ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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今回から妹視点。


エリー・ポッターと賢者(?)の意思
011


 

 

 

 

side エリー・ポッター

 

ハグリッドが現れて私を魔法使いだと言い、学校に行くための買い物をすると言ってあの切り立った崖の上にある小屋から出て数時間。色々なことがありすぎて混乱している私を、ハグリッドはどこかに連れていこうとします。

どこに行くのかと聞いてみればロンドンだと短く答えられ、私は少しだけ不安です。

 

けれど同時に、私はワクワクしてもいます。ホグワーツに行けばダーズリー一家と暫く離れて暮らせるし、もしかしたら友達だってできるかもしれない。そう考えながらハグリッドが人混みを掻き分けていく後ろをついて行くと……ハグリッドが急に立ち止まった。

 

「ここだ。『漏れ鍋』───有名なところだ。ここで一人待ち合わせがあるんだが……構わんか?」

「あ、え……うん」

 

待ち合わせの事は聞いていた。なんでも完全に魔法使いじゃない両親から産まれた魔法使いの子供は、手紙を届けられた後に魔法使いか魔法使いに近しい何者かが着いて一年目の道具の準備をするのだとか。

ただ、大概の場合は親と子供とが複数人同時に連れていかれるらしいのだけれど、その人には親も保護者もいなかったのでこうして校長先生が一番に信頼できるハグリッドに頼んだ……と、ハグリッド自身が言っていた。

本当は少し怖いけれど……でも、きっと今まで周りに居たダドリーより悪いことはないはず。自分をそう奮い立たせて、つい何も考えずに流れに任せて頷いてしまった事をなんとか肯定する。

そして私とハグリッドは古びた店に入り……ある意味では最高の、ある意味では最悪の、ある意味では最良の、ある意味では最低の、最強にして最凶の大災厄に出会うことになった。

 

私とハグリッドが店の中に入ると、ざわざわとしていた店の中が急に静かになった。ハグリッドはこの店の中にいるほとんどの人に顔を知られているようだったけれど、私は全く知られていないせいかじっくりと色々な人に見つめられている。

そんな中で、カウンターに座っていた一人の男の子が私の顔を見て何かに納得したような顔をして近付いてきた。ダドリー達から受けたような害意は感じないけれど、そこまで強い興味も感じない。

その男の子は私の目の前で止まり、じっくりと私の顔を見つめて言った。

 

「初めまして、あるいは覚えているなら久し振り。会いたかったよ、エリー・ポッター」

「え……あの……」

「……やっぱり覚えてないか。有り難いんだが嬉しくはないな……」

 

私以外には聞こえないような大きさの声で、その人は私に言った。ただ、その人は『覚えているなら久し振り』と言ったけれど、私は彼のことを覚えていない。

その事を私の表情から読み取ったのか、彼は何を考えているのかわからない微妙な表情でぽつりと呟いた。慌てて謝ろうとするが、その前に彼はまた話を始めてしまった。

 

「それじゃあ改めまして……初めまして、エリー・ポッター。俺の名前はハリー・オライムレイ。今年からホグワーツに入学することになる、普通で普通な普通の異常人だよ」

「あ、あの……はい。初めまして……エリー・ポッター……です」

 

私がそう言うと、始めに私の顔を見つめた時に僅かに右目だけを細く開けていたその人は、両目を完全に閉じてにっこりと笑みを浮かべた。

その表情を見ていると、なんだか突然心に暖かいものが生まれてきて……今まで感じたことのない感覚に襲われた。けして不快ではないけれど原因はわからず、無視するには大きすぎるその感情は……どう言えばいいのかわからないけれど、まるで恋でもしているかのようだった。

……いや、きっとこの感情が恋では無いだろうと言うことはわかっている。ただ、この人になら甘えても平気だと……この人になら守ってもらえると、頭のどこかがそう私に告げているような気がしている。

不意に、首筋にある傷跡がじわりと熱をもった。突然傷跡が私の意思とは全く別の意思で動く生き物になったかのように脈動しているような気分にすらなる。

 

「あ……あの……」

 

気が付いたら、私の方から彼に話しかけていた。自分から話しかけることなど今までにほぼ全くと言っていいほどに無く、話しかけられてもすぐには返せなかった筈なのに、どうしてかこの人にだけは自分から話しかけることができていた。

 

「ん? なんだね娘っ子」

 

さっきと同じように右目だけを薄く開けて私を見つめるその人を見て、私は何となくその理由がわかった。

この人は、目が優しい。少なくとも自分に関わり合いの無いものを周囲の空気がそうだからと言う理由で排斥しようとしたり、意味もなく何かを使い捨てにしたりするような人ではないだろう。

ただ、その目の奥で何を考えているのかはわからない。

瞳の色もわからないほど薄く開かれた目蓋の隙間から覗くその目から何かを読み取れるほど私は聡くはないけれど、それでも一応なんとなくわかることはある。今回の場合、きっとこの人は優しい人だと言うことだけれど……私のこう言う勘は、外れたことがあまり無い。

だから私は勇気を出して、彼に向けてこう言った。

 

「……忘れてしまった私が聞くのもどうかと思うんですけど……えっと、あなたと私は、いつ出会ったんですか……?」

「内緒。多分いつかわかる時が来るさね」

 

彼はにっこりと笑顔を浮かべ、そしてすぐに表情を消した。……いや、表情を消したと言うより、作るのが面倒になって辞めた、って言うのが正しいような気がする。

じっとあの人の背を視線で追っていると、突然私の周りを見慣れない人達に囲まれた。全員がなんだか凄く私に好意的だけれど、私と言う存在ではなく私を通して理想の私を見ているような気がする。

それでも私は私を囲んでいる人達の顔と名前を覚えていく。……何人か見たことがある人もいたけれど、そう言う人には「お久しぶりです」と言うだけだった。

 

そうこうしている間にハグリッドが支払いを終えたあの人を連れてきて、私達を店の裏にある小さな中庭に連れ出した。

 

「ほれ、言った通りだったろうが。お前さんは有名なんだ。……それに、もう友達ができたようだしな?」

 

あの人と私を一緒に見て、ハグリッドはニヤリと笑いながら言う。私は慌ててあの人を見るけれど、あの人は特に迷惑そうな顔はしていなくて……私は少し安心した。

 

「……友達?」

「? 違うんか?」

「…………? 一歳の頃から一人だったし、周りには動物しかいなかったから……家族は居ても友達はいないし、作り方も知らないんだが」

 

ハグリッドは悪いことを聞いてしまったという顔をした。だが、すぐにそれを取り繕って開いた道を指し示す。

 

「まあ、それはいい。……ようこそ、ダイアゴン横丁へ」

 

私が驚いているのを見てか、ハグリッドはニコーッと笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

次回作は……?

  • 鬼滅の刃
  • 鋼の錬金術師
  • 金色のガッシュ
  • BLEACHの続き
  • 他の止まってるやつの続き

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