ログ・ホライズン ~わっちはお狐様でありんす~   作:誤字脱字

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おりじなるてぃーが欲しい作者です
更新します


え!?神様?『5』Dですか!貴女が!神ぃ『1』ぃいぃ!

『どこで寝ているのよ』パート1

これは友人『忘れ草』から聞いた惚気……怖い話だ

『忘れ草』は当時、付き合っている男性が居て、その日も彼氏の家に遊びに来ていたのだが、その日に限って彼氏が残業で遅くなると連絡が来たそうだ

『忘れ草』が訪れる際には必ず定時には上がる彼氏だが、ちょうど仕事が追い込みの時期だったようで抜けられなかったそうだ

『忘れ草』も珍しいと思いながらも手料理を作り彼の帰りを待つことにした

 

彼の好物を作り、今か今かと彼の帰りを待ち続けたが、時計の長針が1週しても2週しても彼は帰って来なかった

流石に遅すぎると思った『忘れ草』は、彼に電話をして見ることにしたのだが……彼の携帯の着信音が思わぬ所から聞こえて来たのであった

 

『どこで寝ているのよ』パート2へ続く…

「世にも奇妙なお話し」著作者:くずのは

より抜粋……

 

 

「……っち!何が彼の寝顔が可愛かった、よ!書いているこっちが苛立ってきたわ!」

 

あの何とも言えない惚気顔をリアルで拝見した彼女は、苛立ちを隠そうともせずに乱暴に本をストレージに仕舞うとテラスデッキからアキバの町の夕暮れを展望する一人の青年へと視線を向けた

 

「考え答えを導き決断する……それはリーダーとして大切な条件であり、『責任』を背負った者の定め。しかし、決断次第では破滅の道へと歩む事になるかもしれないモノ」

 

青年は腰の横にあるバックから折りたたんだ数枚の便箋を取り出し、眺めている様だが徐々に下がっていく頭に自然と青年の眉間には皺が寄っている事が容易に想像できる

 

「ミナミ、アキバ……そして渡来人。他方から迫ってくる脅威に視野が狭くなった今の貴方は『破滅』の道を選択してしまうでしょう。………そう、一人では」

 

テラスで思い悩む青年の頭を上げたのは彼が作り出したギルドの仲間だった

一人また一人と集まっていく。不器用だが自分の心に正直な主君思いの〈暗殺者〉、事の始まりから常に隣を一緒に歩んでくれた〈守護戦士〉、去冬から仲間に加わった空気の読める(・・・・・・・)〈治癒士〉、そして一歩下がった所から優しく諭してくれる〈盗賊士〉

 

「一人で『責任』を背負う事の出来る人間も居れば支え合いながら背負う人間もいる。……シロエ、貴方は後者。凡人でしかない貴方は、周りの人間と関わる事によって成長する者なのよ?」

 

青年の元に集結した仲間、一人一人違う『答え』を持つ者達が彼を導いてくれると思うと自然と頬が上がっていき、先程の苛立ちが無かったかのように上機嫌となった彼女もまた、その輪に向けて歩みを進めた

 

「ログホラ、年長会議だな」

「それなら私も参加させて貰うわ。説明役は一人でも多い方がいいでしょ?」

「ッ!……ありがとう、〈くずのは〉」

 

沈みゆく夕日を背にシロエは、テラスデッキに集まった大切な仲間達の顔を一人また一人と視界に収め、便箋と封筒を取り出した

 

「みんなに話さなきゃならないことがあるんだ」

 

薄暮のテラスに集まったシロエたちは、厳しく時には優しく諭してくれる〈魔術師〉を加え、はるか彼方からやってきた旅人の手紙を検討し始めるのだった。

 

 

 

 

ログ・ホライゾン ~わっちがお狐様でありんす~

 

ZZzz…………

 

   ⊂⌒/ヽ-、__

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まだ起きる時ではない

 

   ⊂⌒/ヽ-、__

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「ロエ2?」

「誰ですそれ」

 

旅人から齎された手紙を読み終えたシロエに最初に投げられた言葉は旅人についてと少し的外れなモノであったが、ロエ2の存在を知る元茶会組、そしてその名を知らないアカツキとてとら。仲間たちの反応は二つに分かれた。

 

