ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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 第三の課題開始。


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 side エリー・ポッター

 

 課題が始まった瞬間に、ハリーさんは右手に大きなハルバードを持っていた。手品か魔法かわからないけれど、とにかく持っていた。

 そしてハリーさんはその巨大なハルバードをまるで小枝を振り回すかのように指先だけで回転させる。

 瞬く間にも速度が増して行き、大きな刃すらも目で捉えられない程に加速した───瞬間、ハリーさんの振るうそのハルバードから、真っ赤な炎が迸った。

 

「金剛晶波───」

 

 炎を纏ったハルバードを更に加速させながら呟かれたその言葉に、私は即座にネビュラスを呼んで空に飛び上がった。多分迷路から外れたところには行かないだろうけれど、一応逃げるならネビュラスに乗っていた方がいい。

 私を見て即座にクラムとフラーも用意していた箒で飛び上がる。ほんの一瞬遅れてハグリッドやマクゴナガル先生達も、かなり急いで空に上がる。

 それを待っていたかのように……いや、間違いなく待っていたのだろうけれど、ハリーさんはハルバードの回転の勢いを緩めるどころか加速させながら地面を掬い上げるかのように大きく振りながら、呟くように続けた。

 

「───大爆斧」

 

 キュゴッ!と空気が張り裂けるような轟音がクィディッチ・ピッチに響き渡る。ほんの僅かに遅れて大地が捲れ返り、ハルバードを振った先へと吹き飛ばされていった。

 

 しかし、吹き飛ばされていく物は土や石ではない。あまりの高温に真紅から黄色、黄色から青白色へと移り変わっていった炎に照らされて見えるのは、土色ではなく無色透明の結晶。数えることも馬鹿らしくなるほどのその結晶は、青白色の炎を纏って雪崩のように迷路を飲み込んでいく。

 植物でできた迷路は、そこには元々何もなかったとでも言うかのように焼き尽くされた。迷路の中に作られていただろう無数の試練は圧倒的な物量と熱量に強制的に崩され、中に放されていただろう生物達は全部纏めて結晶と炎の海に呑まれて消えた。

 

「───二連」

 

 そして、ハリーさんからのだめ押しにもう一発同じ物が放たれた。しかし今度は迷路は殆ど残っておらず、簡単に迷路の反対側まで埋め尽くしてしまった。

 肉の焼ける臭いと、山火事のような植物の焼けた臭い。一瞬で呑まれた動物達のほとんどは痛みを感じる間もなく焼け死んだだろうけれど、その中で火に耐性のあるスクリュートは悲惨なことになっていた。

 なまじ火がかなり防げてしまうせいで、いつまでも灼熱の結晶の海から脱出できない。しかしどうやらあくまでも耐性を持つだけであり、死なないだけで痛みは感じているらしい。

 そしてその甲殻は、無数の結晶の流れによってガリガリと削り取られ続けている。どんどんと傷がつけられ、皹が入り、割れていく甲殻の傷口から炎がスクリュートの胴体を舐めると、鑢のような結晶に削り取られている事もあってかスクリュートが悲鳴らしき叫び声を上げた。

 

「───三四五六七八九十」

「やめたげてくださいよぉぉぉぉぉっ!」

 

 しかしハリーさんはそんな状況でもお構いなしに追撃を繰り返す。既にクィディッチ・ピッチは赤と青白色の炎に包まれ、ハグリッドがそれなりの時間をかけて作り上げた生垣の迷路は跡形もなく、中の生き物もかけられていた魔法も、みんな纏めて無効化されてしまっている。

 さらに、いくら箒に乗っていてもあの灼熱の津波は熱いし、上空に行く以外に避ける方法が見当たらない。優勝杯をあの中から探し当てるなんてできるかどうかも怪しいし……と言うか、ちゃんと優勝杯が優勝杯だとわかる形を保っているのかと聞きたくなる状況だ。

 流石にあれは……どんな魔法でも防げそうにない。ただの物理現象であれば結構簡単になんとかできそうではあるのだけれど、それをやっているのはあのハリーさんだし。

 絶対にまともなことにはならない。間違いなくまともな魔法では防げない。防ぎたいのなら、何十人かの魔法使い達が完全に息を合わせて受け止めるタイプの防御ではなく受け流すタイプの防御をしなければ間違いなく大変なことになる。

 ……魔法省の防御だって簡単に抜けちゃうんじゃないかな? 魔法省がどんな防御策をとっているのかは知らないけど、やろうとすれば勝手に中に入って普通に色々持ち出して無断で危険物をばら蒔いて平然と魔法省から出て当たり前のように魔法省を内側から爆破するとかできそうだし、ついでにやる理由は無いと言ってもやらない断固とした理由がある訳じゃないし。

