ハリー・ポッター ~ほんとはただ寝たいだけ~ 作:真暇 日間
side エリー・ポッター
久し振りにホグズミードに行ったのだけれど、そこのパブで実に嫌な相手に出会ってしまった。ハグリッドのでたらめな記事を書き、その身体に流れる血のことでハグリッドを傷付けたリータ・スキーターだ。
リータ・スキーターは私の記事を書こうとしてはハリーさんに殴り飛ばされたり全身を固めて動けなくされたりしていたはずなのに、どうやらまだまだ懲りていないらしい。
私に何ができる訳じゃないけれど、とりあえず使えるようになったばかりの無言呪文で足元の床板を一枚たゆませて靴を引っ掻けておいた。
ああいうのは体重があれば十分なるかもしれないことなので、多少怪しく思われたかもしれないけれど私がやったとは思われないだろう。
悪態をつきながら立ち上がったリータ・スキーターは自分を見ている視線の主を睨み付けていたけれど、その途中で私に気付いて笑顔を浮かべて近付いて───
「…………(ボソッ)」
───なぜか突然、かけている眼鏡が丸縁鼻髭眼鏡に変わり、真っ赤なサンタクロースのような帽子にサンタクロースの持っているような大きな白い袋を趣味の悪いハンドバッグのかわりに持ち、上も下も赤と白で纏められた……所謂『ミニスカサンタ』と言われる服装に変わっていた。
袖無しで赤い手袋、膝上25センチの超ミニなスカートと赤い靴。それら全ての縁取りに白いモコモコのファーがつけられていて、なんと言うかもう……痛々しい。
あの歳であの格好を外でするとか、いったい何の罰ゲーム? と言うかもう罰ゲームにしてもいくらなんでもあまりにも酷すぎる。
……まあ、眼鏡と鼻と髭で顔の大部分が隠れているから本人の顔が公に曝されることがないだけまだましなのかもしれない。あの服で外に出たりしたら間違いなく寒いだろうけど、出るか出ないかは本人の意思。私がどうこう言えるようなことじゃない。
リータ・スキーターは自分がどんな服装になっているかをすぐに理解して、恥ずかしさからか怒りからか顔を真っ赤にして───ブーツの紐を踏んで凄い勢いで倒れてテーブルに額をぶつけた。
しかも、その時の振動でテーブルの上に置いてあったバタービールが申し合わせたかのようにリータ・スキーターの方に倒れて髪と顔をバタービールまみれにしてしまった。
「おいおいいきなりなんだよそんな恥ずかしい格好をしたと思ったら突然テーブルに頭から突っ込んで止める間もなくバタービールを頭から被って見るに耐えない下手なブレイクダンスのなり損ないのデッドコピーの失敗作みたいな気色悪い躍りを披露するとかなんなの馬鹿なのひょっとして死ぬの? 新聞記事の内容を脚色しすぎて自分の頭の中身まで脚色してその格好が似合ってると勘違いでもしてるのか? ある意味間違ってないなもう一生その滑稽極まりない無様な姿でいろよその方が面白いから。どうせだったら自分の事を記事にしてみたらどうだ? きっと皆がお前の書いた記事を見て
「ちょwww」
「ハリーwww」
「ハwwwリwwwーwwwさwwwんwwwwww」
「やwwwりwwwすwwwぎwwwwwwもっとやれwwwwwwwww」
「m9(^Д^)www」
みんな凄い勢いでリ痛……じゃない、リータ・スキーターを馬鹿にしまくっているけれど、リータ・スキーターも大変だ。あんな格好をさせられて、転んで頭を打ってバタービールまみれになって床を転げて下着まで周りに見せてしまった挙げ句にハリーさんに罵倒されて子供達に馬鹿にされた上にバタービールの代金まで払わされるって……可哀想に。
「……酷い目にあったわ。それよりもエr───」
「すいませんあなたみたいな痴女と知り合いだと思われたくないので話しかけないでもらえます?」
「舌の根も乾かぬうちにエリーまでリ痛を罵倒したwww」
「でも同意するけどね。知り合いだと思われたくないからさっさとバタービール代だけ置いて視界から消えてちょうだい。むしろ財布丸ごと置いて消えて」
「ハwwwーwwwマwwwイwwwオwwwニwwwーwwwがwwwwww」
「妖www怪www財www布www置wwwいwwwてwwwけwwwにwwwwww」
「そwwwれwwwたwwwだwwwのwwwカwwwツwwwアwwwゲwwwだwwwwww」
ふと気付いたら痛々しい格好のいい歳した女性を罵倒していた。無意識のうちに罵倒していたようだけれど、これもまたハリーさんの影響を受けてしまった結果だろうと思う。
私とハーマイオニーの台詞でリータ・スキーターは半泣きになったけれど、それでもその顔には張り付いたような笑みが浮かんでいた。固まっているだけなのか、それともプロとしての最低限度の誇りとして笑顔を浮かべているのかはわからないけれど、きっとただ固まっているだけだろう。その証拠にハリーさんが写真を撮っても動かないし、記事を自分にとって都合のいいことばかりを書き連ねるなんて言う記者の風上にも置けないことを平気でやってるしね。
「まあとりあえず新しくバタービールを頼もうぜ。バタービールだったら奢ってくれるそうだから」
「じゃあ僕達はあと二杯もらおうかな」
「僕は一杯。ハーマイオニーは?」
「いらないわ。これ以上飲んだら学校でご飯食べられなくなりそうだし」
「私はとりあえず十五杯かな」
「決まりだな。バタービールを二十!」
マダム・ロスメルタに追加のバタービールを頼み、リータ・スキーターの袋の中に入っていた財布から飛び出てきた金貨を払う。一応お釣りはリータ・スキーターの財布に戻っていったけれど、バタービール二十杯は流石にいい値段になってくる。
……ハグリッドの事を考えるといい気味だと思ってしまうのは、流石に人間として薄情かt
「美味い!やっぱ嫌いな奴に払わせて飲むバタービールは最高だわぁ……」
「わーい予想以上に酷い人がここにいたよー」
ロンはグビグビと頼んだバタービールを飲んでいる。凄くおっさん臭いと思ったけれど、まあ、別にいいや。
私もバタービールを飲む。……うん、やっぱり美味しいや。
ほかほかのバタービールが身体に染みていく感覚に、私はとろんと目尻を緩ませた。
次回作は……?
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鬼滅の刃
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鋼の錬金術師
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金色のガッシュ
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BLEACHの続き
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他の止まってるやつの続き