』に跪いていた。

『私』は跪く誰かに言った。何を言ったのかはわからないけれど、何かが欲しいと言うことらしい。

 けれど、『私』に跪く誰かは首を横に振る。どうやら、それはもうそこには無いらしい。

 ……そことはどこか、考えることもできずに私は『私』の中から進んでいく場面を見せ付けられる。

『私』は仕方がないと溜め息をつき、次に何をするのかを跪く誰かに命じた。跪く誰かは、『私』を神のように崇めながら頷いた。

 

 ……そこで私の目は覚める。なんだか凄く奇妙な夢を見てしまったような気がするけれど、気にしないことにしよう。気にしてもどうなるわけじゃないんだし。

 それに、今日はロンの初めての公式戦。あんまり変なことを気にし続けている訳にもいかない。ちゃんと頑張って、友人の門出をしっかりしたものにしてあげなくちゃね。

 

 ……ロンってば、いつもはあんな風なのに実はかなり上がり症だし、緊張とか凄いするから落ち着かせないといけないんだよね。

 まあ、だからと言ってそれだからゴールを守れなくっていいと言う話ではない。弱点があるなら、できるだけその弱点を克服すべきだろう。

 

「そう言うことで、ロンの緊張を解すためにマルフォイさんにお越しいただきました。マルフォイさん、本日はよろしくお願いします」

「任された。……さて、僕の知るウィーズリーの緊張を解く方法と言えば、まずはウィーズリーを馬鹿にして激昂させることだ。これで精神的な緊張が解け、身体の方も……つまりは筋肉の方も緊張から解き放たれると言うわけだ……と言うことで早速実践してみよう」

 

 マルフォイはそんなことを言いながらロンに近付いていく。ロンとマルフォイの仲の良さを知っているチームの皆は、それを苦笑しながら見守っている。

 

「この時大事なのは、あくまで馬鹿にするのは本人だけにすることと、冗談で済む範囲に収めておくこと。ウィーズリーと本気で喧嘩をするとか、僕でもちょっとやりたくないからね……と言うわけで開始」

 

 マルフォイは、俯いたまま手を震わせながら食事をしているロンの顔を、ロンの視界にギリギリ入る位置から覗き込んだ。

 

「……フォーイフォイフォイフォイ……フォーイフォイフォイフォイ……フォイ……」

 

 そして、なんだか凄くイライラするトーンとアクセントでフォイフォイ言い始めた。……確かに、これは本人だけを馬鹿にするには間違いなく適しているだろう。証拠に、始まってから三十秒も経っていないのにロンの手の震えが緊張から別の物に変わってきているように見える。

 

「……マルフォイ。僕を馬鹿にしに来たのか?」

「フォイ!」ドヤァ

 

 凄まじいドヤ顔で、マルフォイは頷く。そしてそのままじっくりとロンの顔を右から左から上から下から前から後ろからどこからでもニヤニヤしながら眺め続けている。

 

「フォーイフォイフォイフォイ……フォーイフォイフォイフォイ……フォフォイフォイフォイフォイ……フォイ!」

「……ウゼェ……」

 

 そのあまりの鬱陶しさに、ロンは緊張も忘れてマルフォイに向かって拳を振るうけれど、マルフォイはフォーイフォイフォイフォイと笑いながら全ての攻撃を避けている。

 ……いや、正確には避けていると言うよりは、当たりながら受け流していると言うべきなんだろうね。何て言うんだっけ……消力(シャオリー)

 でも、ロンの攻撃は触れるだけでもかなりの威力になるはずなんだけど……どうしてマルフォイは平気なんだろう? カウンターでエネルギードレインか、あるいはHP自動回復能力でも…………ああ、あったね、そう言えば。

 マルフォイは休みの間にも修行して、HPを高速で自動回復させることができる上に、接触している相手のHPを吸収して回復することができるようになったんだとか。

 それができるかもと思った理由は、ハリーさんの用意した『大乱闘スマッシュホグワーツ』にある。ハリーさんのゲームの超リアル版は、本人にできることしかできないかわりに、できる範囲での自由度が凄まじい。そんな中でマルフォイが発現させたのが『HP自動回復』と『HP・MPドレイン』、そしてダメージを限界まで押さえて接触した相手のHPを削る『闇の衣』。この三つを現実でも使えるようになるために、頑張ったそうだ。

 現在使えるのは『闇の衣』を除いた二つ。10秒でHPの最大値の一割を回復し、さらにカウンタードレインを使える。

 ……そんなマルフォイを普通に殴っているロンはいったい何者かと思うけれど、ロンはロンで『かいがらのすず・改』を常時装備しているらしい。相手に与えたダメージ分のHPを回復するのだとか。

 

 ……マルフォイと喧嘩をして余計に決着が付かなくなっている理由がこれなんだけれど、どう考えてもコンビネーションプレイで最強になるよねこの二人。

『最強の盾』と『最強の矛』。お互いに協力し合うのが最も賢いやり方だろうけど……今のところはマルフォイの方がちょっとだけ上……かな? 精神面でマルフォイの方が大人だし。

 

 と、マルフォイがロンを他人の邪魔にならないところに引っ張りだして殴り合いの喧嘩を始めた。HP吸収と自動回復での回復で耐えながら攻撃するマルフォイと、攻撃しながら与えたダメージ分のHPを回復するロン。きっと、ある程度気が済んだら殴り合いは辞めることになるんだろうな。

 なんでこうなっているのかをちゃんと理解しているグリフィンドール・チームもスリザリン・チームも、二人の喧嘩を止めようとはしていない。そして、喧嘩をしている当人達も、なんでこうしているのかを気づいているみたいだ。

 

「……全く、これだから男って……」

 

 ハーマイオニーがぶつぶつと言いながら二人に近付いていく。どうやらロンの緊張もだいぶ解けたと認識して二人を止めようとしているらしい。

 ハーマイオニーがそう言うんならそうなんだろうと思うけれど……なんと言うか、アンブリッジが動こうとしているように見えるのが気になる。また巫山戯た事を抜かし始めるんじゃないかとひやひやしてしまう。

 ……もし本当にそうなったら、多分喧嘩をしているロンとマルフォイのうちロンだけがクィディッチの試合に出場停止、それに箒の没収なんて言う目に合うかもしれない。

 流石にそんなことをする権限はアンブリッジには無いけれど、今の魔法省の事を考えればすぐに新しい省令を作ってくるに違いない。

 

 ……そうなったらこっちもこっちでハリーさんを引っ張り出そう。死んでも私のせいじゃないもーん。

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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