「シロエのサブキャラよ。〈大災害〉前、ゲームシステムの調査を建前にテストサーバーで作ったシロエのセカンドキャラ。」

「あぁ、通称えろ子。〈召喚術士〉で、胸はでかい」

「でかいのですか! むむ。アイドル的にはギルティですね」

「そうなのか、主君!」

 

話が脱線しないように最低限の情報だけを伝えた〈くずのは〉だったが、直継が余計なことを口にし、シロエに異様なくいつきを見せるてとらとアカツキ

そこはそんなに大事じゃないでしょう、と言い返そうとする間も二人はああでもない、こうでもないとつつきあっている。

 

えろ子というあだ名はKR命名なのだ。広めたのは横で果実酒を傾ける〈くずのは〉で、乗っかったのは直継である。まじめな話の冒頭から出端をくじく形になってしまったが、場の空気を読んだのか、にゃん太がとりなすようにつづけた。

 

「そのロエ2が手紙を書いたということですかにゃ? そもそもどうやってここに?」

「ミノリが届けてくれたんだ。旅の途中に出会ったらしい」

「そうですか。あのサフィールの町で……」

「そうだったのか」

 

サフィールの町。その言葉にアカツキも、直継も苦い表情で言葉を飲み込んだ。ここに集まったのは〈記録の地平線〉では年長に属するメンバーだ。てとらでさえ、ミノリたちが巡り合った〈オデュッセイア騎士団〉との顛末は聞いている。

暗くなってしまった雰囲気を切り替えてくれたのは、アカツキだった。

 

「結局、差出人は主君なのか? 主君のサブキャラクター。なんでそんな人が手紙を出せるんだ?」

「彼女は、月のテストサーバーに保管されていたロエ2の身体(キャラクターデータ)にやどった異世界の人工知性体、〈航海種〉(トラベラー)。彼女の目的は〈共感子〉(エンパシオム)という資源の探索及び採取を使命としているわ」

 

事も無しに旅人の正体を口にした〈くずのは〉にシロエを除く面々は驚きの表情を浮かべた

 

「やっべーぞ、おい。シロ。異世界人だぜ。もしかしてSFかよ」

「少なくとも彼女はそう云ってるね。この手紙によれば、〈航海種〉(トラベラー)のなかには彼女たち〈監察者〉のほかに〈採取者〉と呼ばれる種族がいるらしい。」

 

周囲はシロエと〈くずのは〉の言葉を咀嚼するように黙り込んだ。

あまりにも突飛な話だったということだろうか。シロエは心配になって仲間を見回し、アカツキと目があった。つぶらな瞳できょとんとシロエを見上げるアカツキからは、信頼の気配しか伝わってこない。これは何も考えてないな、とシロエはほんの少しホッとする。

 

「直継さん」

「なんだよ。さすがのお前も度肝抜かれたか?」

「やっぱり僕、銀河ツアーを企画しないといけませんよね。新たなファンのために」

「ブレないな!?」

 

いやんこまっちゃうなあ。フェロモン、フェロモン、と小躍りする自称アイドルを引きはがして、直継は情報をかみ砕くようにつづける。

 

〈航海種〉(トラベラー)かあ。ずいぶんぶっ飛んだ話だが、シロは実はそんなにびっくりしてないな? なんでだ?」

 

そんなことはない。シロエはそう答えた。

 

「ただ、うん。なんていうか、なんとなく考えてはいたんだ。なんで僕たちはこの世界に来ちゃったんだろうって。おかしいよね。ここが本当にファンタジーな異世界だとすれば、僕らの知ってる〈エルダー・テイル〉にこんなにそっくりのはずがない。偶然のレベルをはるかに超えている。でもここはゲームの世界で僕らがそこに飲み込まれたなんてナンセンスだ。ありえない。僕らの知っている限りテクノロジーはそこまで進歩していないし」

 

その言葉に、直継やにゃん太はしっかりとうなずいた。アカツキやてとらだって興味深そうに、シロエが次に話す言葉を待っている。

 

「大災害以降の変化だっておかしい。現実的な物理法則とゲーム時代の常識が、この世界ではいっしょくたになっている。まるでふたつのルールを混ぜたみたいに。僕たちは適当にこの異世界に飛ばされたわけじゃないってずっと思ってた。そしてこの世界には、それを説明できる三番目の誰かがいるんじゃないかって……。〈大地人〉でも、僕たちみたいな〈冒険者〉(プレイヤー)でもない、この状況を説明できる誰かが……。たぶん、それは、この手紙に差出人。ロエ2なんだ」

