ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
これから第三の課題が始まる。バグマンさんが言っていたように6メートル近くの高さがあるこの迷路を抜けていかなければならないのだけれど、きっとそれはハリーさんが一番に抜けるだろう。
シリウスおじさんも復活したし、ウィーズリー家の皆やマルフォイたちに激励されて、絶対に怪我をしないようにと言われたのでもう一度フォフォフォフォイ体操をやっておく。
第一の課題から半年ほど。その短い間に、マルフォイは七割ほど防御力を上げていたようで……大分自分が頑丈になったことがわかる。
マルフォイは日課としてフォフォフォフォイ体操をしているからどのくらい増したのかはわかっていないようだけど、それでも結構増えていた自覚はあったそうだ。
……それでもハリーさんの飛ばす銅貨はマルフォイに脳震盪を起こさせるみたいだけどね。ハリーさんの力はもう物理法則とか魔法理論とかそんなちゃちなものをみんなまるごと消し飛ばしてるよね。怖い怖い。
私はこれまでに覚えた呪文をひたすらに思い出す。『失神呪文』、『武装解除呪文』、『妨害の呪文』、『四方位呪文』、『粉々呪文』、『呼び寄せ呪文』……まだまだたくさんある。
そうやって覚えた呪文の効果を思い返し、杖の振り方や発音を思い出し、それをみんな思い出せることを確認した。
……そうだ、これはクィディッチの試合とおんなじだ。クィディッチだってブラッジャーが頭に当たれば死んでしまうかもしれないし、周りに観客が居ることも、危なくなったら先生に助けを求めることだってできる。凶悪な敵チームは魔法や生き物の数々で、味方は私一人だけ。シーカーらしくてわかりやすい。
集中しよう。集中するんだ。いつものように危険を見付けてそれを避け、いつものように目的のものを探すために飛び回る。ただ、いつもより危険の種類がちょっと多いだけの話だ。
そうだ、集中だ。
私の視界から、ゆっくりと無駄なものが省かれていく。観客が消え、迷路とその中にいるだろうたくさんの危険にだけ意識が集中していく。
同じように音が薄れていく。観客が何かを言う声が消えて、迷路の中の音がよく聞こえるようになる。
じりじりと世界がゆっくりになって行き、もうすぐハリーさんが迷路に挑戦する時間になることがバグマンさんの口から告げられる。ハリーさんはこれまでの課題を100点満点で突破していて、私は98点。ハリーさんが迷路の攻略を初めてから二分後に私が出発することになる。
周りを見渡してみると、観客席の中程にハーマイオニーを真ん中にしてロンとマルフォイが並び、ロンの逆側にはウィーズリーおばさんとビルとシリウスおじさんが、マルフォイの逆隣にはいつもの通りにクラッブとゴイルが並んで座っていた。
その時、ハーマイオニーが私が見ている事に気付いたらしく、ロンとマルフォイの服を引いて私を指差した。そして私と視線が合った皆が、私に向かって手を振ってくれる。
……うん、頑張ろう。
私はその思いを新たにしつつ、みんなに向かって小さく手を振り返した。
そしてふと、ビルに向けて熱い視線を送っていたフラーの事を思い出す。同時に、ハーマイオニーの気を引こうとしていたクラムの事も。
二人はここで恋をした。叶う叶わないは別として、きっとそれは燃え上がるような恋なんだろうと思う。
クラムは、もしかしたら優勝杯を手に入れたらそのままハーマイオニーに告白しに行くかもしれない。なんとなくだけれど、そんなロマンスがあってもいいんじゃないかと思うしね。
……よし、ネビュラスを呼ぶ準備はできた。後は開始を待つばかり。必要なものは呼び寄せて、要らないものは弾き飛ばす。それでいい。
…………あ、先生達に『ハリーさんが自重しないクリア方法をするかもしれないから気をつけて』って言うのを忘れてた。言っておかないと先生方が危ないかもしれない。と言うか、たぶん危ない。
「あの……先生? それに、ハグリッド……ハリーさんが全力でいともたやすく行われるえげつない方法で勝利を得ようとしているみたいなので、いつでも逃げられる準備はしておいてくださいね?」
「無論です。彼の理不尽さはよく理解しています」
マクゴナガル先生にそう言うと、既に準備はしてあったようで箒を見せてくれた。ハグリッドは特性の、かなり大きくて太い箒を使うらしい。
先生達が言うには、学校の箒の中でもとにかく速い物を選んで持ってきていると言うことなので、多分何らかの異変があれば即座に退避するも急行するもできるようになっているらしい。
ちなみにハグリッドの箒はシノムラ工房で作られたものらしく、柄には『ヘヴィプラネット』という刻印がしてある。私のネビュラスの姉妹箒らしい。
私のネビュラスは速さと操作性に重きをおいて作られているけれど、ハグリッドのヘヴィプラネットは頑丈さと巡航速度に重きを置いたものらしい。ハグリッドが乗るために頑丈さと、かなりの重量を運ぶために巡航速度をやってるんだと思うんだけど……ハグリッドが乗っても普通の箒と並べるだけの速度が出るって凄いよね。うん。
できることはもうやった。あとは天の采配に身を任せるのみ。
……あ、やっぱりそれ嫌だな。天に任せるよりも自分自身で道を切り開いて生きたい。今まで流されるだけだったのだから、せめてこれからは自分の意思で。
ハリーさんのように……とまでは言わないけれど、自分のやりたいことをやりたい。それで失敗したら自分自身で責任をとって、上手く行ったら喜んで……。
……ハリーさんはあれで自分で責任が取れる範囲でしか暴れてないしね。よくもまああんな正確に自分のできることとできないことを把握していると思う。
それに、自分だけじゃなくて他の人の力量や行動なんかもちゃんと考えた上でやらなくちゃいけないんだけど……そっちの方はハリーさんはあんまり考えてないんだろうと思う。ハリーさん程の力量があれば、普通の人間がやることなんて蟻の抵抗みたいなものなんだろうし、考える必要なんて無いだろう。
さて、ハリーさんが動き始める。どんな方法でこの迷路を抜けるのか、楽しみにしておこうかな。
そしてバグマンさんが笛を吹き、第三にして最後の課題が始まった。
ヘヴィプラネット
ハグリッドでも乗れるように作られた箒。製作者は言わずもがな。意味的には『重い星』、つまり『ブラックホール』です。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き