ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side エリー・ポッター

 

どこを見ても見たことの無いものばかりが目に入る。ふくろう百貨店と言うところには何十何百と言うふくろうがいてホーホーと騒いでいたし、鍋屋と言う看板がぶら下がっていた店の前には大量の大鍋が積み上がっていた。

箒のショーウィンドウの前には私と同い年くらいの男の子が何人か並んで中の箒を眺めているし、その他にもマント、望遠鏡、呪文の本、羽根ペンや羊皮紙や薬瓶、それらを買いに来るお客の一人一人すらも私の興味を引いた。

しかし、ハリー……さん(なんだか凄く年上のような気がして呼び捨てしづらくて……)に手を引かれてハグリッドの進む道を進んでいたと言うことに気が付いてからは少しだけ前にも気を配るようにした。そうじゃなかったらいつの間にか私だけ迷っていたなんてことになりそうだったし、ハリー……さんに手を引かれるのは……まるで物の道理もわからないような子供のようで恥ずかしい。

 

そうしているうちに到着したのは、小さな店が多い中で一際高くそびえ立つ真っ白い建物だった。その入口らしい両開きの扉の両脇に立っているのは、小さな人間のような姿をしたなにか。

と、そこでハリーさんは私の手を放して私を前に押しやった。

 

「森番さん」

「ハグリッドでええ。なんだ?」

 

完全に閉じられているはずの目で、ハグリッドの顔を捉えて話しかけるハリーさんに、ハグリッドが聞き返す。

ハグリッドにさっきから浮かべている面倒臭そうな無表情を向けるハリーさんは、どこからともなく鞄を取り出してその中身を開いて見せた。

その中には、ぎゅうぎゅうに金貨がつまっていた。これだけのお金があったら、きっとホグワーツの入学準備も終えることができるだろう。

鞄を閉じたハリーさんはまたどこかに鞄をしまって言った。

 

「……と言うわけで俺の分の金はあるから、あそこには娘っ子と森番さんだけで行っておくれ。俺はこの近くで待ってるから。……あと、俺はどうも昔から他人の長い本名を覚えるのが苦手だから、名前を教えてもらっても呼べないから渾名か役職で呼ばせてもらうよ」

 

そう言うが早いかハリーさんは近くにあったカフェテラスに向かって歩いていってしまった。この真夏にあんなに暑そうな服を着ていて平気なのかとも思ったけれど、ハリーさんはにっこり笑って魔法は便利だと答えるばかりで汗のひとつも流していない。そのお陰で姿さえ覚えていればすぐに見付かるからありがたくはあるのだけれど……。

 

「そんじゃ行こうか、エリー」

 

ハグリッドは少し迷っている私を連れて、グリンゴッツ銀行の中へと入っていった。

 

そこからの体験は、私にとってまさに別世界の物だった。勝手に走るトロッコに乗ってお金を取りに行き、ハグリッドも別口の用事を済ませる。

それから一度ハグリッドと別れてハリーさんと制服を買いに行ったり(ハリーさんはもう持っていた)、あまり離れるとハグリッドが私達を見付けられなくなるかもしれないので近くのカフェテラスでお茶をしたり、ハグリッドと合流してからは買い物リストにあった錫製の大鍋を買ったり(ハリーさんはもう持っていた。錫製では無さそうだけど)、教科書を買いに行ったり(ハリーさんは古本で揃えたそうだ。色々な所のメモが役に立つと言っていた)……とにかく色々な意味で新しい体験ができた一日だった。

その間、色々なところに私の興味を引く物があったけれど、ハグリッドは必要ないものは殆ど買おうとしなかった。確かに買い物リストには「錫の大鍋」と書いてあったから純金の大鍋なんて買わなくてもいいし、ルールもよくわからないゲームの高級そうなのも必要ない。遊ぶだけなら安物でも遊べるだろうし、そもそもまずは最低限のルールと定石を安物で覚えて、気に入ったら高級品を買って長く愛用するべきだ……と、思っている。

ダドリーはその辺りをわかっていなかったからあれだけ沢山の物を求め、そして沢山の物を捨ててきたんだろう。

そういう姿をずっと近くで見てきたからこそ、私はああはなりたくないと考えるようになった。大切なものを決めて、とにかくそれを大切にすること。私はそれを心に決めている。

だから、今回買った白いふくろうも、これから買うことになっている杖も、私は大切にすることに決めている。

 

「あとは杖だけだな……まさかお前さん、杖まで持っとるとは言わんよな?」

「家の庭にある山登り用のステッキだったらあるけど魔法の杖は無いかな」

「庭に山!?」

「グリフォンとかマンティコアとかが住んでるよ。みんな家族だ」

「猛獣ですよね!?」

「初めのうちは気が荒くてね……何度か喧嘩したこともあるよ。負けたこと無いけど」

「本当に人間ですかハリーさん!?」

「おお!庭にグリフォンか……美しいやつだよな?」

「ハグリッドまで乗っちゃった!?」

 

ハリーさんとハグリッドの会話について行くことができそうにない。グリフォンの本物もマンティコアの本物も見たことがない私にはレベルが高すぎる。

 

「と言うかハリーさんはマグル産まれのはずなのになんでそんな場所に?」

「周りに人が居なかったから……二歳の時に自力で?」

「二歳児のやることじゃないですよね!?」

 

なに? なんなのこれ? もしかして私が何も知らないだけで、魔法使いだったらみんな二歳三歳くらいから猛獣と遊んだり手懐けたりしているの?

……だとしたら、全然そんなことができない私は……。

 

「エリー。一応言うておくがこれは特殊な例だぞ。普通は二歳で自立はせん」

「そ……そう、なの……? 私も、魔法使いになれる……?」

「ああ。問題なくなれるさ」

 

ハグリッドにぽんと肩を叩かれてつんのめりそうになるけれど、ハリーさんがそっと肩を抑えて支えてくれた。ハリーさんはなんでもない面倒臭げな無表情を浮かべたままだったが、私の視線に気付くと薄く笑顔を浮かべた。

 

「まあ、ここまで来たら間違いでした、なんて事は起きないから安心しな。もうすぐ杖を売ってる所に着くから、いいのを選んでもらいな」

「は……はい」

 

するりと私を支える手を抜き取り、そして私の手を引いていく。向かう先にあるのは小さな店で、いくつも杖が並んでいるのが見える。

 

「それじゃあ、お先にどうぞ」

 

ハリーさんに言われ、私はその店……オリバンダーの店と言う金文字が書かれた店へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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