 

 ご都合主義でいえば、それは機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)とでもいうべき存在だ。すべての謎をつかさどる黒幕。事態を解決してくれる究極の責任者。しかし、期待したそんな存在はいないと、シロエは気がついてもいた。

 

「神様じゃないんだ。そんな都合のよい存在じゃないって、途中で気が付いていた。だってこの世界が世界だとすれば、〈大地人〉が本当に生きてて僕たちと同じだとすれば、その神様は彼らの生まれてきた理由も運命も知っていることになる。そんなことはない。彼らも人間で、この世界も世界だから、神様なんていないんだって思った。それでも『誰か』はいるし、探そうと思ってた。だから、びっくりしたけど、そこまでじゃない」

 

 直継は男らしく太い笑みを浮かべると、そうか、と答え今度は果実酒を傾ける彼女へと視線がいった

 

「………何かしら?」

「いや、シロが驚かない理由は判ったが、〈くずのは〉も驚いている様には見えねぇ。もしろ、シロが手紙を読む前からロエ2の事を知っていた様に感じたんたんだけど?」

 

確かにとアカツキやてとらは、〈くずのは〉に視線を向け、サフィールで事前に彼女の存在を目視していたにゃん太さえも〈航海種〉(トラベラー)〈共感子〉(エンパシオム)と所見の言葉を知り、剰え彼女の正体まで辿り着いている彼女に疑問の視線を送ったが、彼女は変わらず果実酒を傾けながら彼らの問に答えた

 

「シロエと同じで憶測は立っていたわ。なら後は直接、情報を収集した方が効率はいいにきまっているじゃない」

「いやいやいや!待てよ!なんで接触してんだよ!つーか、いつ接触したんだよ!と言う事は班長も知っていたのかよ!」

「にゃあ~、サフィールで見かけはしましたが、彼女の正体までは知らなかったですにゃ」

「つーことは何か!?〈くずのは〉はロエ2から有力な情報を「聞いていないわ」聞いてないのかよ!」

 

「私は、答えだけを聞いて満足できる安い女ではない。答えは自分で導き出してこそ意味がある。それに……答えだけ理解しても面白くないじゃない?」

「だけど、もしかしたら「その先は云っては駄目よ、過ぎた時間を悔いてもなにも始まらないわ」むぅ…」

 

アカツキの言葉を遮り、笑みを浮かべる〈くずのは〉であるが、遮られたアカツキは穏やかではなかった。もしかすると主君が求める情報しいては元の世界に帰還する重要な手掛りを入手するチャンスを個人的な好みの問題だけで棒に振ったのだから

 

「でもずいぶんわかりにくい手紙ですよね」

「ずいぶん、じゃないぞ。まったく、だ」

 

てとらが場の空気を換える為にも、それとなく話題をズラしたが、アカツキの機嫌は直らず手紙に指さして否定した

アカツキの態度に苦笑しながらもシロエは便箋を再び取り上げる。

 

「判りにくいのはこちらになじみのない事を説明しようとしているせいだと思う。〈摂理地平線の原則〉とか〈無矛盾の大原則〉なんてのは確かにわからないよね」 

「摂理地平線の原則とは、決して交わらない道筋、無矛盾の大原則は……綺麗な数式と云ったところね」

「おい、シロ。わかってるっぽい奴がいるぞ?」

「〈くずのは〉も大まかにわかっているだけで、全てはわかっていないと思うよ?……ですよね?」

「ふふふ」

 

ロエ2が何を伝えたいのかシロエと〈くずのは〉は、いや〈くずのは〉だけは理解出来た様だが、シロエにはぼんやりとわかる程度

わからないなりにわかるというか、言葉面からおおよその意味はつかめ、だがしかし、シロエが考える想像通りだとすれば、この異世界――ロエ2のいう亜世界セルデシアは「結果を出すためのテスト中」なのだ。特別なサンドボックスではないかとシロエは考えている。

〈くずのは〉に答えを聞けばもっと違う答えが出てくると思われるけど彼女は良とは云わないだろう

 