 ハリーさんのことだから、やらないでいた理由なんて面倒だからとか精々その程度だろう。人を殺さないようにしているのも、今のところ大きな事件を起こしていないのも、基本的にはハリーさん自身のためだろうしさ。

 

 そして、そんなものを何度も受けてしまえばいくらスクリュートに熱に対する耐性があったとしても関係無い。全身の甲殻を全て削り取られ、全身を鑢がけされながら焼かれてしまえば、後に残るは灰ばかり。精々石や溶岩が残っている程度で、迷路も何も残っていない。

 

 ……迷路の攻略法。スタートからゴールまでを最速で行う方法。常人ならばそれは移動速度を上げることと、最短距離を事前に知っておくことなのだろうけれど、ハリーさんは流石と言うかなんと言うか格が違う。

 ハリーさんは、そもそも迷路の壁を無視することを選んだ。確かにこんな壁なんてハリーさんにとってはなんでもない物だろうし、壁抜けは禁止されていない。更に言うと、ハリーさんはバグマンさんに言葉足らずとはいえ『障害物は破壊していいのか』と言う確認までしていた。これはルール的には何の問題もない事だと言える。

 ……と言うか、正確にはそう言うしかないだろう。いくらこんな状況を想定していなかったと言ったところで、実際に起こってしまったことは仕方無い。予想できていないから禁止されなかったことを禁止されていないからと言う理由で実行する。それがハリーさんの常套手段だもの。

 

 ……でも、あの中からどうやって優勝杯を見付け出すんだろう? あれだと壊れた迷路の破片や、迷路の中に放たれていた怪物の死体ごと流れてしまったり、そもそも壊れてしまったりしそうだけれど……本当に大丈夫? クィディッチ・ピッチは結構広いし、一度物を無くしたら中々見つからないはずだ。

 特に今のように地面全体が太陽のように眩しく輝いているような状態では、それが例えスニッチのように小さくなくても光に呑まれて何も見えなくなってしまうはずだ。

 更に言ってしまえば、ハリーさんのあの炎と無色透明の結晶は強力な魔法がかかっている。そのせいか『探索魔法』による探知が効かないため、探すのは肉眼に頼ることになる。

 更に更に、もし見付けたとしてもそこは煉獄の海。取りに行くのは危なすぎる。

 

 ……まあ、結果的に言えば私のしていた心配なんてただの杞憂でしかなかったのだけれど……ハリーさんが本当に人間なのかがさらに怪しくなった。

 迷路が崩壊したことを確認したハリーさんは、片手で回転させていたハルバードを一度止めた。それからぐるりと軽く迷路があった場所を見渡して、ある一点に向けてハルバードを振った。

 すると、まるでそう命じられたかのように炎と無色透明の結晶体がハリーさんに道を開く。その道の先には、一応の原型を止めたままの三大魔法学校対抗試合の優勝杯が転がっていた。

 

 ハリーさんは溶岩の上を普通に歩いていく。溶岩に触れている靴や制服に火がつくが、一瞬にしてその火は跳ね退けられて大気に散った。

 ハリーさんは、燃え尽きた服の代わりに銀色のコートを着ていた。靴も全く違う物に変わり、表情は帽子と襟に隠されて把握することができない。いつの間にそんな服に着替えたのかはわからないけれど、今度の服は溶岩の中を歩いていても燃える事はなさそうだ。

 

 気が付けば私達が空から見守ることしかできない中で、ハリーさんはちょっと近くのコンビニか自販機でお茶でも買い求めに行くかのように、気軽に優勝杯を拾ったのだった。

 

 ……そしてハリーさんは、その手が優勝杯に触れたその瞬間に……ホグワーツから姿を消した。

 

 ……どこに行ったんだろうね? ハリーさん屋敷かな?

 

 

 

 

 

 

 




 
そして終了。
 ついでに技解説↓

【金剛晶波大爆斧】

 とある超次元董√のかゆうまさんの使う対軍勢用必殺技の一つ。
 炎に混じった灼熱の金剛石一発一発の威力は大した物ではないが、一発の威力が高くはないからこそ連発できるため雑魚敵殲滅には非常に効果的。
 対個人用、対武将用、対城塞用、対一夏用等に色々な形をとらせることができるが、基本は【金剛大爆斧】。全力でやるとなぜか華雄の後ろに金剛石でできた巨大な千手千腕の鬼神像が現れ、千の手に掴んだ武器で一斉に同じ技を繰り出してくる。
 怒らせると威力が増す。『貧乳』、『年増』、『行き遅れ』等と言うと、青白い炎が緑白色になり、威力がが倍々方式で跳ね上がる。怖いね。


次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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