どちらにせよ、この場所では、決断ですら大きな意味を持つ。すでにシロエは決断によって〈円卓会議〉という組織の設立のきっかけを生み出してしまった。だから制限時間の存在に関する予測なんて、口に出すことはできなかった。

 

「要するに〈典災〉ってのは異世界怪獣だ。異世界怪獣は〈共感子〉(エンパシオム)っていう謎エネルギーを奪うために異世界からやってきた。このロエ2ってのは異世界人で、異世界怪獣と同じところからやってきたけど、人情味があるからこっちに気をつけろって警告してくれてるんだよ」

「おお、わかった! 賢いな直継のくせに」

「くせにってなんだよ!」

「直継さんあったまいーい!」

「登るなよ、おいっ!」

 

アカツキ、直継、てとらのの楽天的なやり取りに、シロエとにゃん太は笑ってしまった。確かに要約すれば、そんな事が書かれているように読める。

 

「とはいえ、それだけではないですにゃあ。あちらこちらに記述が欠けているような、理由や意味がつながりにくい箇所がありますにゃ」

「そうだね、班長」

 

シロエは何度も読み込んだ文面に視線を落とす。

 

「たぶん、だけど意図的なものなんだろうね。外部に情報が漏れるのを警戒したという感じではないけれど――この段階で明らかにすべきではないという意味なのか。それとも彼らにとって都合が悪いということなのか」

「んなことねーだろ」

 

直継がそうさえぎる。

 

「そういう感じの文章じゃないぞ、これ。どっちかっていうと、『誰でも知ってる常識だから説明すらしなかった』とか、そんな感じじゃねえかな」

「あら、脳筋の割にはよく気づいたわね?社会に揉まれて脳味噌が柔らかくなったかしら?」

 

心底感心したとばかりに新しい果実酒の栓を開けた〈くずのは〉は、開けた栓を直継に投げ与え彼の成長を褒めたが、とうの直継はゴミを渡されただけで恩賞を受け取ったとは思ってもいない

 

「脳筋の言う通りよ。そこの手紙に書かれた内容は彼女らにとっては何の事も無い共通の情報、私達で言うチュートリアルの内容よ」

「じゃぁ、くずのはさんは、この手紙、信じるんですか?」

 

ふと真面目になった声で尋ねたのは、てとらだった。

そのまなざしに、〈くずのは〉はグラスを傾けながら、「YES」と頷いた。

 

「信じるわ。むしろ、嘘だと云われた方が疑いたくなる内容よ」

「とんでもない内容だとは思いますが、ある日ゲームに似た異世界に突然迷い込んでしまいました、に比べてそこまで荒唐無稽な内容ではないと思いますしね?」

「そうね。それに鳥頭は、性格からして見ても私達を陥れようとは感じないわ」

「『追伸、ミノリへ。お姉ちゃんらしく真面目に書いてみたぞ。また会えるかどうかはわからないが、君の答えは忘れない。キミの暖かい〈共感子〉(エンパシオム)がわたしを照らしてくれたように、キミがキミの未来を照らしますように。――お姉ちゃんより』……ロエ2さんはなかなかお茶目なところがあるのですにゃ」

 

にゃん太の読み上げで、直継やアカツキは明らかに口を半開きに驚愕している。それはそうだろう。〈異世界人〉にしては砕けすぎだ。

 

「なんつーか、〈クー〉に似ているな?掴みどころがない癖にかき回すだけ掻き回す」

「彼女は愉快犯だからね?そういう意味ではロエ2も……って彼女の話は出さない方が良いですよね?」

 

元茶会組の三人は兎も角、この場にはアカツキとてとらがいる。

個人情報と云うより自分の事を他人に語られる事の嫌う彼女の前で身内の話は控えた方が良かったのではないか?と〈くずのは〉に謝罪しようとしたシロエであったが、〈くずのは〉は特に気にした様子も無くグラスに酒を注ぎ、むしろ問題ないとばかりに自分から話し始めたのだ

 

「別に構わないわ。どうせ〈クー〉は寝ているし、いずれは話さなければいけない事。それにココに居る者は〈クー〉と私が別人だと気付いているでしょうに」

「YES!ギャラクシーフォックスはMy Seoul brotherですね!あっ!なんなら〈くずのは〉さんも僕達と一緒に「黙りなさい」……くすん」

「別人とは棘がありますにゃぁ。」

「……人の関係は十色十色よ」

 

珍しいモノが見れたと驚く仲間達であったが、どうしても脱線してゆく会話に辟易とした直継は仕切りなおすように声を張って口を開いた

 

「どっちにしろ信じて失うものも、今のところなさそうだしな。要するに、月になんかある。連絡とれってだけだろ?」

 

そりゃそうですね、とてとらもあっさりと認めた。

 

「うん。この手紙を信じるならば、月にいる彼女の仲間と連絡を取れば、少なくとも情報面で今より進展するはずだ。元の世界に戻るためのヒントが得られると思う」

「そうなるな」

「月、ですか。なにがあるのですかにゃ」

「テストサーバーじゃないのかしら?」

 

それは、と口を開きかけて、シロエはアカツキを振り返った。

確かにロエ2からの手紙や〈くずのは〉の話では月にテストサーバーがある事が窺えたがシロエにはされだけではなく、何か大切なあった気がしてならなかった

アカツキも、夢から覚めるような表情でシロエを見上げた。

どこからか、懐かしい澄んだ鐘の音にも似た響きが、シロエの耳朶によみがえった。

 

「いや――。月には、確かに、何かがあったんだ。あの膨大な思いで、光の渚、捧げられた誓い――。〈奈落の参道〉(アビサルシャフト)で死んだとき、見たんだ」

 

遠浅の海だった。

地球から降り注ぐ透き通った玻璃の欠片は、些細な、だがかけがえのない思い出を宿らせていた。茶色の小犬が見えた。定期券と改札口が見えた。夜闇に浮かぶコンビニの頼りない明かりが見えた。鉄橋を渡る自転車の二人乗りが見えた。

 それらがしんしんと降り注ぐ冬の海岸を、シロエとアカツキは歩いた。

 あれは夢ではなかったのだ。残っていた記憶をなぞり甦らせるように、シロエはアカツキの瞳の中を探した。

 

「月の砂浜は、遠くまで澄んでいて、水晶の音がした」

 

つぶやいたアカツキは、びっくりしたように目を丸くした。

そしてとてもうれしそうに何度もうなずくと、シロエの服をぎゅっと握った。たぶん意識してのことでないそのしぐさは、彼女の不思議な感動を表しているようだった。

 

「うん。アカツキがくるくると回って、転びそうになった」

「主君がフードをかぶせてくれたのだ」

 

 秘密の自慢話を聞かせるような彼女の声がシロエの中に残るあの瞬間の記憶を、より鮮明に浮かび上がらせた。

 静かな浜辺の清澄さが二人を満たした。澄み切った青い入江の浜で、アカツキと並んで波打ち際に座った。つま先を濡らした光は、何か特別なもので、二人は畏敬の念を強くした。

 〈死〉を通り抜けた二人は、その浜辺で己を振り返り、弱さを目の当たりにした。押しつぶされそうなほど巨大な後悔のなかで、小さな希望を見た。

 あそこは特別な場所なのだ。

 シロエは言葉によらない直感でそれを理解した。あの浜辺にはまだシロエたちが知らない秘密がある。ロエ2が言う「月」とはあそこのことなのだ。きっとあの浜辺へ再び行くことができれば、地球へと帰還できる。すくなくとも、そのためのきっかけを得ることができる。

 

「私も……。私も見た! 主君と一緒に、あのキラキラを見た!」

 

シロエはアカツキに頷いた。

そして仲間たちを、直継を、にゃん太を、てとらを見回した。

シロエとアカツキは、確かに一度は月の地を踏んだのだ。

だからこそこの手紙を信じることができる。

 

「そこで僕たちは――たぶん〈共感子〉(誓い)を捧げた。あそこにもう一度いければ……」

「この世界の秘密の一端をつかめるって事?なら尚更、月との通信を考えなくてはいけないわね?」

「はい」

 

〈くずのは〉の答えにシロエは力強く答えた

月に自分が欲する者があると信じて…………

 

 

                  

NEXT え?わっちの出番少なくなるの?(´・ω・`)ショボーン

 




リアル仕事より出張から帰ってきました
なので更新します

オバロとログホラを書いております

相変わらずの亀更新で申し訳ありません

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